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第三回これ木連フォーラム「伝統構法はこれからどこへ向かうのか?」の報告


パネルディスカッション全発言
司会:岩波正(三和総合設計)

第一部
『私たちが残したい伝統木造住宅とは』

越海興一氏(国土交通省木造住宅振興室)
畑田耕一氏(大阪府登録文化財所有者の会)
鈴木祥之氏(立命館大学教授)
鈴木信哉氏(林野庁木材産業課長)
大江忍氏(設計者:ナチュラルパートナーズ)

金井透氏(総合司会):パネルレィスカッションに入る前に、これ木連設立の経緯についてご説明させていただきます。これ木連は、2007年6月の基準法改正に対して危機感をもった6団体で、意見書を作成して9月に国交省に提出したことをきっかけに設立されました。昨年の7/12に新宿の工学院大学で行ったシンポジウムを皮切りに、ことしの3月には実験報告会、そして今回は関西で初のフォーラムとなります。

こうしたこれ木連の活動の成果もあってか、国の方で伝統構法の性能検証のための3カ年事業をおこしてくださり、研究者、行政、そしてわれわれ実務者からも委員として参加し、今2年目の半ばにさしかかろうとしています。その進み具合がどうなっているのか、進め方がどうなのかなどについて、意見交換をするというのが今回のパネルディスカッションの目的です。

第1部では「私たちが残したい伝統木造住宅って、どんなもの?」ということを、第2部では多少メンバーが入れ替わりまして、「国で進めている3カ年事業で、伝統木造住宅を残せるのか?」をテーマに、お話いただきます。

岩波正氏(司会):第一部では、「私たちが残したい伝統木造住宅とは?」ということでお話をしたいと思います。さきほど畑田先生のお話をお聴きして、もういちど、何なのかを考えなくては、と思っています。まずは、おひとりおひとり自分の簡単な紹介と、それぞれ、伝統構法との関わりについて、お願いします。

越海興一木造振興室室長:国土交通省木造振興室の越海興一です。木造であれば、私のところで扱うということになっています。数代前の室長時代から大工育成塾をはじめ、若手育成を引き継いできております。このプロジェクトをおこさなければならなかった事情については、パンフレットの9ページの設問でこたえていますのでお読みになってみてください。

前の室長時代に、伝統構法関係者との「意見交換会」を実務者の皆さんとやっていました。その2回分の記録を読ませていただき「国が伝統という言葉を使うのは、けしからん!」というきびしい反応があるのを知りました。そこに国がどこまで関与したらいいのかと悩んだ結果、オーソドックスではありますが、伝統構法を法制度、つまり、建築基準の中に位置づけられる道を探っていこうということで、いろんな形で予算をとって、プロジェクトをおこしたいきさつも9ページに書いてあります。

私が伝統と無関係なことばかりやってきた経緯もありますが、多少なりとも建築の歴史を大学時代にかじった程度の人間のひとりとして思うのは、つらつら建築の歴史をながめてみますと、4ページのアンケートでこたえましたが、日本にもともとすぐれた建築技術があったわけではなくて、昔から中国や朝鮮半島からきたもの、戦後には欧米から来たものを血や肉として取り込んで来たんだと思ってまして、外からのものを受け入れて自分のものにしていくこと、これこそが、本当の伝統なのかなと思っています。そういう地力があれば、伝統をつなげていくぐらいの取組はできるんだろう、ということで、まあ、あえて、保護的な、適用除外にするという道を選ばず、鉄やコンクリートと同じように、木造住宅も並べていくという、正攻法で扱う道すじを選びました。建築基準の性能規定化で、その道筋はもうほんとはついていると思ってまして、あと一年半がんばりたいと思っています。

と同時に「これからの木造を考える」ではなくて「これまでの木造」も考えていかなくてはならない。なぜ、こういうところまで木造は来てしまったかをですね、一回、抜本的に考え直そうかなと思っています。木のまち・木のいえ推進フォーラムというところで、木造の担い手のみなさんに、ちょっとおせっかいかもしれませんが、これまでのやり方をどう変えて行くのかを議論する場をつくっていこうと、取組をはじめているところです。

畑田耕一先生:私の専門は高分子化学で、建築とは直接の関係はありません。今日のようなお話を皆さんにするようになったのは、家が登録文化財になったことがきっかけです。こういう家のもっている潜在的教育力、そして、それが文化の進化とどうつながっているのか、ということを考えています。建築については素人ですが、文化財所有者の会の会長をやるようになって、勉強しているところです。ここで建築の専門家のみなさんのお話を聞いて、勉強させていただこうと思っています。

ただ、一言だけ、お願いをしておきたいことがあります。それは、パンフレットの3pに書かせていただいたように、建築と言うとどうしても家をつくる「技術」という考え方をされるがちですが、建築はそんなにせまい分野ではなく、物理、数学、人間学・・すべてに関わる分野であり、単なる科学技術ではない、総合科学である、ということです。国の文化の進展にも大きくかかわるものであります。そういうことを念頭においてくださるように、願います。「文化を学ぶもの、語るものは、まず建築を学ぶべし」という言葉もあります。ここで、「大阪府の登録文化財」という小冊子の宣伝をさせてください(以下略)。受付にございますので、お買い求めいただければと思います。

鈴木祥之先生:立命館大学の鈴木祥之です。パンフレットの5pにありますが、伝統構法はいろんな地域によって建て方が違うだとかございまして、しかも、使っている材料が製材、無垢材であり、非常に構造力学的むずかしいものです。解析的手法をつかってでも、伝統構法を、数値解析ですべてを管理しようというのは、むずかしいことです。石場立て、柱脚の移動、水平構面がやわらかいなど、構造力学的な課題をたくさんかかえながら研究を行っているわけですけれども、私自身が伝統木造の研究にかかわるようになったのは、阪神大震災以後です。甚大な被害と、6000人もの死者が出て、非常にショックを受けました。建築と防災を研究する者として、木造の建物で数千人が亡くなるというのは、悼ましいことでした。私ども、防災や建築に関わる者がこういう方たちを救えなかった、その悔いから、研究に入りました。その当時は、木造全般としてて、耐震性のある木造を、ということを考え、それはある程度までできるようになりました。しかし、伝統構法の建物はまだまだ、扱うのがむずかしい。それだからこそ、研究者にとっては大変おもしろいテーマであるともいえるのであり、私自身も若い研究者たちといっしょになって、やっています。これからも若い研究者のみなさんには、ぜひいっしょに取り組んでいってほしいと思います。

林野庁 鈴木信哉氏:私のいる林野庁の木材産業課では、素材生産、製材、合板、箸など小物に至るまでの木材利用に関すること扱っています。昭和56年に林野庁に入って以来、京都、九州、福井、前橋と、あっちこっちの山を見てきました。そこでつくづく感じることは、入った当時とくらべて、木材業界が衰退していること、山村に活力がないことです。山を元気にするのは、山の木を使うことから始まりますので、国内の木を活用してほしいです。林業とは、50年、100年かかる仕事です。今伐っている木は、自分ではなく、親かおじいさんが植えた木だったりします。自分の代では得られない成果のために、みなさん働いているのです。ある意味では、よい建築物を後世に残すのと同じかもしれません。木を使うにあたってはみなさんには先人の苦労を理解しながら、使ってほしいと思います。

大江忍氏:私はこれまでに230棟、新建材を使わない、安心して住める木と土壁の家づくりを進めてきました。またその中で、緑の列島ネットワークの理事として「近くの山の木で家をつくる運動」も進めてまいりました。今回、国で進めている伝統構法の性能検証事業の検討委員というのを仰せつかりました。中に入って一年半やってまいりましたが、最初の思いと違う点もあり、きょうのパネルディスカッションの中でそのあたりを討議していきたいと思います。

岩波正氏(司会):まずは、司会からパネリストのみなさんに質問をさせていただき、その後フリーに話していただく、という具合で進めたいと思います。まず、越海興一木造振興室長さんにおうかがいしたいのですが、国としては伝統構法をどのようなものとして位置づけて、この3年間の事業や長期優良住宅政策などを進めているんでしょうか。

越海興一木造振興室長:まず、現在プロジェクトで検証されている伝統木造は、もちろん現行法の壁量計算で建てられないわけではないんですが、壁量計算によらなくても建築確認を通るように、建築基準に位置づけたいと思っています。これは先ほど言ったように、2000年の性能規定化のひとつのあらわれだと思っていますので、伝統構法を、建築物の構造についての最低基準である建築基準の中に位置づけることは、最低限したいと思っています。

個人的には、伝統木造を長期優良住宅の中にも、入れていきたいと思っております。長期優良住宅認定基準は、木造の戸建て住宅についてもあるわけですけれど、いろいろな議論の過程で、地方にあるいろいろ長期にわたって木造を維持管理していけるしつらえ、たとえば、開口部の上に霧よけがついてるですとかね、そういう装置を長期優良住宅として位置づけられたらどうかなんていう議論をしてみたんですけれども、まあ、全国的な基準にするには、そういった地方地方のやり方を集合させるのは非常にむずかしい、ということで、現在の大手メーカーでもできるような基準になっています。

まとめると、まず第一歩としては伝統木造を建築基準の中に位置づけるということ、こんどは長期優良住宅の中で伝統木造の要素を位置づけていくということ。そして最終的には長期優良住宅のひとつの典型例として、伝統木造を位置づけたい、というのが個人的なターゲット、ということにしておきます。

岩波正氏(司会):国の方針をおうかがいしましたが、次に、この中で唯一の実務者である大江忍氏さんにお伺いします。さきほど畑田先生から「家は箱をつくるというだけではだめだ」というお話がありましたが、実務者はどのような意識で伝統構法をつくってられますか?

大江忍氏:伝統構法にかかわらず、設計者はみんなそうだと思いますが、構造だけを重視しているわけではなく、まず第一には、その家族の暮らし方に応じて、間取りを具現化する。それには、予算もありますから、経済性ということも重視する。また地域風土の特徴も、湿度が高いから風向きがどうたということも勉強した上で考えながら、設計しています。またそこには、文化があり、デザイン性、環境への配慮なども必要となってきます。地域にねざし、地域に育まれて来た伝統構法の建物が、そうした要素をいちばん備えているんですね。

伝統構法は、さきほど林野庁の鈴木さんがおっしゃった「国産材を活かす」ということのためにも、すぐれた技術であります。現在は人工乾燥された木材ばかりが出回っていますが、ほんとに自然乾燥した木材を活かせるのは、それでないと活かせないのは、伝統構法だけであり、それで建てられて来た家が100年、200年と残って来ている。まさに長期優良住宅となっています。それが伝統構法の家だと思っていますし、実証されている長期優良住宅は、伝統構法の家だけだと思っています。

岩波正氏(司会):伝統構法にとっては木材はもっとも大事なもののひとつです。滋賀県でも造林公社問題などいろいろありますが、これからもいい材料を使い続けられるのかどうか、不安です。そのあたりの現状を鈴木さん、お話いただけますか?

林野庁 鈴木信哉氏:国産材の状況を、資料を使ってお話ししましょう。国破れて山河ありと言いますが、戦後はそれ以下で、国破れて木材はありませんでした。森林蓄積が極端に低くなっていました。ところが、都市は空襲で焼けて家がない。戦後の復興材が必要だということで、1000万haもの植林をした。戦後の拡大造林ですね。それが今、やっと、育ってまいりまして、ちょっとだけ資料で説明させてもらいますが、木材需要ですが、戦後すぐは年間4500万立方しかなかった。その頃、95%は国産材でした。その後急激に需要が増えます。住宅復興で年間1億2千万立方にまで増え、外材の輸入も自由化され、世界中で木を買ってくれるのは日本、と言われるほどにまでのびました。現在はだいだい8000〜9000万立方に落ち着いてきており、この需要をどのくらい国産材でまかなっているかと言いますと、木材自給率は24%です。パルプ、つまり紙需要を除いた製材用に限れば、平成20年度で24年ぶりに木材自給率は40%を越えるぐらいにまで持ち直して来ています。国産材の利用率が少しあがってきたといえます。

世界に冠するこの1000万haの人工林ですが、ほとんどがスギ、ヒノキ、カラマツです。これを使わないと、国産材利用にはつながらないわけです。この1000万haの多くが、今は8〜10林齢、木材業界では5年を1林齢として数えますから、40~50年生にまで育って来ています。高齢級といわれる60年生以上の大径木が30%以上になっています。木材需要に対して森林蓄積が少なく、昭和30年代、40年代の木材価格がいちばん高かった時に一生懸命植えた木がやっと育って来て、登場する出番を待っているということですね。このまま10年経つと、高齢級が62%と、みなさんの伝統構法の家づくりに使える木が急激に増えているのです。しかし、皮肉なことに、高齢級の19とか20とか、100年生ぐらいの木などは、今は木材が安いので、ほとんど山主さんは、伐りません。山の中で長伐期を迎えているというのが現状です。みなさまにどんどん使っていただいてもですね、現状のままでは大丈夫だと思います。供給できるかということになると、説明を省かせていただきますが。

岩波正氏(司会):森林蓄積の数字としては、あるということですね。けれど、その森林は、本当にちゃんと使えるよう、手入れをされているのか疑問です。今の住宅産業の流れでいえば、木材なんてベニヤにでもすりゃええやん!と思っているのではないでしょうか? 林野庁としては、木材を大事につかってく、日本の文化をつくっていくように木材をどのように利用していくのかというビジョンはおもちなのでしょうか?

林野庁 鈴木信哉氏:日本の山は、すべてが100年生のいい山というわけではなく、間伐もしなけりゃいけないし、質もいろいろなわけです。こういう、山の手入れをするお金がない時代には、すべてを活用していただく、ということが大事だろうと思います。それには、一般の建築材料に向く元玉から、少し曲がってても使える用途、最後、端材を国産のチップに変えて紙にしようとか、ま、今、間伐材についてはグリーンコンシューマ法とかもありますが、すべて、全部、お金に替えるしくみを入れてあげないと、山主さんの手入れをするお金が出ないわけです。その売り上げた分を山主さんに還元することで、長期に山をもてるようにしてあげなければならないと思っています。

そのためには、伐出コストを下げなければいけないので、山の中に、崩れない、細い2〜3メートルの作業道をつくって、高性能林業機械というので玉切ってしまうとか、間伐コストを下げることで、主伐に向うための投資をしてあげるというのがわれわれがメインで行っていることと理解していただければと思います。

岩波正氏(司会):ありがとうございます。それでは、鈴木先生にお伺いしたいのですが、先生は研究者の中では伝統木造住宅を誰よりも早く、熱心に研究しはじめ、続けてきてておられます。その理由を詳しくお聞かせ願えますでしょうか。

鈴木祥之先生:さきほど、伝統構法を構造力学的に解析することはとてもむずかしいと言いましたが、大工棟梁さんの中には、木材を活かす長年の技がちゃんとあるんです。そうした技や知恵を科学的な手法、要は実験や解析をつうじて、学ぶという取り組み方をしています。大工棟梁さんの技や知恵には、伝統構法という名前は古くさいですけれど、新しいものがあるんですね。今、先端的な技術になりえると思っているからです。これからニーズのある長期優良住宅が提唱する「200年」という数字を考えると、それをクリアしている工法というと、伝統構法が唯一のものだと思います。これから、伝統構法がもっている先端的な技術を使えるようになっていくと思っています。そういったわけで、伝統構法の構造力学的なものを研究しています。

岩波正氏(司会):さいごに、畑田先生に、今までのお話を聞いて思われたこと、意見をお聞かせ願えますか?

畑田耕一先生:長期優良住宅がどんな風に選ばれるかということがありますが、私自身は、こういうものはあまりかたい基準をつくって選ばないで、むしろ「残るものは残す」というのが、将来に対してはいいような気がします。私自身も周囲が書類やものの山になった時に、なんとか選択しようと、捨てるものと取っておくものを分けます。けれど、後から振り返ってみると、大事なものを捨てていたり、残したものが役に立たなかったりします。だからあえて、選択はしない、というのがいいのではないでしょうか。

私自身の興味としては、耐久性ということがあります。いったい家の部材が、どこまでもつのかということを、家をもっている者としては知りたいのです。虫が食うとか水がまわったということがなければ、伐ってから100年、200年の間は水の分子が飛んでセルロースが残って、木材強度そのものは強くなっていくように思います。で、200年ぐらいを越えると、いったいなんでまた弱くなるのか。これにはセルロース合成が介助してると思うんですね。それならば、水をうんと遮断してやれば千年でも1万年でも、もつのか、と。セルロースの分子が水なしに○○とは思えないんですね。そういうところをしっかりと研究していただいだけるとありがたいなと思います。

岩波正氏(司会):それでは、これからはフリーでお話いただきたいて、それに対してご意見をいただいていきたいと思います。どなたか、一言、お願いします。

越海興一木造振興室長:今、畑田先生から長期優良住宅は「あまりかたい基準でない方が」ということをおっしゃっていただいたのですが、ここにいらっしゃるみなさんが不愉快に思うほどいろいろなタイプの長期優良住宅がでてきていますが、まあ、私としては、性能規定化をして、コンクリートでも木造でも鉄骨でも、そのどれであっても、同じ水準であれば、どんなタイプでも認めるということでやっているつもりです。

長期優良住宅のモデル事業というのを昨年からやっておりまして、木造住宅の戸建て、それも地域の木材を使った産直住宅の応募が多いんです。木材住宅担当としては嬉しかったですね。しかし、審査にあがってきている住宅の図面をざっと見ていると、個人的には物足りない。設計図書を見ても、後世に残すべきものという迫力がないんです。ただ、長期優良住宅の認定基準に合わせてつくっただけ、という感じがしてしまう。こんなレベルだったら、古民家一戸に負けちゃうんじゃないかなというのが正直な感想です。

長期優良住宅には、ソフト面での基準もあり、建物の建築当初や修繕など、建物の履歴にまつわる記録をIT化して残し、住まい手の方に渡す、ということにしています。建物だけでなく、そうした情報も100年後、200年後に残せるものに、ということです。海外のホテルに行くと、竣工当時の図面が天井に飾ってあります。ところが今の日本では、図面は建築確認を通すことだけが目的の手続き書類にすぎない。せっかく残すなら100年200年残して恥ずかしくないものを書いてほしいですね。

岩波正氏(司会):長期優良住宅のお話をいただいたんですけれど、日本の住宅のあるべき姿というのを、国としてちゃんともっていただいていないのではないかと思うんですけど、プレハブ、ツーバイフォー、在来、RC、鉄骨、伝統木造と、なんか業界にあわせてどれでも長期優良住宅としてできるように配慮しすぎではないでしょうか。私からすると、ピンと来ないんですが、そのあたりはどうなんでしょうか。

越海興一木造振興室長:長期優良住宅については、概念上は100年200年もって、財産価値がある住宅ですよ、と。記録も残っていてリフォームもできますよ、というしくみのことなんですが、私が長期優良住宅に期待している理由は、実は、鈴木先生と同じく、阪神大震災の経験に原点がありまして。あの時に壊れた建物で生き残った方々から、ものすごく批判をいただいたんです。国会でもいろいろ質問を受けましたが「施主としては、こんな形で壊れて、建て直さなければならないようなものとして発注はしていないんだ」ということなんです。建築基準法の最低基準を守っていれば、いのちは守れた、と。生き残ったということは最低基準を満たしてるんだから、それでいいじゃないか、という冷たい話ではなくてですね、「基準法を守って真新しい家を建てたのに、また建て直さなければならないということなど、望んでいない」ということに応えなければならないんですね。我々としては、最低基準ではなく、建築基準法より1ランク、2ランク上の基準をつくらなければ、地震に遭ったあとも財産として家を引き継いで行くことはできないんだと、そこで分かった。多少こわれはするでしょうけれども、軽微な補修で住み続けられるようなレベルにあげたい、というのが私の欲求なんです。長期優良住宅の法制化がはじまり、やっとこれで最低基準のしがらみを脱却できる、ということで私は推進した、ということです。ですから、長期優良住宅の一里塚として、みなさん方が嫌いなプレハブでもツーバイでも、まずここのレベルで長期優良住宅として推進するというのが私の当面の目標でした、その中から真打ちである伝統構法がいずれ育ってくるというのが現在の私の考えです。

岩波正氏(司会):私どもとしては、優良というからには、構造だけでなくいろいろな面で優良であることが必要だと思います。ところで、伝統構法の建物は地震に弱いという誤解があるように思うんですが、実際に伝統構法には、本当に地震の被害が多いのでしょうか? 阪神大震災以後にも、ありますよね。大きな地震が。そのあたりはどうなんでしょうか?

鈴木祥之先生:大地震がおきるたびに伝統構法の家が壊れている写真などをテレビや新聞をみなさん見られたと思います。瓦屋根で木造の民家で完全に崩壊したようなのがたびたびでてきます。ああいうのは報道からみるとインパクトがある映像で、よく取り上げられます。そして、それが地震のたびになんども放映されると、伝統構法の建物が弱いというイメージができてしまっています。しかし、ああいう崩壊しているのは、母家じゃないじゃないですか。車庫、農小屋、馬小屋などで、開口部がうんと広かったり、ほとんど、まともな家ではないケースが多いんです。そんなことで、伝統構法は地震に弱いというイメージが定着し、それを悪利用だか知りませんが、逆手にとってコマーシャルするようなハウスメーカーがいます。

私、ひとつ言いたいのは、地震に弱いというイメージで瓦産業が打撃を受け、廃業にまで追い込まれていますが、彼らは長期優良住宅には非常に大きな期待をかけたんですね。瓦葺きという、メンテナンスフリーで長持ちする日本の技術を、長期優良の基本の技術のひとつに組み込んでほしいということで熱心に運動されていましたが、最近がっかりされたこともあったようです。

伝統構法の木造建築物には、町家、書院、寺社など、多種多様なものがあり、これを十把ひとからげに扱ってしまうとまちがいのもとです。いろんな構造的な特徴をとらえたうえでの耐震設計、あるいは耐震補強設計をするには、その特徴に合った耐震性能評価が必要になります。きょう、ここにおいでの皆さんは、少なくとも伝統構法の家を建てるのに壁量計算でやったらはだめですよね、ということぐらいは理解されてはいると思います。耐震性能の評価の指標だけでも、重要な問題をはらんでいるんですね。ですから、これからは、あまり細かな仕様規定に走らずに、性能規定型の設計法を活かして、自由な設計方法を確保できるようにするのがよいと思います。

大江忍氏:ここで会場にみなさんにお伺いしてみたいと思います。建築基準法以前の伝統構法の建物について。ご自分でつくっていなくてもよいので、おこたえください。

伝統構法といえば、足元をとめてない建物だという考えに、YESの方は青、NOの方は赤、分からない方は黄をあげてください。

青(伝統構法といえば、足元をとめてない建物である)が多い。

次に、伝統構法の建物であっても、足元をとめるべきだ、という考えに、YESの方は青、NOの方は赤、分からない方は黄をあげてください。

赤(伝統構法の家の足元はとめるべきではない)が大半。

最後に、今国で進めている伝統構法の設計法構築のために行った昨年の実大実験では、水平方向については足元を拘束していました。来年行う実大実験では、足元をとめない建物の実験をしてほしい、という考えに、YESの方は青、NOの方は赤、分からない方は黄をあげてください。

青(足元をとめない建物の実験をしてほしい)がすべて。

岩波正氏(司会):開催をしとる人間がひとつ方向性をもっているのでまあ、こういう結果が出て当然かもしれませんが、伝統構法というのは形だけではないとはいえ、それでも、技術者としては形もあるのであって、それが今の結果にあらわれたと思います。

もうひとつ、伝統構法は全国一律ではなく地域性があるよ、とか大工さんによって違うとか、地方によって素材もいろいろでそれをどうすんのとか、いろいろあります。この点については、みなさん、どうでしょうか。

越海興一木造振興室長:新しく建てられる住宅はその地方の木材で建てられると思うんですが、最近、この仕事をやっていると地方の役所から伝建地区のことで相談を受けることも多いんです。伝建地区で、都市計画的調査を、たとえばその地区で建物がどう建て替えられたか、用途がどう変わったかを5〜10年おきに調べるという調査の報告や相談を受けることが多いんです。その際には、最近こういう実験もしているので、地元の大工さんや研究者を入れて、構造体や仕口を調べて仕様をひろう、必要ならば耐力試験をして、仕様書をつくる、耐震診断、補強の設計をするということをお勧めはしているのですが、大体その時点ででてくる反応は「昔の伝統の木造ではあるけれど、今、まわりにそういう木がない」「植林の樹種が広葉樹から針葉樹に変わってしまって、同じ仕様では、できない」ということなんです。ですから、はたして伝統の町並みとか古い木造を、そのままの形で続けていけるのかというと、あやふやなんだなということを実感しています。ならば頭を切り替えて、新しいまちづくりの中でアプローチしていかないと、畑田先生が心配されているように町は消えていく一方だと思います。

岩波正氏(司会):今の、地域性とか、特色といったことで、鈴木先生、いかがですか?

鈴木祥之先生:越海さんから伝建地区のお話がありましたが、私どもも伝建地区の調査をよくします。ああいったところで保存のためにということで改修工事が進められるわけですが、ほとんどが元通りにというように直しているので、耐震性が問題になる地域だと、講習会や耐震改修の提案をさせていただいています。そういうことをすることを通して「そうだ、町並みを守るにあたっては、地震についても考える必要があるんですね」ということでやっと耐震の問題もクローズアップされるようになり、これから改修するようなところでは耐震補強設計もやっていただくようになってきます。だた、大工技術として、昔のように直せない。左官職がいない、漆喰が手に入らない・・という話がでてきます。けれど、根本的には、大工や左官の職人もその地域にいなくてもいますから、応援を頼みながら直せると思います。

岩波正氏(司会):このへんで、会場から出た質問を取り上げたいと思います。明城の榊原さんからご意見いただいていますので、お願いします。

榊原さん(会場より):明城の榊原です。伝統的木造住宅って、何がいいの?ということを越海さんに質問したい。伝統的木造住宅をつくるのにいろいろしゃべっとったってどうにもならないんだから、使う材料だけ基準を決めたらどうですか? 石川県、新潟県、茨城県と被災地を見にいってみましたが、石川県なんてひどいもんですね、13.5センチ角の細い家は全滅。けど、18センチ以上の柱を使ってる家は、なんともなってない。だから、伝統的木造住宅で足をとめてないというのは、まず、柱の太さが18センチ角以上を使わないとまず無理なのではないでしょうか。

それから、私が安城で47年前に小僧に入って、地域地域で伝統はありました。法律はなんにもなかったけど。そういう意味はみな、柱が太い!んです。12センチ角の柱なんて使ってない!そんな柱を使って伝統的木造住宅って言ってることがおかしいんじゃないか。それをぼくは言いたい。

最後に言いたいのは、伝統的木造住宅にほんとうにお客さんがほんとうに住まいたいのか。住まいたいという人が多い。ところが、予算の話をすると、みんないらないという。やっぱり予算ありきで伝統木造住宅をつくるんだと思いますが、そこでがんばっていきたいと思います。国交省からも地域木造振興ということで補助金をいただいております。私どもの家は、愛知県産材100%でつくっています。かんなくずまで断熱材に開発してつこうてます。木材は最後まで使えるんです。長期優良住宅も愛知県産材100%でやっていけると思ってます。そこまで考えながら、こういう伝統的工法がどこらへんまでできるか、聞きたい。

越海興一木造振興室長:私に何が問われているのかよく分からないのですが、伝統木造住宅の何がいいのか、といういうことについては、あえて伝統構法の定義が分からないと私も文章に書いた立場であえて何がいいかといえば、たぶん木造であるということと、伝統的なデザインがあることで、住みやすい、なじみやすいということかなと思ってます。伝統構法って何がいいのかについては、どういう指標で説明すればいいのかわかりませんが、多分、あまり科学的指標があるものではないと思います。それは、私がそういう風に答をせざるをえないような質問だと思いますが、どういうふうな答を期待されているんでしょうかね・・

榊原さん(会場より):伝統的な木造住宅をつくると、冬はものすごく寒いっ!今のプレハブのような家は、エアコンを使うと、ほんとうに快適に生活できます。土壁の家はほんとうに寒いです。エアコン使っても保温性がないから、部屋をあっためても、冷えるのが早いです。いったい、何がいいのか。エアコンを使わない住まい造りぐらいなら、いいですが。

越海興一木造振興室長:土壁とボード、断熱材などを併用している人もいます。昔からのばりばりの伝統構法ということでなく、いろいろな技術をとりいれて、性能規定化の中でどれくらいのレベルまでいけるのかということを考えて工夫してしていただければいいのではないでしょうか。使う材料は18センチぐらいないと、というのは私も同意見です。18センチにこだわるわけではないのですが、建築指導の部局にいると建築基準では10.5センチと書いてあるところを10.4センチでいいか、という質問が年何回か、電話でくるんです。最低基準ぎりぎりでつくっているところを、削り過ぎちゃったというんですね。そういう質問にこたえるのもばかばかしいんですが、

現在、林野庁で統計を出していただいている「主流となる木材」は10.5センチ角か12センチ角、そこから上はかなり特注品に近い。13.5センチはまあ出てますけど、15センチ、その上の18センチとなると、レアもの、になります。ですから、一般的に流通している材が非常に細いという、まあ、原因のひとつとして、建築基準法の中で最低基準としてつくってる寸法にみなさん、合わせてる、ということなんですね。これはもともと大量生産をするというマインドがはたらくと、別に木材の太さだけではなく、あやゆる建材がそういう方向にはたらくんで、家が設計ぎりぎりで建てられる理由もここにあります。私はそういう最低基準さえ満たせばいいというのはやめて、長期優良住宅のような一つ上のレベルで実現していただくようにもっていきたいと思っております。

伝統的な住宅は、昔はだんなさんがつくるような感じで、非常にお金をかけて数寄家として、宮大工がいい物件をつくっていたりします。そういう系統のものと同じようなものが安くできるかというと、それはむずかしいのです。いろいろみなさんご不満もありました、昨年の揺らした実験棟2棟ですが、みなさんから見ると、非常に貧弱な、伝統まがいのレプリカだったと思いますが、まあ、一般の人の手に入るのはあの程度のものだということで、最低でもあれくらい、ということで実験をしました。

ところで私の方からここでみなさんにお聞きしたいのですが、3年間のプロジェクトですから、最終年である来年に間に合うように、一棟だけ、足元をとめない石場立てで揺らしたいみたいんだけど、その一棟をどういうものにしたらよいか、みんなで考えて、意見集約ができますか?ということを問いたいです。

今のお話で、伝統構法の柱の断面は18センチ以上や、という意見が出ましたが、それなら京町家はどうなるんや、という問題もありますよね。E-ディフェンスで町家の実験もされてますし、さきほど、伝統構法はこれや!と決めてしまうと、かえってせばめることになるというお話もいただいたので、鈴木先生にそのあたり、おうかがいしたいのですが。

鈴木祥之先生:そりゃあ、木材は断面が大きい方が安心ですよ。刻みひとつにしても断面欠損の問題があるので、太い方がもちろんいいんです。ただ、今お話がありましたように、京町家なんかはどうなのか、と。ごぞんじの通り、京町家では、華奢で細い材を使っています。じゃあ、その構造性能がまったく悪いのか。それを調べるために、E-ディフェンスで京町家の新築と古いものを2棟同時に揺らしました。結果は、華奢な材を使った町家でも、少しだけ耐震補強すれば、神戸の地震にも十分に、軸組に損傷はありませんでした。新築はある程度太い材を使っていわゆる現代的な耐震設計をしていたので、大丈夫でした。どちらもクリアできたんです。

「柱の太さだけを」と決めてしまうと、少し、自ら縛りをかけすぎてることになるのではないかと思います。地域の特色を活かしながら、ということを考えますと、あまり細かいところを決めてしまうのでなく、町場の人は華奢な細いのでやりたい、田舎は太いドーンとしたのがいい、という好みもある。それぞれに合ったいいやり方があるはずなので、それを考えるのがぼくらの仕事かなと思ってます。

岩波正氏(司会):もう少し、会場から質問がありますか? 時間だけは守ってくださいね。

木下さん(会場より):木下です。今、ここに、棟梁は、われこそは日本の棟梁だと言える人が何人いますか? 手をあげてみてください。誰もいないんですか? 棟梁というのは責任はすべて自分が負う、役人の指示にはしたがわん、というぐらいの、それがほんまの棟梁です。ただし、畑田先生が最後におっしゃった質問にすべて、こたえられなければいけない。どういう材で、どういう強さをもってて、地盤がどうで、どういう構造で。

今、能登の材について言った者があるので、私は能登の出身なので、この間の能登の地震の経験にもとづいて、言います。珠洲郡の一部は年輪が非常にこまかくて、かたいけれど、穴水、輪島、羽咋、あのへんは、火山灰で年輪が粗くて弱い。太くてもダメ。珠洲の3寸角と、穴水の6寸角と並べたら、珠洲の方が強い。木というのは、そういうものなんです。私の弟子がふたり、能登におりますが「親方、私の建てた家では、茶碗ひとつこけてないから大丈夫です」と。私がいろいろ情報を集めたところ、明治以降、トロッコができて、山におった人が海岸に出た。海岸や川元の埋め立て地に家をたてた。地震で棟をやられたり瓦が落ちたりしたのは、そういうところだ。門前も埋め立て地。穴水、そんなところで3寸5分のスギの柱、これはこけてあたりまえや。だけれど、それ以外の能登半島、富山、福井の北陸3県にはそんなややぶしい家は立ってないの。

私はいまだに全国の旦那がたとおつきあいがあって、坪150万以下はしない。責任もてない。それはね、400年、500年もつ家をつくるには、それくらいかかる。越海さんに再三申し上げてるけれど、いくら実験やってもだめ。それより私が全部自分で建てるから、みんな見に来い、と。実験も私は自分の金でやる。防災の、軒先のあれを野地板から土壁に変えたのは、私がやった実験の後に学者がついてきただけや。そうでしょ。それから屋根・・・・・これは、国の金ではできない。自分の金でないと。それには、いいだんなの家に出入りしてなければ、いい建築はおぼえられない。新潟の北方博物館に行ってよく見てください。あれを見たら大抵あれを見たら、それから庭から石油が出る村上さん、ああいう・・・大変な技術をもっとるんです。それと、京都でいちばん悪い建物、指定文化財になってますが、北村美術館、あれは3寸3分だけどもっとる。地震のも耐えとる。ただ、大工が天井の欠きと庇の欠きをいっしょにしてるから、1寸5分しか残ってない。ああいう構造は、構造欠損。あれはアカマツの3寸3角。それは能登の6寸角よりはるかに強い。だから寸法じゃない。木の樹種なんだ。だから、今、・・・寺の本堂やってるのになかなか確認がおりんで難儀しとるけど、これはあの、すぐ許可おろしてくれたら、全国の大工棟梁という人間に見てもらおうかと思ってる。それをやってくれると、国の金はいらん。そんな金は使うな。

岩波正氏(司会):ありがとうございました。それこそ今の話のように優秀な大工さんをマイスター制度のように認定して、という話もあると思います。それは第二部でまた話したいと思いますが、今の発言で木の話がでましたが、鈴木さん、どうですか?

林野庁 鈴木信哉氏:われわれも顔の見える家づくりというのを推奨しています。それは、山の木が分かるということが非常に重要だということで、全国でグループをつくってですね、これを支援していこうということです。今おっしゃったように、木は樹種によって強度がみなちがうし、同じスギでも、この・・・のこの・・・木が強いとか、いろいろあるんですけれども、そういうのが分かるという意味ではですね、やはり地域での顔の見える形での家づくりというのが重要だと思います。ただ、それが東京とか埼玉とか大阪とか、広域流通になった場合にどうなるか、という別の観点が、また別にあると思うんですが。

さきほど柱の太さの問題が出ましたが、今の日本の人工林は、太くなるほど値段が下がるというまったく逆の現象が起こっていてですね、あの10.5角をとる方が大変なんです。細い木がなくなってきちゃったから。だんだん太くなりますので、できれば、太い木の柱にしていただいた方が、山をやっている人にとっては、その方がいいんです。昔だと10.5角といっても、分切れといってわざと減った材料を出すことがありましたが、10.4角のを出したりしてましたけど、今は木の値段安くなってますから、分増し傾向にあります。ですから、太めのを使っていただけるとよいと思います。ぜひ、ご利用ください。出せますから、木は。柱の太さも、特注だと高くなるというようなことのないように、われわれもしますから、そこはあまり心配しないで、ぜひご利用ください。

岩波正氏(司会):2部を4時ぐらいから始めたいと思っています。1部はあと10分ぐらいとせまってきましたが、大江さん、なにかありますか?

大江忍氏:みなさんの意見や木下棟梁の意見を聞いていましても分かりますように、伝統構法は地域によって全部ちがうし、地域の特色を活かしてつくるべきだと思います。それを国で決めた一括の法律でドンと決めてしまうのはむずかしいと思います。国交省に行かさせていただいてわかるのは、ほんとに地方の役所ぐらいの人数の中でやってみえる、大変な作業をしてみえるので、やはり、地域地域のお役所の確認をおろす係の人たちがもっと勉強していただいて、木造の伝統構法の確認申請がでてきても、許可を出していただけるように、いっしょになって勉強していくことが必要だなと、つくづ感じます。

その地域地域で、地域の木を活かした家づくりをしてほしいと思います。もちろん職人さんがいないとできませんので、職人にちゃんとした賃金を払ってということも必要だと思います。建てる側の経済的な問題もあるとは思いますが、長いあいだ使えるものであれば、建てるコストを年数で割れば、孫子の代まで使えれば、コストというのも安いものだと感じますので、ぜひ伝統的構法を残していきたいと思ってます。

畑田耕一先生:さきほど木下棟梁が「ここの中で自分を棟梁だと思える者、手を上げろ」と言ったら、誰もいないのにはびっくりいたしました。・・・今は、建築確認というものがあります。その許可が、おりない。そこで「これはわしの経験なんや」と主張しても、通らないだろうと思います。木下棟梁のようにおそるべきほどの知識をもった棟梁がいないとすれば、やはり、木材の性能を評価するデータベースを、ちゃんとしたものをつくっていただくのが大事なのではないかと思っています。すぐにできるとは思いませんが、少しでも着実にやっていく可能性があるんでしょうか。数値的なものがないといつまでたっても、主張のしあいになるような気がします。

越海興一木造振興室長:第二部で大橋先生がでてくるので、そのデータベースの話は出ると思います。基本的には、木が分からないとか木造が分からないという人が多いんです。2年前に建築確認がとまった時に、建築主事から「木造のことは分からない」という話をさんざん言われました。建築事務所で設計をしているような人でも、大学であまり木造を勉強しないものですから「木造が分からない」という。木造を分からない人が設計して、木造の分からない人が審査するというあるまじき事態で、これをあまり表沙汰にはしたくないけど、これはかなり抜本的ギャップがあるわけです。これでは、安心して木造を買えない。今、木造の中でいちばん高いのがプレハブが高くて、次がツーバイ、いちばん安いのが在来の木造なんですね。市場の中で信頼性がぜんぜんあがらない原因はそういうところにあるんだと思います。きちんと説明できるようなデータがないし、それに勉強方法もない。

さかのぼっていくとですね、私自身も大学で材料施工研究室というところにいましたけれど、木造はちょこっとやった程度で、たいして学んでないんです。本当に木造をやってこられたのは、現場で施工を担って来た大工棟梁たちなんですね。実践の中で学んでこられた。しかし、その方々が徒弟制度という中で育っていて、それはあまりきちっとした教育プログラムにはなっていないんですね。どういう教育、訓練を受けた人なのかということがきちんと説明できるようなしくみをつくっていかないと、とも思っています。

どんな住宅に住みたいかという調査をすれば、8割方は木造に住みたいというんですけど、今言ったように環境整備ができてないので、信頼性がない。いかにして、信頼性を回復すればいいのか、というのが私のテーマです。

畑田耕一先生:学生が木造住宅のことをほとんど知らないですね。木造のことを知らないまま、建築の専門家です、と東大の建築学科を巣立っていかれるというのはなんとも心細いです。小学校の出前授業などで、これからかかわる人にもっと木造住宅のことを伝えてほしいですね。

岩波正氏(司会):時間もそろそろ来たので、司会者の分際でまとめさせていただくと、風景、景観、自然と融合する、道徳、創意工夫、想像力・・・畑田先生からは講演の中でいろいろなお話をいただきました。木下棟梁のように自分は棟梁だ、と言いきれるほど腕のいい人はそういないし、判定するのはむずかしいので、ある程度基準化することは必要だとは思います。けれど、畑田先生が言われたような要素は、なかなか数値化できません。道徳的な側面とか、家はどうあるべきだということはね。でも、少なくとも、データベース化するのであれば、数値化できる要素は基準をつくっていただいていいんですが、そのために数値にできない大事なものをこわさないということを条件にしてほしいです。

ぼくははっきり言って、プレハブ住宅は嫌いです。風景とか景観とかちっとも考えてないし。しかし、それを一定の基準にあてはめれば、すぐれた建物となってしまうかもしれない。たしかに、それはある数値は満たしてるかもしれないけれど、風景とか自然との融合とか、大事なものをこわしてると思うんです。しかし、数値の基準だけを決めてしまえば、それでいいことになってしまいます。そういうのはいやや、という人がこの会場にいらしていただいているんだと思います。そういった声をどういうふうにまとめ、伝えていくか。伝統構法を残していこう、ということは伝統構法の形を残せばいいというだけでなく、伝統構法の本当の魅力をいかに守ってくのか、ということを考えていく必要があるんじゃないかと思います。

ややもりあがりに欠けた感じで終わりますが、これも第2部の前哨戦ということで、第2部ではより熱心な議論ができると思います。4時まで休憩ということにさせていただきたいと思います。

第二部
『国の伝統木造性能評価事業で、
 伝統木造住宅が未来につながるのか』

越海興一氏(国土交通省木造住宅振興室)
大橋好光氏(東京都市大学教授、伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験実施委員会主査)
鈴木祥之氏(立命館大学教授)
古川保氏(設計者:すまい塾古川設計室)
宮内寿和氏(大工:宮内建築)

金井透氏(総合司会):これからパネルディスカッションの第二部として、『国の伝統木造性能評価事業で、伝統木造住宅が未来につながるのか』をはじめたいと思います。岩波さん、よろしくお願いいたします。

岩波正氏(司会):それでは『国の伝統木造性能評価事業で、伝統木造住宅が未来につながるのか』というお話をさせていただきます。この間の経緯を説明しなくてはならないのですが、さきほど金井さんから基準法の厳格化のあとこれ木連ができた経過をご説明いただきましたが、その結果なのか、その頃並行して、国の方でも伝統構法の性能を検証するという事業が始まりました。それはよかったな、ということでよろこんでおったわけですが、その中で、伝統構法の事業に実務者が参加することができます、というのが現在の状況です。

きょう前に並んでる古川保氏さん、宮内寿和氏さん、さきほどの大江忍氏さん、私もその委員として参加しているのですが、去年E-ディフェンスで実験が行われて、さあ、これからどういう風に進んで行くのかなというところまで来て、実務者の方であたまに?マークをのせる人が増えて来まして、私どもの思いを委員会の方でもお話はさせていただいたのですが、なかなか行き違いもようけあるように思うので、みなさんの意見もいただきながら、いつも委員会に関わってる方の話も聞きながら、話を進めたい。

そう言いながらも国の性能評価事業について、みなさんに伝わってるのかどうかあやしいということもありますので、まず、大橋先生に10分ぐらいで今の性能評価事業がどのように進められているかという概要と、3年間の事業が行きつく先といったようなことをご報告いただきたいと思います。

大橋好光先生:お手元にお配りしました「業務の目的と内容」という資料をかいつまんで説明したいと思います。業務の内容ですが、(1)実大実験:去年E-ディフェンスで2棟の実験を行いました、今年はその2棟の軸組だけの実験をしています。それによって、土壁と軸組の負担の割合を検証できるのではないかと思います。最終年にあたる来年度にも、もうひとつ、まとめの実物大実験をします。(2)要素実験:昨年は実物大の試験体で実験しましたが、接合部、土壁、差鴨居などのそれぞれの要素がどういう性能をもっているか分かれば、それらを組み合わせて全体の解析もできるということで、各要素を取り出した実験をしています。このデータがでてくれば、ある程度の解析ができることになろうかと思います。(3)設計法構築:はこのプロジェクト全体の目的にもなっていますが、伝統木造の設計法をつくること。これは3年計画。私としては、今年じゅうに骨格をかためて、と思っていますが、少し遅れ気味かなあと思っていて、私もちょっと心配しています。

具体的な実施項目ですが、(5)だけ説明します。限界耐力計算にもとづく設計法の構築。設計法としては簡易法と詳細法の二本立てでつくろうと思っています。詳細なものの方がいろいろな工法に応用ができるけれど、ですけれども逆にいえば、データや計算書を自分で相当がんばって提出しなくてはいけない。これが詳細設計法です。この詳細設計法をもとにした簡易設計法では、当然ですが、簡易なもので計算書がいらないものとなると、ある程度仕様を限定してつくっていくことになるだろうと考えています。

3ページに実施体制が書いてあります。慶応義塾大学を退職された東大の名誉教授である坂本功先生が親委員会の委員長で、その下に実施委員会ということで、私が主査をしております。その下にTT、タスクチームが5つあります。あまり大きな分科会という呼び方ではなく、機動的に動きたいということでタスクチームという名前にしてあります。

(1)実物大振動実験実験TT:昨年の実物大実験の建物の仕様を決めたり、実際の建物を制作する手はず、いろんな職人さんへの連絡をしたりしました。(2)振動台実験建物の詳細解析TT :この震動台実験をするのに、この建物ならどういう応答になるのかを、あらかじめ解析する仕事。それから実験が終わった後には、要素実験のデータなど部分の実験から全体の耐力をどう推定できるかということを考えています。(3)限界耐力計算に基づく設計法TT:さきほどお話しした簡易設計法と詳細設計法の二つをまとめるTTです。(4)構法分類TT:伝統構法は地域ごとにつくられているということで、今回の設計法が地域の工法をどの程度カバーできるかを検討しなければなりませんので、構法分類ということで、各地の仕様をまとめることバラエティがどれくらいあるのかを調べるTTです。(5)材料問題TT:伝統構法では、未乾燥材、丸太材、古材など、一般とちがう材料を使うという条件がありますので、そうした材料問題を検討するTTです。

いまは2年目の半分が終わったぐらいのところですが、実物大実験TTでは、昨年実物大実験の1が終わったところです。要素実験をTTでは、まさに今さまざまな実験をしているところです。設計法TTでは、下案にあたるようなものを議論しています。分類TTでは、それぞれどんなつくり方をしているか、全国で10数カ所、現地ヒアリングをしているところです。材料TTでは、過去の文献集めと今回のTTの中で予算をつくっての実験をしようと進めているところです。そんなところですね。

岩波正氏(司会):概要中の概要なのかなということですが。細かい具体的な細かい話は、住木センターのHPで確認できるようになっています。参加している実務者から意見がたくさんあると思うので、まず、宮内さんからお願いします。

宮内寿和氏:こんにちは。この滋賀県の地元で、大工しております宮内寿和氏です。私は材料TTに参加さしていただいてますが、それまでは実大実験TTにも積極的に参加させていただいてました。いつも東京で会議を終えて帰ってくるんですが、あの東京のコンクリートジャングルの中で木造の話してて違和感を感じてるんですけど、言え、言えときょうは言われるのでぶっちゃけて言いますと、大橋先生は個人的には好きなんですが・・、感じるのが、これは伝統構法を建てられるようにしようということで越海さんがご尽力いただいてできたはずの委員会なんですが、今では、実際ぼくの中では、この委員会では無理やな、と思っています。というのは、各TTも最初のうちわれわれ実務者の間でも、すごく大きな委員会とリンクしてると思っていたし、ぼくらの意見も通っていて、伝統構法を未来につなげていく何かができていくのかあんという期待もあったんですが、今となっては、TT同士がリンクしてないし、親委員会に対してのわれわれの意見もほとんど通っていかない。大体大方の研究者の方が伝統的な構法をほんとに建てられるようにしたろうと思っていただいているのかな、というそんな不安が、結構実務者の間にはあって、越海さんに会いに行ったり、大橋先生に話に行ったりもしたんですが、岩波さんたちと大橋先生に話をしに行った時にですね「足元緊結でしか考えてない」と言われたんですね。ぼくら伝統構法の認識として、柱は石の上に立ってて、足元緊結されてない、というのが伝統構法やと思ってるんですね。足元。足元緊結した時点で伝統構法やないんです。足元緊結して金物を使わない方法の計算式だったら、今でもできるんですわ。許容応力度計算とか使って。それを、その上、足元緊結のための計算式を、大きな税金を使ってやってるというのが、考えられない。この間の国会答弁でもありましたけど、研究者に分からなくても石場立ては積極的にやってくべきじゃないかなというのを感じてて。けど、その部分が全然受け入れられないんですよね。ほんとにこのままいくと、実務者としてかかわってて、ガス抜きにされてるんじゃないかな、という感じがあって、1年半後にはここの会場にいるみなさんに「おまえらが行ってて、なにやっとんのや!」と言われるんやないかという危機感があって、こういうフォーラムを何回も行っているという理由をね、大橋先生や越海さんに本当に分かっていただきたい。みんなが望んでるものは、構造だけやなしに、われわれがちゃんと伝統構法自体いろいろな要素があって、ぼくたちはそういうものを大事にして住宅というものを建ててきてるんであって、今のままでは実務者として不安を感じるばかりで、いつも東京から帰ってくる新幹線の中でストレス感じて帰って来ているんで。今ぼくが率直に感じてることを申し上げました。

岩波正氏(司会):次に古川さん、お願いします。

古川保氏:熊本から来た古川です。今日は伝統構法というテーマでございまして、なんで伝統構法にこだわるのか、という先ほどの方の質問がありましたが、お話させていただきます。スギの木がいちばんとれるのが宮崎県、2位が大分県、3位が秋田県、4位が熊本県。1位、2位、4位は地域としてだんごになっておりまして、私どもの九州では柱だけでなく、梁も杉を使うのがあたりまえ。梁も松ではないんですよ。そして、非常に高温多湿で、シロアリが多いんです。スギの木は湿気のあるところに生えますから、シロアリにやられんようにタンニン成分が多うございまして、みなさん方からするという黒芯が多くなります。それから、外国と違って山に木が植わってますから、当然根元にあたる一番玉は曲がってます。じゃあ、曲がったところは梁に使って、まっすぐなところを柱に使えばいいということになります。これが伝統構法の得意とするところです。

それから、私のところではシロアリが多いもんですから、基礎の下はやっぱりすっぽんぽんの方がいいんですよ。ところが、基準法で基礎の立ち上がり300というのが平成15年にかかってきて、大変なことになってしまったわけなんです。床下をすっぽんぽんにして、シロアリの防除をしたい。じゃあ、含水率が高い自然乾燥より人工乾燥がいいのか、というとそうではなくて、人工乾燥したら別の問題が発生してくるんですね。人工乾燥したらなんかの成分がでてきて、シロアリがつきやすくなるというのを本で、新幹線で読んでたんですが、その本を新幹線に忘れてきてしまって困ったなと思ってるんですが・・。

で、人工乾燥せんで、シロアリが寄って来ないようにするいい方法といえば、伝統構法なんです。伝統構法は完全乾燥は向かない。かといってズブ生でいいかというとそうでもなくて、一夜干し程度がいいんです。まあ、柱は乾燥してないとダメですが、それ以外は。そういうところでですね、地域にあったやり方が、伝統構法なんです。伝統構法は地域住宅なんだという思いで自分自身は、やってます。

宮内くんがエライ怒りまくっていますけど、私も設計TT委員というとこにいまして。みなさん全貌はお分かりにならないかと思いますが、設計の手法をつくっているところです。伝統構法は奥が深くて、設計方法の前に計算方法をどうるすか、という俎上にあるわけです。さっき第一部で鈴木先生が、伝統構法はRCや鉄骨と比べて解析が困難だとおっしゃいましたが、たしかに伝統構法は奥に入れば入るほとむずかしい。極論すれば、3年間で解析なんてできっこない。できたとしても、単純なものしかできない。ですから、ほんといえば建築基準法が60年前にできたんですから、その時から伝統構法を研究すべきだったわけですよ。それまでに本格的に石場立ての研究をしてきたかといえば、してこなかった。国のすじみち立てて研究してこなかった。この1年半でようやくはじまったところなんです。足元をフリーにしたらどんだけ動くのか、どのくらい変形するのか、倒れるのか倒れないのか、分からないんです。つまり、分からないことをしたら、ダメだ、というのか。分かった分だけ許可するのか。学問の世界と実務の世界とのはざまにおるのではないかと思います。

今、会場にもマスクしてる人が二人ほどいますが、あの方がコホンと咳をしたら、遺伝子レベルで研究して、あなたは大丈夫ですよ、というようなものすごい細かいレベルで研究がされておるわけですよ。設計法の前に、今、解析をやっているわけです。どう動くかという。めちゃくちゃ細かいし、私なんかそこまでついていけない。そこのレベルでずーっと研究していけば、奥が深くて、3年間で終わるのかな、と思っています。しゃべりすぎるんで、このへんで中断します。

岩波正氏(司会):いろんなこと知らない人にはピンとこない話かもしれませんが、大橋先生に。この3年間で、全国にある伝統構法の何割ぐらいをカバーできるのでしょうか。もし完成するような設計法ができたとしても、伝統構法というような顔をしたハコをつくるだけで、実際ハウスメーカーぐらいにしか使われないのではないかという意見がぼくらの間には出ておるんですが、先生がつくられる設計法はここに集まった方たちに何割ぐらい期待にお応えできるんでしょうか。

大橋好光先生:何割っていうのはむずかしいですけれど、今考えてますのは、差鴨居、貫、土壁を使った工法については適用できるようにしたいと思っています。むしろ、前からあっちこちでみなさんにはお願いしてるんですが、それぞれの地域で伝統構法をどうつくりたいと思っているのか、それを教えてください。構法分類TTの作業はまさにそういうことを進めているんですが、遅れぎみで、ですから、われわれ、設計法をつくる側でも、知りたいんです。みなさんがどういうものをつくりたいのか。

さきほど、のっけから宮内さんが直球勝負できましたけれど、私は伝統構法は足元だけの話じゃはないと思ってるし、まだ上部構造の設計法をきちんとつくらないうちに足元の議論するのは、尚早だと思っています。上部構造についても、どういう仕様のものをつくりたいと希望されてるんですか?それをきちんとまとめて、われわれ設計法をつくる側もできるだけ広い範囲で対応したい、と思ってますので、早めにですね、みなさんのご協力を得て、どういう仕様のものをつくりたいかということを知りたい。まあ、今の時点では、研究者側が考えている伝統構法の要素ですね、接合部であれば鉄輪継ぎですとか追掛大栓継ぎだとか、実験しています。土壁も、貫も、差鴨居、なども実験していますので、そういうものは概ねつくっていけるんではないかと思っています。それでも、さきほどから出てますようにうちは材料がちがうんだとか、竿車知の寸法はこうなんだ、とか。そういうことを教えていただきたい。こちらとしてはこんなものかな、ということで実験を行っていますが、それで全部をカバーできるのか、むしろ教えていただきたいと思っています。

岩波正氏(司会):ここから先は自由にご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。鈴木先生、なにかございますか?

鈴木祥之先生:いま大橋好光先生さんから説明がありましたが、伝統構法って地域でどんなもんだということですが、いろんな地域にあります伝統構法の特徴、特に構造的な特徴をとらえて、ということも非常に大事で、そういう研究をされている方もあると思いますが、あまりそういうことに固執されるよりはむしろ、そういう地域性を組み込めるような設計法にしておけば、そんなに細かなことまで決めないでおけばいいように思います。

仕口接合部だとか、いろんなことで、大工さんの個性やら地方性やらで全国的にいろいろだと思いますが、やはりあのデータベースとして公表していけば、自分のとこで使っている仕口は入っていないね、と公開することによって始めて分かるし、そうやって充実させてけるのではないか。そうでなければ、どんな仕口が実験されてるのか、みなさんほとんど知らない。ですから、できるだけ早く公開していただいた方が、いいのではないかなと思います。

もうひとつ、1部の方でも、構造力学的にむずかしいところ、未解明なところが多いですよ、と申し上げましたが、ではそこが解明されないと設計法がつくれないかというかと、そうではないだろうと思うんです。われわれ研究者としては、どんどん研究していけばいい。解析的な手法としては3次元的な、非常に膨大なプログラムをつくって、というのはわれわれ研究者の仕事であって、みなさんがた実務者の仕事ではない。

というようなことで、たしかに、伝統構法は奥が深いですから、いろいろな問題をかかえていることも事実です。だけどそういったことが解明されていなくても、設計そのものは可能なわけなんで、だからある程度自由度の高い設計法にしておけばそういうすべてのものを取り込んでいけるということだと思うんですよね。で、研究的にいろんなものが進んでくれば特にまあ、柱脚の滑り、移動、さきほどから問題になっていますが、必ずしもきめつける必要はないわけです。

実際、大きな地震でも、伝統構法の建物が非常に大きく移動して困った事実がそれほどあるんですか?ということですね。とめつけるということであれば、実際の被害報告をきちっと調べて、どこがどうだったかを教えた方がいいと思います。で、伝統構法の建物はそんなにあの強度といいますか、耐力をあげるような形でつくってませんので、摩擦とベースシア係数と、そんなに私どもたくさん伝統構法の建物を被害調査をずいぶんやってきましたですけども、ほとんどの建物は滑ってないですよ。鐘楼だとか、ああいう特殊な建物は落っこったりしてますが、あれは別に落っこちたからといってどうということはなくて。というようなことで、伝統構法の木造住宅の設計法として、やはり、従来からずっと建て続けられてて来てるものなんですから、そこらへんをきちっと見せた形でやっていただければいいと、思うんです。

岩波正氏(司会):先生、あの、今会場からいただいている簡単な質問がひとつありますので、ついでに聞いておきたいんですが、元神戸市職員のイナベさんという方からですが、伝統構法は地震に強いみたいなことになってますが、戦前の濃尾地震や関東大震災では多くの木造建物が倒壊しましたが、すべて伝統構法ではないでしょうか。たまには強いものもあるかもしれませんが、全体としては耐震性は不十分です、というご意見をいただいていますが、いかがでしょうか?

鈴木祥之先生:過去の地震でもたしかに伝統構法の被害はたしかにあります。その被害でも、それがどういう建物であったのかは、あまり触れられません。農家に行きますと、主屋があって、農小屋があって、離れがあって、蔵があってという、そういうような構成になっているわけで、そのうちのどれが壊れたんですか?と農小屋みたいなものが壊れても、それはそういうふうなつくりに、開放的につくられていて、そんなに耐震性を求めてつくられていない。昔の話になってくると、もちろん耐震的につくるという、そういう設計法がなかったので、その地域でまあ長くやられてきた仕様といいますか、でやってきたわけです。

だから、残っている建物もたくさんあるし、壊れたものもあるし、そういうようなことが起これば、伝統構法の建物含めて調査をして、というやりかたをとるわけですが。その中で、必ずしも伝統構法の建物がことごとく壊れた、というわけではない。もちろん弱い建物もありますが、だけどかなりの部分は地震に強いものもある。なんでもかんでも強いとか弱いとかというわけではない。

岩波正氏(司会):同じ質問を大橋先生にもおこたえいただければと思いますが。

大橋好光先生:鈴木先生が最後に言われたことにつきると思うんですが、伝統構法、これも私いろんなところで言ってますが、伝統構法と言いながらも、それそれがイメージしている建物がそれぞれの立場で違うんで、伝統構法が過去の地震において、今神戸の方が出されたご意見もたしかにその通るですし、きちんと残った建物もあるだろうし。まあ、私としては、かなり古いもの全体をたとえば伝統構法とよんでしまえば、過去の地震が示しているように耐震性能が劣るものが多いのはまちがいないです。ただ、その中でも当然残っているものがあるので、今回のプロジェクトは、そういう、こう、きちんと残っているものでいい性能のものがあれば、そういうものの特定をきちんと、科学的に評価できるようにして、それを取り込めるような設計法ができるのであれば、それはいいなと、そういう考え方で私はこのプロジェクトを進めているつもりです。

岩波正氏(司会):では、元の議論に戻りたいと思います。

古川保氏:えー、今進んでますのは、設計法の前に解析というのがあって、非常にむずかしい。木造はいろいろなもんが複雑に絡み合ってて、たとえば鉄筋やRCだったら接点が10個しかないのが、木造だとその10倍もあるんで、えーと、xyzとなりまして、解析ってできるのかな、という気持ちを今もっています。当然その解析をして解明するのが科学者の役目で、工学的に分析しなきゃいかんのが命じられているわけです。じゃあ、3年後にこれが本当にできるのかというとそういうわけにはいかなくて、3年では伝統構法は解明できないと思うんですよ。ということは、20年後、30年後になる。けれど、そこまでかかってたら、伝統構法はなくなってしまうわけですね。

で、今、ここにいらっしゃる鈴木先生は、関西版っていうのを、限界耐力計算法をつくられたんですね。関西版っていうのがあるのを知ってる方、ちょっと青のふだをあげてみてもらえますか? 認知度高いですねー。じゃあ、利用したことのある人、発注した人でもよいです、何らかの形で関係をもった人。そのまま青いふだを出しとってください。結構いらっしゃいますね。じゃあ、知らない人、赤のふだを。少ないですね。

どういうことかといったら、簡単に説明しますと、伝統構法をそう解析的に研究した結果ではない、といったら語弊があるかもしれませんですが、あの、さっき、風邪ひいて「ゴホンと言ったら、遺伝子レベルで研究する」というたとえを言いましたが「ゴホンと言ったら葛根湯」みたいなですね、過去の実験のレベルから、このくらいでいいや、と。とにかく主眼は伝統的な建物を残すことだ。だから非常にアバウトに決めてるんですね。ひとつひとつを精査してない、大体、これくらいでいいだろうと。○○値っていうのは大体そうなんですね。100.00まで行くのか、99だったらいいか、70だったらまあいいことにしとこうや、と言うのか。そういったことで、ひょっとしたら、葛根湯を飲んだ人がエイズかもしれませんよね。ちょっとへんな例かもしれませんけど。確率的にはそういうこともあるかもしれないけれど、まあ、要するに建築確認ってそういうもんでしょ? 4号物件の筋交いだって、あれ守っとってもおかしいのいっぱいありますでしょ。4分の1計算しとってね。下屋のところにいっぱい耐力壁入れとってね。耐震診断もってても何も問題ないってなる。

つまり法律というのは、ほんとの研究のあとに設計法があって、法律になるんですが、みなさんマニュアルに従いすぎてて、マニュアル絶対主義になってるわけですね。そうじゃなくて、やはり伝統構法というのは「だいたいこれはいける」というのを大工さんと設計者で見て、それを確認するのが計算書だと思うんですね。そういった見方で、関西版を実際私は使ってるわけでして。

ただ、まあ、ほんとに研究しなきゃいかんことと運用とを、分けて考えるべきじゃないかと、私は個人的には思うんです。ですから、今行われてる実大実験をして、とか要素実験としてという研究はほんとに解明しなきゃいかんことだと思います。3年間で終わらせることじゃなく、いろんな組み合わせと、めちゃくちゃ複雑な要素がからんでまして、それが相手が生物ですよね、木ですから。鉄とかコンクリートとか、この数値でいきなさい、というわけにはいけない。含水率を測っても、それがほんとに正確な含水率なのか、分からない。分からない要素が二乗でからみあってますから、これも、非常な複雑な時間をかけて解析研究、っていうのと、実際に法律として運用するっていうのとは、別もんで考えなきゃならない。

私も委員会に入る時は、これはすばらしい設計法ができる、宮内君と同じように思ってたら、ずーっと解析。理由を聞いたら、あ、なるほどだなーと思うんですよ。これは研究せないかんな、と。けど3年しかないんじゃなー、と。これまであまりにも手をつけてこなかったことが、ひょっとしたら、今、失望という答になるような気がします。

そしたら、鈴木先生が今、関西版いうやつ、あれを運用した方が急場しのぎっていうんですか、さっきの宮内さんみたいにガリガリ怒らんでもすむ。そういった急場しのぎとほんとに研究せなあかんのと、こう、分けて考えた方がいいんであないかな、と。しかし、じゃあ、それを使うとなったら別の問題が、研究ではない別の問題がありましてね。時間があったらまた、あとでお話します。

岩波正氏(司会):今お話がありましたが、越海さんにお伺いしたいんですけども、先ほどからの流れでいいますと、計算法をつくるのはむずかしい、というのと、伝統構法は地域地域で形が違ったり、職人によってちがったり、それをスムーズに解析するのはむずかしい、と。まあ、この事業の3年間で、まあ、大橋先生からなにがしかはつくっていただけるとは思うんですが、私らの感覚としては、すべてをカバーするのはむずかしいという想いがあってね。

で、そういう中で、今、ちょっと古川さんから出ましたが、マニュアルがすでに、この事業の前に伝統構法マニュアルというのがあるわけですけど、それはこの3年間が終わっても使い続けると考えていいんですか。

越海興一木造振興室長:それは関西版ということですか? 

岩波正氏(司会):はい。

越海興一木造振興室長:関西版のマニュアルは、結局その、建築基準のレベルとぜんぜん違っていて、市販本なんですね。ですから、大きな体系は、建築基準法と政令告示ということで、まあ、限界耐力計算の告示のレベルで決められていることで、法規的にはそこを守っていただくということと、その下でどんなマニュアルを使っているかっていうことについては、基本的には、技術者の自由な、エキスパートジャッジということになります。たまたま伝統構法だからそういう話に陥っちゃっているわけですけども、一般的な木造でもコンクリートでもですね、計算基準みたいなやつは、建築センターから出してるやつもありますが、従来から建築界なり実務者が常識的に使っている資料をもとに、建築基準を政令告示に合うように設計されてます、ということを一応、了解事項として動いているわけなんで、特に伝統構法だけ非常に厳しい審査をしているわけではないんだということです。

で、関西版を使えるか使えないかというということにつきましては、出版当初からみなさんよろこんで使っていたわけですし、現在でも、この間の国会の答弁で、十分使えるということで、答弁をされているわけです。ですから、技術者が使う分には問題ないわけです。

問題は審査をする側が逆にマニュアルを求めているところがあって、これは現在ガイドラインがないということで曖昧になっているわけですが、ようやく建築センターと日本建築総合試験所と住木センターと3機関で、受付する時の資料の揃え方ですとか3機関で調整していただいて、ベースを揃えるということができました。その打ち合せの中で、実際に適判をやっておられる当事者から訊くと、結果として関西版を使って審査をするということは不可能ではないんだけど、最初に出てくる資料があまりにも審査に耐えられない書類が多い。あるいは書類がない。今大橋先生が言われたような、足元の詳細設計がでてこないし、足元がすべるすべらないの議論ができる材料に達しないものが多い。実際に関西側で関西マニュアルを使って通っているものもありますが、その一軒一軒について詳細なやりとりをしていて、ようやく適判にもちこんだというような苦労話もきいております。

あらかじめそういうアナウンスをした方がいいかなということで、3機関で調整をしていただいたんですが、それと、とりあえず関西版のマニュアルとをうまく使っていって、当面はそれでしのぐ、ということになりますけども、あと一年半ぐらいありますが、できるだけ現在の技術水準で分かったことを、鈴木先生と大橋先生にマニュアル化していただいて、そこに則っていればもうちょっと早く手続きが進む、ということにしたいと思います。

岩波正氏(司会):はい。ここで質問いただいてる関連のものがありますので、ひとつ。綾部孝司さん。石場立ての建築確認申請を出して、受付もしてもらえない、という話がありますので、ご本人からお願いします。

綾部孝司氏:埼玉からまいりました綾部と申します。実務的な話としてさせていただきたいんですけども、2階建て30坪に満たないような住宅がございまして、こちらの建物は限界耐力計算にて計算を行いまして、実施設計の図書もそろってきたと。で、こちらを特定行政庁に確認申請出そうと、説明かたがた行ってまいりました。そうしますと、建築主事の方が対応してくださったんですが「正直なところ、結論としましては、審査する能力に欠けるため、別の機関に出していただけないか」という返答をいただきまして。「なぜなのか」と訊きますと、「事例がない」と。じゃあ「事例がないと、受けていただけないんですか」と訊くと、「多くの時間を要します。いつ確認がおろせるか、分からない。それでもよかったら申請してください」と言うんです。正直、こういう話になりまして、また「構造的にひとつでもまちがいがあると、もう18万円、確認申請費用がかかります。それでもよければ出してください」と。そこまで言われてしまうとですね、正直なところ、出すのが非常にむずかしくなると思います。ご丁寧に、主事自らですね、民間の機関を探ってくださいまして「ここでしたら、受け取ってもらえる」というお話をいただきました。ただし、民間の審査料は高くて、なかなかはじめから想定している予算においては、むずかしい。そういう、スムーズに窓口で受け取っていただけない、というのが、現状です。適判の方のは、今室長が言われたように整備が進んでいるようですが、窓口ではねられてしまうのでそこがなんとかならないか、ということ。また、一年半後以降、より詳細な設計法ができると、さらに審査が困難になるのではないか。運用面で実際に使えるものをおつくりいただきたいというのが、私の考えなんですが。そのあたりは室長、いかがなものでしょうか。

越海興一木造振興室長:起こりそうな話だな、と思います。まず、民間機関に市役所並みの値段でやってくれないか、というのは、けっこうむずかしそうだなという気がします。やはり税金でやっているところと比べると、採算性の問題もあるので、建築確認を民間開放した時点で、そういうこともあるな、と。ただし、公共団体と民間とが競争すれば、たとえば検査のスピードが早いとかですね、いろいろなサービスがあることを前提としていますから、それが今回の話からすると、裏目に出ていると。民間機関だってリスク管理をしているわけであって、今言ったような議論の中で解析しきってない、まあ、けったいな建物、という判断をされると、そのリスクを背負い込むとなるとそれなりの審査料をいただきます、ということになるだろう、と。

もうちょっと早く進むような運用に持っていってくれ、ということですが、私が期待しているのは、大橋先生がおっしゃった簡易設計法で、そちらの方で土台ができてくれば、まあ、いくら見たことはない、と言っている市役所の方でも、それなりにチェックできるだろうという風に期待してますので、今後一年半、そういう方向をめざしてやっていきたいと思います。

詳細設計法は適判に行くでしょうから、これは今と同じようなやりとりをしていただくしかなくて、そちらは3機関の適判のしくみをもうちょっと洗練させて臨めるようにもっていくしかないかなと思っています。

岩波正氏(司会):ここで同じような経験をおもちの古川さん、もう少しお願いします。

古川保氏:今の綾部さんの質問の内容というか、その中で、適判という言葉をご存知の方は青をあげてください。専門用語パスしていきますので。はい。

たしかに、熊本で適判というセクションをつくって、今、そこで出しているんですけど、民間っていってもお金は倍ぐらい、差額でいったら3〜4万ぐらいじゃない?

綾部孝司氏:いや、13万。

古川保氏:どこ、それ?

綾部孝司氏:ユーロベータス。

古川保氏:知らないな。民間もほかにいっぱいありますよね?

綾部孝司氏:民間はほとんど受けていただけない。たくさんあるんですけれど、能力不足を理由に、拒否されてしまう。

古川保氏:けど、受付はただ見るだけで、適判に送って・・

綾部孝司氏:それがダブルチェックということで、窓口でも計算書を見て、さらに適判のところでも見るということになっていて。

古川保氏:えらい厳しいですねー。で、窓口の方はほとんど見れないんですよね。適判のとこで実は私も3ヶ月とかかかってて、今、もうひとつが2ヶ月かかる。これも、その適判行くそのものが、めちゃくちゃきびしいんですよ。窓ぎわでもワンチェックあって。適判でですね、限界耐力計算のところはほとんどマニュアルに従ってしか、当然、マニュアルの中にも不足してるところがいっぱいございますが、柱の曲げとか要素とか。ですから、質問する人も構造設計の専門家ですから、足元のさっき言われたのも、ベースシア係数がこうこうこうで、こうしてます、って。と質問する人も専門家ですよね。マニュアルに従って、マニュアルどおりYesかNoかじゃないんです。もしマニュアルどおりにやれるんだったら、パートのおばちゃんでも十分でしょ。

訊く人も専門家。そういった位置づけで受けてますと、限界耐力計算に関する質問はごくわずかで、適判という名のもとに、もーのすごく精察して、むしろ私は基礎のコンクリートで困ってるんですよ。あたりまえかもしれませんが、ルート3で適判にいったコンクリートの精度って、めちゃくちゃきびしくて、かぶり厚をつけたらそのかぶり厚をつけたのを含めた鉄筋量を出せとか、それから瓦屋根に熨斗がわらが3枚あるのでその分の重さを加えろとか、私んとこ台風地域なのに雪荷重はどうなんですか?とか、曲げモーメントがあやしいとこだけやっといたら全部出せとか。私の設計図の3倍くらい計算書がともなうんです。

こりゃあ、もうね、鈴木先生の関西版でさえこんな状況ですから、それにほんとのが加わったらとんでもないことになるな、と。そもそも、住宅程度が適判にいくことそのものがおかしいんだと思います。片方ではお寺の庫裡が4号物件で通って、30坪もないのが適判に行く、ものすごく厳しいところで審査するというのは、理に合わない。事務所協会というところではですね、建物を計算法によってではなく、建物の大きさで適判に行くか行かないかを区別するべきではないかと言っていて、私もそう思います。

そもそも去年の6月に、伝統構法でちいちゃな建物でも、限界耐力計算使えば適判に行くことになった、それがそもそもおかしかったんだったんじゃなかったんでしたっけか。

岩波正氏(司会):いいですか、越海さん、おこたえいただけますか。

越海興一木造振興室長:去年でなく、おととしの6月20日ですね、想定していなかったと思います。姉歯事件というのはコンクリートのマンションの設計を、まあ、専門構造の設計屋さんがうまーくやって、鉄筋量減らして、構造ルートを変えて、まあ、ああいう偽装計算書にまで至ったということで、結果として構造設計建築士というのをつくりながら、その方がやりそうな、ルート2とかルート3とか、構造屋さんの腕の見せどころというところを、ピアチェックという方法で審査しましょう、と。そういう大きな流れで、法改正をした、と。ただ、そこに伝統構法がまぎれこんでくるっていうことは多分、想定していなかったと思うんです。ですから、小さな2階建てがなぜか、ピアチェクにまわることになってしまった、ということで、まあ、これも今やってるプロジェクトの中で簡易設計法をつくってもらえれば、おそらく建築確認どまりに戻せるんじゃないかと期待してはいるんですけれども、まあ、おそらく、想定していなかった、ということだと思います。はい。

岩波正氏(司会):大橋先生に質問なんですが、いくつかある中のひとつなんですけれど、伝統構法を残す目的で検討委員会が組織されたのであろうと、木造に携わる者たちは考えています、と。大橋先生は本事業の目標を「できるだけ広く活用」という風に考えておられるようですが、ちょっと待ってーな、と。部分は全体の中で生み出され、活かされるあくまでも部分です。各地域で残る伝統建築がまるごと残り、まるごと新築できる可能性を残してほしい、と。

で、さきほど越海さんがおっしゃるには、簡易設計法に期待しとられるということですが、さきほどから問題になっている足元フリーが、計算はむずかしくて全然いいんですけどね、今言ってる、各地の建物が簡易設計法で設計できるようになるんでしょうか。

大橋好光先生:足元の話にやっと戻って来たというところですけれども、私はいずれこの質問があるだろうなと思っていましたし、でなければ私から一言言わないと、宮内さんが「大橋先生はやらないと言った」ということでこの会が終わってしまうと、困ったなと思ってたんですけども。

私、前から何度も言ってますけど、このプロジェクトの中で足元をとめつけないで、という設計法もずっと検討しています。みなさんがたの中にもご存知の方があすと思いますけど、建築研究所の河合さんはそういう実験をしていますし、今ですね、設計TTの中に足元をとめつけないで設計法っていうのはあり得るのか、というのを特別にそれはやってください、という注文を出してますので、ま、いずれそれについては中間報告なりを、今年度でできればと思ってますけど、このプロジェクトの報告書では必ずもりこんで、きちんと回答します。

それからいくつか、コメントがあるんですけども、限界耐力計算では、足元が動く計算はできません。限界耐力計算の○○○設計法というしくみの中では、足元が動く計算はできませんので、限界耐力計算で足元が動く計算ができるという風に思っているとすれば、それは勘違いですので、お間違いないようにしていただきたいと思います。

それから鈴木先生のマニュアルでもいろいろ計算内容を出さなきゃいけない要求で大変だ、という話ですけれども、限界耐力計算はご存知のように、上部構造の応答の話しか法律の中では決まっていません。それ以外は、損傷限界なり安全限界なりを確かめてください、と、まあそういう定性的な話しか告示のなかにはない、んですね。ですから、そこの部分を自分で全部やらなきゃいけないんですよ。ですからそこの部分を埋める作業というのは、さっきから言ってますけど、自由度の高い設計法はそれだけ書く書類が多くなるのは当然ですよ。今の時代、そういうのがなくていい、というのは通りませんので。

で、許容応力度設計というのは、もう、あれですよね、みなさんご存知のように、延々と日本では、どういうやり方をすればいいか、鉄筋コンクリートの許容応力度計算っていうのはどうすればいいかっていうのは、改良して改良してずーっと積み上げてきて、どういう手順でやればいいか、何をチェックすればいいか、というのがまあ、RCなんかであればかなり分かってますし。保有○○耐力の時に、終局の話も検討しましょう、ということで基準が示されていますのでいいんですが、限界耐力計算の場合は、あの、躯体の応答しか書いてなくて、○部構造の何と何とをチェックしなさいということが、示されてない。限界耐力の中で○部構造の何をチェックすればいいかということは、全部、設計者にまかされてるんです。それは非常に自由度が高いですけれども、それだけ、性能規定で生まれたこの限界耐力計算というのは、設計者の責任が重くて、ですから、できるだけ設計者の中できわめて慎重にやらなければならないのは当然のことなんです。そういう中で木造の場合は何と何をすればいいかということが必ずしも決まっていないので、適判の中でも、室長から今お話がありましたように「読めない」とか、現場でもそういうことが起こっているので、できるだけそういう人たちの参考になるようなものを、早くまとめなくてはいけないというのは、私も感じています。

それから、ちょっとお断りしておきたいのは、みなさんちょっと勘違いしてるんじゃないかと思うのは、今回のプロジェクトでできるマニュアルが、そのまま法律になると、いう風に思ってらっしゃる方もいるようですが、今はそういう時代じゃなくて、もう2年前から建築の確認を行う行政の役割が非常に大きくなっていて、われわれが提案しても「これは法律上、読めません」ということでつっかえされる、そういう時代です。たとえば、ですね、住木センターで許容応力度設計法の本をつくりましたけれども、あれでそもそもいいのかな、という建築行政とのやりとりを、まだやってるんです。きのうも夜11時までそれこそ、基礎の、ちょっと古川さんが言ってましたけども、基礎の計算のしかたはあの住木センターのマニュアルの通りでいいのか、あるいはめりこみの考え方は、あれでいいのか、とか、要は、建築行政会議の中では「あの書き方では不十分なので、あのままでは読めません」ということで、具体的な現場のところから拒否が来てる。そういう意味では、国交省の越海さんがやってはいるんですけれども、われわれの作ったものがそのまま法律の中で、全部その通りやればすぐ動く、という風にはならなくて、もう一段、行政などとのやりとりが必ず必要となるんですね。そのまま通るとは限りません。そういう意味では、ですね、あたりまえのことなんですが、つくるマニュアルがたとえば鉄筋コンクリートを専門とする人でも、そういう人でも、当然こういう計算法なりが、○○が関わってくる○○、こういう根拠でいいんだ、という、そういうマニュアルに、設計法にしなければならない。

みんな、それぞれがつくっている建物が自由につくれるのは、それは設計者側からすればそういう設計法をほしがるわけですけれど、それは木造だけではない。ですけれども、われわれが自由度を高く、と提案しても、行政がこれではダメです、と言われる可能性は非常に高い。私は、さきほども言いましたように、今はきちんと「こういう性能のものだ」と言えないと、さきほど前半のところでもあったと思いますが、建て主の方への説明責任がありますので、そういうデータを揃える努力をわれわれしてますけども、そういう書類が整わないとダメな時代なんですね。そういう細かいところを自分でつくれないという場合は、やはり、簡易設計法の中で、ある程度仕様規定の中でしていただくしかないです。

鈴木祥之先生:私どもは絶対関西版とは呼んでませんけども・・ちょっと補足です。なぜ伝統構法が、限界耐力計算なのか、ということですが、多分、あの法律がつくられた時には、限界耐力計算があんなに伝統構法で使われることになると思ってなかったんだと思います。で、私どもも、いろいろな設計法を考えてたわけですけども、ちょうど建築基準法が大改正されて、性能規定化になった時に、限界耐力計算を入れていただいた、と。じゃあ、この限界耐力計算を伝統構法に適用できるではないか、と。ということで先ほどから言われてるような関西版のマニュアルをつくって、伝統構法をつくるためには仕様規定を適用除外というようなこともできますよ、ということで、性能規定型の計算法のひとつである限界耐力計算をうまくつくって、ということなんです。限界耐力計算をどういう風に計算するかというようなところは建築基準法には書いてなくて、伝統構法用に使えるようなものとしてなかったので、それでああいうようなものが開発された、ということです。

で、姉歯問題のあと、適判だとか、設計に対して非常にきびしい条件がつくようになって、そこで問題が生じてるんだと思うんですけども、あくまでも限界耐力計算はわれわれも近似的な応答解析手法のひとつとして、提示しているわけです。ということで、各層の最大変形がどんなになるか、ということをきちっと調べて、ということでして、で、それ以外の長期荷重等に関する構造安全性の問題というのは、それはもう当然考えていただいて、ちゃんとしましょうね、ということで、ただ、いちばん大きなところを選んでというのでなくすべてやりなさいとか、過剰な要求があるわけですが。RCとかH造とかですとほとんどうそいういうふうなことはプログラムでやってしまうのでそれほど大したことはないんですが、木造の設計士さんの場合はすべて手計算で、すべての柱に関してチェックするとかいうのもなかなか、むずかしい。

そこで、なんですけど、現在はそうなんですけど、そうっていうのは自由度の高い設計法がいろんな書類を揃えなきゃいけませんということがあるんですけども、棟梁さんがつくられる軸組で長期荷重に問題があるのかというと、ほとんどないわけですよね。ということで、一般に使われるような部材に関しては、ノーチェックでもいいわけです。じゃあ、それならば、ほんとにノーチェックだったら安全性の確認ができなくなりますので、ふつう使われる部材についてはあらかじめご検討いただければ、それを引用するだけでもいいんじゃないかなと思うんです。

ですから、RC造とか鉄骨造とか、そういうビルもんの設計法と限界耐力計算が使われる場合とは意味合いがちがって、小さな住宅の場合はほとんど問題ない箇所が多いわけですよね。それを、どっかで整理して、データにしておいて、そうすれば設計者の方々はそれを利用して、というしくみができないかな、と私自身は思って、そういう方向は、いかがでしょうか。

越海興一木造振興室長:伝統構法の中で、さきほどから大橋先生がいろんなTTの活動をご紹介くださいましたが、その中で継手仕口、場合によっては構面のデータベースをつくりこんでるところですので、そこの耐力特性については、できるだけ早く、3年を待たずにあげていくことを考えています。それが鈴木先生の要請に合うデータかどうかは、分かりませんが。

岩波正氏(司会):さきほどの大橋先生のお話から思ったことがあるんですけど、せっかく計算法を一生懸命つくったところで行政の方がそのまま採用してくれるかどうか分からんとか、いろいろあるんですけど、私ども実務者としては、解明できとるかどうか分からんけど、大丈夫そうな、大丈夫そうやいうやつ、ありますよね、そういうようなのは建てたい、という、ただ、それだけなんです。

それをね。この3年間のこの事業は、ですね、行政の方ががええ加減な審査をした、とかで、適判というしくみができた、と。けど、それでは、それじゃあ伝統構法を残せないから一生懸命なんとかしようという、そういう事業かと思っていたわけです。それがですね、大橋先生が一生懸命計算法を考えて、それすら、採用されるかどうか分からん、という話でしたら、そのええ加減な審査機関が「私ら、伝統構法、よう分からへんから、もうあかん」って言ってんのに対してね、伝統構法いうのはやっぱり守れない、ということですよね。

だから、守れる方法をどうしたらええんや、ということは私たちは誰に相談したら、ええんですか? 大橋先生が中心になってやっていただいてると思ってたんですけど、それがむずかしい、という話でしたら、じゃあ、行政に相談していくのか、それもだめなら立法なのか、さきほど「民主党にかわるとどうかなるのか」という質問もあったんですけど、そういうところで、私たちは相談してかないかんのか、とか。なんせ、残さないと、この伝統文化を。ということで、私たちは期待してたんですよ。

大橋好光先生:あのー私の発言を極端にとられると困るんですが、そういうこともある、ということで、われわれがつくったものがそのまま、法律上の位置づけになるとは限りませんと言っただけで、必ずそうならない、と言った訳ではないので。極端にとらえていただく必要はないと思います。

そういう意味では、さきほどから言ってますように、詳細設計法と簡易設計法をとにかくつくることにしていますので、この簡易設計法は、詳細設計法含めてですけども、行政から見て問題ないようにしたい、ということでわれわれ努力します。できあがった後で、やりとりが必要であれば、やりとりをして、どういう風に落ち着くかは分かりませんが、最終的には、それで計算したものは行政でもきちんと受けられる、という風に組み上げたいとは、当然、思っております。

古川保氏:(ずっと綾部さんの質問にコメントしようと、待っていた) さっき綾部さんが「確認にまちがいがあれば出し直し」と言ったでしょ? それは法的にまったく根拠がなくて、積み重ね、なんです。訂正がダメなんです。適判に行くまでに応答集の書類は5段重ねぐらいになります。差し替えはダメなんです。ですから、団子状に書類を積み重ねていくんです。返却するということにはなってないので、思い切って出した方がええんじゃないかなと思います。

綾部孝司氏:行政の方がそうおっしゃるんで・・

古川保氏:自分が出し直せば、出し直しになるんで、向こうがそれを拒否する時は拒否の証明書を出さなきゃいかんのです。「間違いです」指摘してくれるからといって、それで確認手数料を上乗せして取られるということはありません。向こうが拒否する場合は、確認をおろせないという証明がなきゃいかん。それを発行するには、向こうにもそれなりの理由がなきゃいかんから、それは大丈夫だから、やはりやりとりでやってけばいいんじゃないかなと思います。

さきほど、伝統構法が適判に行くことは想定してなかったと越海さんがおっしゃってましたですけどね、それと似たような話で、構造一級建築士ってありますよね。高度な計算をする場合は、構造一級建築士しかダメだ、と書いてあったわけです。で、じつは私、試験、受けたんですが、落ちたわけです。だけど、おもしろいんですね。じゃあ、限界耐力計算は構造一級建築士っていうことは一応あるんだけれども「ただし、木造程度の小ちゃな建築物はいい」ってことになっておるんです。ここでも、想定外だったんですね。なんていうんですか、あの、構造一級建築士でなくても、小さな木造程度の限界耐力計算はしていい、ということなんです。つまりここでも、想定してなかったわけですね。ということは、法律を作った時に、判断を誤った、であれば、直せるんじゃねーかな、と。

9/1に増築工事、面積の増分が1/2以下に限って、エキスパンションジョイントをとれば過去の部分については(現行耐震基準に合わせなければならなかったのを)緩和しますよ、という法律ができたんで、あの、結局私たちが議論してるのは法律解釈、なんですね。ひとつの建物を研究したらもう際限なく、研究していくわけでして、適判に行くから、基礎の構造を計算しなきゃいかんわけです。それで、ふつうの4号物件で出す建物のだいたい2倍もコンクリート量も鉄筋量も増やすことになる。それでも、適判だとダメだ、と。じゃあ、2.2倍か、と。で、最悪続きに、今、圧密沈下量まで求められてましてね、そこまでいくとボーリング調査もしにゃいかんのか、と。

ですから、今からでも、越海室長に、住宅程度だったら適判に行かない、という、もし想定外なんだったら、むしろここでほんとの追求をするんでなくて、9/1からの増築工事の例みたいに、追加は、できない、んですかね・・(会場から大きな拍手)

岩波正氏(司会):その意見に賛成の方、青!いきましょか。ざーっと、あがりましたね。じゃあ、そんなことやったら、危なくなる、という方、赤。2名ほどいますね。分からない方は黄。

越海興一木造振興室長:今、古川さんがおっしゃったように、想定してないということによって、適判に伝統構法の小規模住宅が紛れ込んだのとおんなじで、想定してないがために、構造一級建築士が取り扱うものとして伝統構法は想定していなかった。両方裏腹なんです。さきほど雑駁に説明したように、やはり構造計算を緻密にされる人は構造一級建築士なんだ、というような発想でいくと、多分、適判を受けるという対象になってしまうんで、オーソドックスにやれば適判を受けない程度の簡易設計法を生み出して、そちらの方にもっていけば、構造一級までやらなくてもできるような体系にするしかないかなと思っています。

それから、今回、2年前からというわけではなく、私が役所に入った当初から、建築主事と実務者との闘いというのがあって、不毛な論議が続いているわけですけれども。結局、その、建物が建つというのはその地域にとって基本的に邪魔者だという発想から、来てるのではと思うんです。地域の中で残ってほしい、とか建ってほしいという建物がほとんど出て来てないんだとぼくは思うんですね。地域の行政、建築主事というのはもともと市役所の職員ですから、地域として、よそものが家を建てるとか、ということに対して好ましいと思ってないんじゃないか。ですから、伝統構法の家は地域になじんだものだということを、市役所の職員として理解し、伝統構法が来た時に好ましいものとして実務者の方といっしょに考えるというスタンスがあれば、ほかの構造の建物が来てももう少しウェルカムであってもいいとは思うのですが、町づくりのセクションにいる方はまた別かもしれませんが、基本的に日本の中で、都市化が進むということをいかに抑制するかというマインドで戦後、ずっと来てるので、そこのところを人口も世帯も減るとかですね、これから建築活動が落ち着いて来た時に、何を残すべきか、という行政マインドに変わっていかなければいけないんじゃないかと、考えております。そういう町づくりの観点をもった方が審査をするということによって、あまり確認申請の中で恣意的なことをやっちゃいけないとは思うんですけども、多少まあ、相談ごとに対する態度も変わってくるんじゃないかと思います。さきほど、先生が言った建築主事会議というのは、地域の主事さんたちの集まりなので、そういった中でこういう建物はのばそうよ、という合意ができれば、ある程度やりやすいかなと思うんです。

私は長期優良住宅を今、進めているわけですが、普及促進法という形で進めるべきものだということが決まったにもかかわらず、長期優良住宅の認定を排除している役所もいっぱいあるんです。建築行政としてのマインドがかたまってしまったので、建築確認レベルよりいい住宅として進めてほしいという法律ができたとしても、こと細かに審査して、とめてしまう、ということが起こっていて、これは日本のまちづくり全体ののマインドを変えていくほかないと思っていますが、この仕事の中で手に余る部分もあるので、ほかの部門とも協力してやっていきたいと思います。

岩波正氏(司会):私どもとしては、建て続けたいということに、もちろん危ないやつは別ですよ、ちゃんとしたものは、ということに限るわけですけど、建て続けたいということにつきるわけですが、そろそろ宮内さん、時間もあと30分ぐらいなんで、ため続けてたみたいなんで、いかがですか?。

宮内寿和氏:あのね、私らね、年間ええとこ、3軒か4軒やな。そういう施主さんがあらわれてるわけですよ。それができないとなると、死活問題なんよな。生活してかなならんもんな。それが、行政のどうのこうので辛抱なさいと言われるほど情けないことないな。技術がないわけでもないし、お金がないわけでもない、それを望んでる人がいないわけでもない。あんたに建ててほしい。こういう家を建ててほしい。そういう人もいるのに。

2006年までは建てられてたわけですよ。それがあの姉歯の事件で、それは越海さんが言われたように伝統構法がその中に入ってくるか思わんかった、ということかもしれんけど、その一言、すっごい罪やとぼく、思いますよ。それ毎月ね、給料入ってくる人はええかもしれんけど、ぼくらね、釘打ってなんぼなんですわ。(会場から大きな拍手)

それをね、これができるまで待てとかね、そんな問題、ちゃうなあ。建ててくれ、言わはる人のために一生懸命努力してやってるんですわ。それがたかだか姉歯の問題ひとつで、こんだけの人間が、こんだけつらい思いして、施主さんが建ててくれ、言わはるのに、行政があかんから建てられませんて、自分が悪うないのにな。ほんで解析できひんから、安全でないか確認できひんから、許すわけにいかへんて言われたってな。そんな問題ちゃうやんな。何が悪いんや、と、訊きたい。

そりゃ棟梁って言われる人はみんな、ぼく親父からこの代受け継いで、最初に言われたことは「親方になる人間はな、家一軒つぶしてやり直す覚悟がないとあかんのや」と。それだけね、建ててる人間はね、自分の仕事に関してはいのちかけてるわけですわ。そういうやってる人間を規制して、4号特例で建ってる、筋交い計算もせえへん家を何も規制せんと見逃して。今、ああいう建売住宅とか、簡易に建てられとる住宅がどんなにひどいもんかということ無視して。ほんで、われわれみたいに一所懸命やろうとしてる人間、人によろこんでもらおうと思って建ててる職人ばっかり締め付けるようなことを、国はするんですか。考え方が違うんじゃないですか。

これがね、ほんとにこれから未来につながってることになるんですか。勝手ですやん。ものすごう勝手なことにぼくら巻き込まれて、計算ができんかったら、解析できんかったらって、そらま今の時代ですからそういうこともできんとあかんかもしれないけど、できたんですよ。2007年までは。できたんですわ。それが、あの2007年の法改正があってから、ぼくらが建てて来た建物、全部、既存不適格住宅、欠陥住宅ですわ。こんな馬鹿な話ないですやん!

前にね、新宿でフォーラムやった時、工学院で後藤教授っていう人がね「今までそんなことやってきてひんかったんやから、実務者は3年ぐらい辛抱せい!」って言ったの、あれ、腹立ってね。何言わはんねん。(会場からふたたび、大きな拍手)

岩波正氏(司会):大分エキサイトしてきましたけど、大分本音が出たと思います。まあ、ちょっと冷静にいかんならん部分もあると思いますけど、大橋先生が言わはったように来年、詳細設計法と簡易設計法ができる、と。ぼくらの不安は、それですべての伝統構法の危なくないやつがカバーできるのか、というと、ちょっとむずかしんやないかな、ということで、今まで、鈴木先生の関西マニュアルて言うと怒られますが、伝統構法マニュアルがある、と。じゃあ、それを使って、カバーできない分はそれでやっていけばいいのかなと思ったんやけど、綾部さんや古川さんが言われたように、現実には「分からんから堪忍してくれ」とかねので、それ以上に木造住宅の根幹以外のところ、伝統構法はこういう揺れ方するからここだけチェックしてね、というとこと関係ないとこまで重箱の隅をつっつくように一所懸命、なんか正義感出して言うてくれてはる、と。でも、正義感出してくれてはる人は、木造は分からないんや、と。

こういう状態というのは、ぼくらは何らかの形で変えたいと思うんです。で、その詳細設計法と簡易設計法の方は大橋先生が責任もってやっていただいてくれてるわけですけども、その、今まであるマニュアルを使って、ちゃんと審査機関が審査していただく、と。この道は、これ、ほっといてもどうにもならへんと思うんですが、これを私たちはどういう風にしてったらいいんですか? これを委員会でやらないとすれば、主事会議とかに、ぼくら実務者入れていただけんですか。

越海興一木造振興室長:さきほどの日本建築センターと住木センターと日本建築総合試験所とやった話し合いでは、受け入れの要領については、今、主事会議と「これで受け取りますね」という確認を、進めているところです。で、ここでどういうアウトプットがでてくるか分かりませんが、そのベースが出来てくれば、全国的に、適判にまわるべきものはこういう書類を揃えて、というのは一応確定してくるように思います。

岩波正氏(司会):適判にまわらない方法、とかね。それか、地域で、やっぱりぼくら、もう地域の方と相談したいんですよ。何かやるとなったら東京まで行かんならんというのは、大変なんです。ですから、国交省の出先というのが今どうなのか分からんですけど、たとえば、そこへ行って、近畿地方こういう建物が多いから、こういう建物はどう扱うんや、ということをやって、ぼくらとしてもそこへ行って、意見を言わしていただいて、とか協力さしていただいて、という形というのはとれないんでしょうか?

越海興一木造振興室長:石場立てが適判にまわらないように、ということですか?

岩波正氏(司会):それも含めて、ということです。

越海興一木造振興室長:近畿地方であれば、大阪に日本建築総合試験所がありますので、そちらの方で適判を受けるなりの相談を受ける必要があります。地元の行政でどこまで相談ができるかというのは、具体的な顔ぶれがちょっとよく分からないですが、大阪近辺ですと、しょっちゅう講習会をやっておられますので、そちらの方で共通の技術データをお勉強されるということではないかと思います。大阪を中心に関西でそういう物件が進んでいるというのは、そういうベースがあるからだと思います。最近、埼玉の方でもそういう講習を始めておりますので、同じ構造技術者講習協会の方で関東側で力を入れていただけるよう、お願いはしたいと思っておりますけども。いずれにしても、どういう形のものが取り扱われるのか、それが審査される時に何を参考にしてるのかということは、ある意味、技術者同士になりますので、行政側と実務者側とが同じ勉強をしていただくというのが、ある程度、スムースに進むベースではないかと思います。

岩波正氏(司会):司会者がパネラーみたいになってますけど、ほかに、みなさん何かありますか?

古川保氏:審査する方を全国一律にしないでもいいんじゃないか、と思うんですね。実際おととしまでは、熊本の民間で、見てもらってました。ただし、2ヶ月かかりました。お互い勉強しあってね。「今から確認出すから、あなたも勉強しといてよ」と。建築主事っていうのは一級建築士より上なんですよね。一級建築士と、一級建築士より上の人が話しながら、一緒に勉強しながら、2ヶ月かけて勉強して、要するに、ルート1程度の、適判までいかなくて、それからお互いずーっとテキストを見合わせながら、どれくらいですかね、12軒ぐらいやったんです。彼も大分詳しくなってね。

それが適判に行ったらもう、別の世界なんですよね、そこで、ぜひともお願いしたいのは、全国一律でなく、行政庁によってできるところはさせておく、できんとこは勉強しなさいっていうことでしないと。ぜひともお願いしたいのは、地方でも勉強してる行政庁は、適判に行かなくて、ルート1程度で確認がおろせるような法律をつくってほしいな、という風に思います。

ここでみなさんが簡易法に期待しすぎると困るなと思うのは、簡易法は、壁だけだったらいいんですが、大黒柱に負担させようと思ったら、大黒柱に曲げをかけるわけです。そしたら、別に、46条という法律があるわけです。それはJASを使いなさい、という材料のところと絡みあってるんです。こんどJAS指定になったら、含水率20という規定があれば、不可能に近いんです。簡易法ができても、そっちの方のハードルが高くなるんで、簡易法に期待されたら困るな、というのもあります。

岩波正氏(司会):それでは会場の質問もちょっとだけ、訊いてみたいと思います。手短かにお願いします。伊藤ゆうこさん、いらっしゃいます?

伊藤:大津の梓工務店の伊藤といいます。適合判定を受けて通ったのが、おととしの12月まで、6軒ぐらいになってます。それは自分のところで構造計算をして出しているんですけれども、なぜ通っているかというと、7年前ぐらいに県立大学で通し柱から通し柱までの面で実験体をつくって、どれだけ耐力があるかデータをだした、多分、その数値があるから、助けとなって、構造計算ができているんだろうと思います。

私のところは鈴木先生の信奉者で、とにかく先生の言うことを具現化しようということでやってきました。建築途上の作品を先生にも見ていただいて、確認をしてもらったような気持ちもあるんですが、たしかに伝統構法はしなやかに動くことが基本となっているので、足元を縛ってしまったら、前に行こうとしてる人がこけるのと同じように、足元はフリーにしとかなあかん。その一方で、大橋先生が言わはったように、石からずれてはいけない。すべったりずれてはいけないけれど、石の上ではフリーになっていないといけないという、そこでいつも適判の人と問答するところになります。あとは、適判でいちばん肝心なところが、この建物に対してどういう考え方で設計を構想したかということを書くところがあるんですが、それは設計者に対してどういう考え方で建てたか聴いてくれるところです。行政の方で適判に行く前の段階で時間がかかってしまうんですけども、適判にまでいけば、もっと構造技術者として聞いてくれはるので、すごく納得した意見が取り交わされてて、自分のところで構造計算して、適判を通してるので、うさんくさいと言われることもあるんですが、けっしてうさんくさい建築をしているとは思ってないので、もしよかったら、見に来ていただいても結構です。

ひとつだけ残念な事は、大橋先生が伝統構法を建てたいという施主が少ない、と書かれていることです。そういうわけではなく、つくりたい人は、魅力的な家づくりは必要ですとおっしゃってくださる人は、山ほどいるんです。みなさん、つくれない、というとことで行き詰まっているわけで、そこのところ、根源的なところで違うと、進め方が違ってきてうまくいかないと思うので、そこは考えをあらためていただきたいと思います。それだけを言いたくて、あとは一所懸命つくりますので、ぜひ協力してください。(拍手)

岩波正氏(司会):ありがとうございます。伝統構法の性能評価事業は、伝統構法がつくれるような方向でお願いしたい、ということです。制限するような話て、ある一定はしょうがないと思いますが、これでやれば、一定はカバーできる。できなければこれがある、それでできなかったら、この方法もある、という方向で不測の部分も考えていかないと、不十分やと思います。

もっかい確認さしてもらわないとあかんと思うんですけど、さきほど第一部で、石場立てというのは、伝統構法の特徴的なもの、というのは共通の意見として出たわけですけども、結局のところ、この3年間の事業、あるいは3年間で分からないんだったら分からないなりに建て続けられると考えて、いいんですよね、越海さん。

越海興一木造振興室長:まあ、6軒建ててる人もいますから。建てられるんですよ。ただ、ハードルが高いというのを、どう低くするかを、お二人にお願いしているわけです。

岩波正氏(司会):ほかに言い足りないという人、おられますか?

古川保氏:さっき6軒建てた、っておっしゃいましたけど、問題は、費用がかかるということなんですよ。大黒柱が大きくなるためだったら、なんぼでもお金を出す施主はいると思います。ただ、計算に金を出す施主がいるかという問題です。まあ、筋交い計算ぐらいだったら1万円ぐらい追加でとればいいですが、関西版だったら30〜40万とってる。適判に行ってこんど新しくできるのを使うと、100万はくらだないと思うんです。ですから、分母に常にお金がからんでる、ということなんです。その点危惧してるところです、こんな分厚い図書ができて。理論的にはつくれるかつくれないかと言ったらつくれるとしても、お金がかかって、それで、つくれないということもあるんです。一年半後にふたをあけてみて、利用者がいなかった、という結果になりそうな気がするので、残す、というときに、分母であるお金のことも考えないと、いけないと思うんです。40万ぐらいだったら、出してもいいかあ、という人はいるかと思いますが、100万と越えたらいないんじゃないかと、私は、個人的には、思います。それが私の考えです。

木下:そんなこと絶対ない。今ね、私が生きとるうちに5件注文来とるんです。総額10億を越えてます。何を考えてるんや。・・・京都は地盤がかたい。・・・・私は福井の地震からずっと63年やっとるんや。こんなかでまだ生まれてないやついっぱいおる。そんなもんにアタマさげて、何を考えとんねん。(部分的にしか聞き取れず、中略)先祖に300年もつ家でなければ、申し訳ない。北国の石を掘って、一尺五寸角の石をずーっと、基礎に並べた。どんな地震が来ても大丈夫なようにつくった。昭和53以降はコンクリートでないとダメになった。けどコンクリートは80年しかもたへん。300年以上もつ家つくろ思ったら、コンクリートは使ってはいかん。(部分的にしか聞き取れず、中略)300年もつ家つくったら、相続税なしにしなさい。日本には金持ちいっぱいおる。まだまだ、だから今、私らが困っとるのは、法律のために建てられない。(部分的にしか聞き取れず、中略)責任は誰にあるんや。雁首揃えてあやまって、あんなの責任とったうちに入らない。棟梁というのは責任があるもんなんや。200年、300年先まで、最後まで責任もたないかんのや。だから、役所行って、何にも分からん人間にハンコ押してもらいたくない。施主に「ああ、いいものができた」と言われる、それでええんや。施主から「先祖に誇れるものが、子孫に伝えられるものができた」と言われるのがうれしい。確認検査済証なんて、いらんわ。

岩波正氏(司会):先ほど棟梁からみんなに声かけていただきまして、わしが棟梁や、ということで手を上げていただいて、一人だけおられましたけど、そういう状況の中で、いろんなことを考えてかなあかんということで、こういうフォーラムをしてます。棟梁のお考えのやり方もひとつあるでしょうし、こういった中で、伝統構法というのは全国各地にあって、それを守っていくべきところですから、お金もってる人だけに支えられて、文化財、文化財という言い方もまずいですけども、宝物のような形でだけ残ってくというのでは問題やと、今日、来られてる多くのみなさんも思ってらっしゃると思います。

私ら、未熟ですけどね、なにか社会の役に立とうと思ってる者が、せめて伝統構法ぐらい残していきたいという思いで、このフォーラムをさしていただいたので、またで木下棟梁がどっかでフォーラムされる時には、私もよせていただきたいと思います。

大橋好光先生:さきほど伊藤さんからお叱りを受けましたので、さっそく訂正したいと思います。私、柔軟なので。「残念なのは、つくりたいという施主が減っているということです」ということを書きましたが、これは、私の頭の中では、まあ、戦後を含めて、かなりタイムスパンが長い範囲でで思い描いて書いているお話です。私はこれからは逆に、ですね、木を活かす建築は増えて行くと思っています。きょうは伝統構法というタイトルになってますが、私は伝統構法という○○はしてなくて、木を活かす建築ととらえている。これから増えて行く、と思っている。私は伝統ということばではなく、木を活かす建築と理解しています。これから増えて行くことは間違いないです。今日は、伝統というくくりで、開催されてますが、私は「伝統」という言葉は、伝統の家づくりがなんだか定義されてないので分からないと書きましたが、かなり答えにくい質問で難儀しましたけども、えー木を活かす建築だと理解しています。それはこれから、増えていることは間違いないです。

そういう時代にあって、ある意味、近代化しなくてはいけない面もあると思う。設計法も、家づくりも、そうです。その中で私ができることは、きちんとデータを整備して、みなさんが使えるもにしていきたい、ということです。さきほど室長からデータベース委員会のご紹介がありましたけども、住木センターのHPにアクセスしていただきますと、これまで行った実験データ等を公開しています。なかなかデータベースが増えていかないことには、理由があってですね、そのひとつはですね、そこのデータベースの載っている許容耐力は、そのまま建築確認に利用してもいい、要は信頼性の高い数値にしようと、委員会でも慎重に吟味してるんです。単なるデータの処理だけでなしに、かなり慎重に吟味しているので、そうすぐに数が増えていかないんです。

そのデータベースを見ていただいて、自分たちと寸法がちがうとか、材料がちがうといった、そういう意見を、みなさんから欲しいんです。われわれの方は、これくらいの材料を使っておけばいいのではないか、十分だろう、という考えでやっていますが、ご意見をいただきたい。

今回、こういう工法でしたい、というご意見を募集して、下期で実験できるところ、接合部、土壁、床、水平構面、そういうものの、できるだけ実験をやろうと思っています。むしろ今困っているのは、きちんと実験できるところが足りるかなということですけれども。これまでなかなか木造の実験をしてこなかったところもあるので、こちらで「こういう項ことはきちっと条件を揃えてください」とか「こういう項目は測ってください」と、指導といってはおこがましいですが、お願いしながらデータを揃えていこうと思っております。そうして集まったデータは、データベース委員会で処理をして、データベースの方につけくわえさせていこうと考えています。

繰り返しですけども、みなさんのやりたい工法、部分でもいいですし、しくみ、ですね、特に、伝統構法は全体のしくみですから、それはこういうルールでやりたい、ということをまとめて、教えていただきたい。そいうものはできるだけ設計法の中で、これは入っているか、ということをチェックしながら、設計法をつくりたいと思ってますので、そういう情報をできるだけ。分類TTというグループもありますが、それだけでなく、情報をいただきたいと思ってます。

岩波正氏(司会):そろそろパネルディスカッションも終わりになりますが、私なりにまとめをさせていただきたいと思います。まとめというのが総意かどうかは分かりませんけども、主催者として、想いをそう否定されるものでもなかったと思いますので。

私は現在の住まいづくりの中で、伝統木造住宅っていうのはその他の住宅が商品ととらえられている中で、唯一、住まいはどうあるべきか、ということが考えられて来たものだと思うんですね。伝統木造住宅を規定する基準とか法律とかが今までなかったんですけれど、それがつくられることで、むしろ、伝統木造住宅がどっかのハウスメーカーの商品みたいになることをぼくはすごくおそれてまして。

畑田先生から基調講演で言っていただいたような精神というのがなくね、伝統構法はちょっとお客さんおるぞ、と、さっき梓さんが言ってくれはったたみたいにおるんや、ということで、それをタネになるんやないか、ということで基準が使われることをおそれている、というかイヤやと思ってます。

現在の生活っていうのは住宅に限らず、あらゆるものが「これでいいのか」ということを問われてると思うんで、私は伝統木造住宅のあり方を考えるということは、今後の住宅のあり方を考えるために非常に重要やと思うんですね。だから、とりあえず基準をつくったらいい、というものではない。そのかわりに、今まで伝統木造住宅のほんとにいいところ、意味だと思うところについては基準化してほしい。

これは3年間の事業ですべてきめてしまうのは、なかなかむずかしい、ということがぼくらも分かってきました。未解明なことは継続して研究して、実務者ももっと積極的に参加していきたいと思うんですけど、さきほどから言ってますけど、そのことによって建てられなくなるものがたくさん増えてくると、ぼくら何したか分からん、ということになるので、そういうことのないようにしたい。今まで続けてきてるマニュアルを使ったような設計法とか、そういったようなことについても、具体的にはあまり難易度が高くなく、ちゃんとやってけるような形での結果を出したい。

その中で、地域中心ということもひとつあたまに入れていただきたいと思うんです。それぞれ、たとえば、熊本は熊本でどういう風にやったら担保できるのか。それをどこまで中央が管理するのか、というしくみも、設計法の中で考えていただきたいと思います。

大橋先生はみなさんに「最後にひとつだけ」ということで、いろんな工法を出してください、と言われました。ほんとにぼくらも出さなあかんとは思うんです。だけど、ぼくら、自分がやってるのが特殊なのか普遍的なものか分からないというのもあるんです。テレビで「県民ショー」ってあるの、ご覧になったことあります? そこの県民があたりまえや、と思ってやっとることが、よそから見ると違うんだ、と。そんなこともありますので、ま、とりあえず「私はこんなことやってるんけど、どうや」ということを、どしどし大橋先生にぶつけていただきたいと思います。

最後にひとつだけ「足元を止めない」ということは、現実これだけ要望があるので、拒否しないでいただきたい。それだけはお願いします。これがなかったらね、先生がなんぼ「みなさん、送ってください」言うても、みんな先生がフィルターかけて、拒否しはると思ってしまいますので。むずかしいということはぼくらも重々分かってますので、3年間でできなかったらどうするのか、というところまで考えていただければ、結構だと思いますので、そのあたり、幅広い考えで、よろしくお願いいたします。まとめになったかと分かりませんが、これで第二部のパネルディスカッションを終わらせていただきます。


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