左/御神木を伐る斧。刃にかけたカバーは麻紐を編んだもので刃沓(はぐつ)という。 右/御杣始祭の始まり。
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伊勢神宮遷宮・御杣始祭り:300年の大木を伐る!


使う木は1万本、伐採から竣工まで 8年の大プロジェクトがスタート

1300年続く式年遷宮

6/3に伐採された御神木は、内宮に6/9、外宮には6/10に到着した。行程の詳細については、こちら

平成25年に予定されている伊勢神宮の第62回式年遷宮を8年後に控え、それに使われる木材を最初に伐り出す「御杣始祭」(みそまはじめさい)が6月3日に長野県木曽谷の国有林で行われた。

祭事を行う巨大な舞台。伐採した丸太を山で集積する盤台 (ばんだい)製作の技法で組まれた。ここで使った木々も式年遷宮で再利用される。

式年遷宮は20年に一度、天照大御神を祭る皇大神宮(内宮=ないくう)と、豊受大御神(産業の守護神)を祭る豊受大神宮(外宮=げくう)の正殿やそれぞれに付属する神社(別宮)を新しく造りかえる伊勢神宮でもっとも重要な祭事だ。持統天皇4年(690)に始まり、戦国時代に中断された以外は1300年も続けられている。工事には1万本ものヒノキの良材が使われ、木材の伐り出しに始まり、製材、乾燥、刻み、建て方と続く全工程には実に8年もの歳月を要する。建築技法は古式のまま1300年間変わっていない。木材の刻みはもちろん大工が手刻みで行う。

木曽で厳選された御神木ヒノキ

20年ごとの遷宮のために、内宮・外宮には、建物と同じ広さの敷地が、隣に用意されている。遷宮の詳細ついては、こちら

式年遷宮の用材を伐り出す山は「御杣山」(みそまやま)と呼ばれ、かつては伊勢神宮の裏山がその役割を担っていた。しかし、次第に適する木が得られなくなったため、鎌倉時代以降は他の場所に移っていった。木曽が御杣山となったのは江戸時代のことだ。

神事では、雌雄の鶏もご供物として奉納される。

御杣始祭では内宮と外宮の御神体を納める器をつくる2本の御神木を伐採する。御神木に選ばれるのは、南斜面で近くに小川が流れる清浄なところで生育し、長さ5.4m、末口(小さいほうの木口)直径46cmの節が少ない丸太がとれる木。一般に流通している柱用の丸太に比べ、長さも直径も倍くらいになるから、かなり大きな木が必要になる。しかも、内宮用と外宮用の2本の先端がたすきがけに交叉するように伐り倒せる位置になければならない。

伐採の前に、作業の安全や神宮の立派な完成を祈る。

ヒノキの産地として名高い木曽でもこうした条件に合う木を見つけだすのはかなり難しいという。今回選ばれた木は木曽谷上松町の赤沢自然休養林の一角に立つ樹齢約300年の木曽ヒノキ2本。ともに高さ30m近い堂々たる大木であった。


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左/御神木の近くで見つけた木曽ヒノキの大木。この木も樹齢300年くらいはありそう。右/木曽林業の将来を担う人工林ヒノキ。天然の大木は減少していて、これらの木を大切に育てていかなければならない。