今回は、前回お届けした「冬の温熱調査」に参加したメンバーからの感想発表ということで、事後にSkypeで自由に感想を話し合ったことを、覆面座談会(?)形式で、お届けします!
ところで、本題に入る前にひとつ、大事なお知らせです。
衆議院でも改正省エネ法における
伝統木造の扱いが話題になりました
2015年6月3日、衆議院国土交通委員会において、民主党の小宮山泰子議員から改正省エネ法における伝統木造の扱いについての質疑があり、付帯決議がなされました。
小宮山さんは、これまで木の家ネット・埼玉のメンバーを含む実務者と積み重ねて来たやりとりの中で、改正省エネ法が日本の伝統的な住まいとは馴染まない面があることを知りました。質疑の中でも、木の家ネットの川越のつくり手、綾部さんの名前があげられていました。座談会で話している中身ともかなり密接に関係していますので、こちらも併せて、ぜひご覧ください。
小宮山泰子 衆議院議員のブログより
2015年06月03日
3日、衆議院国土交通委員会にて「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律案」審議が行われ、質問の機会を頂きました。 主な質問の論点は、法案の目的について、基準適合除外となる大規模非住居建築物について、小規模工務店への対応について、伝統的木造住宅・構法について、新しい技術や材料の導入について、エネルギー消費実データ収集について、伝統的木造住宅への対応について、パブリックコメント期間等の見直しについてなどです。
■ 答弁の様子は10時35分から。3人目、「小宮山泰子議員(民主党・無所属クラブ)」を選んでください。
■ 速記録(2015年6月23日時点ではまだ速報版で、正規の会議録ではありません)はこちらにあります。
■ 付帯決議は、全員の質疑が終わった後、14時18分から。小宮山議員が読み上げました。
01この古民家の外皮性能を求めてみました。
今回の調査で実測をし、図面を起こして、この家の外皮性能(熱を逃がさない性質)を計算してみたところ、UA値1.8とでました。(注・UA値は熱を逃がさない量のことで、低いほど性能はいい。気密性は問わない)古民家の外皮性能を計算した、めずらしい例といえるでしょう。
ねこ 省エネ基準の0.87には遠く及びませんが、古民家にしてはがんばった数字ですね。
くま 北側に断熱材を入れて板張りにしたり、西の縁側を腰壁とペアガラスで閉じたり、それなりに断熱は努力していて、効果もあがっています。
うさぎ たらーけど、しかし、がんばってる割にぴっちり閉まっていないところが多く、熱が逃げてるのが、もったいない! 軒桁と垂木の間に面戸板が入ってなかったり、建具の建て付けが悪かったり・・
いぬ 気密はもう少し頑張れますよ。詰め物をちゃんとしましょう。
くま 先生風この家で、0.87という基準値までは、どうやっても、さげられないでしょうね。費用対効果から考えても、そこまでさげる必要もないと思いますが。基準値にほど遠くても、暮らし方としては十分な性能ともいえるでしょう。
02冬は「こじんまりと」という暮らし方です。
180平米近くと広い家なのに、西側の2室は、冬は実質的には使われてません。夏と冬とで暮らし方が違うのです。
うさぎ 寒いー使われてない西の2部屋は、暖房もないし、寒かったですよ。1度とか。昼間なんか外より寒い!
ねこ えがお夏は開放的に、冬はせまく暮らす、と割り切っちゃっていいんじゃないでしょうか? 韓国なんかもそうじゃないですか。冬過ごす床暖房のオンドル部屋と、夏過ごす高床の板の間とがあったりして。
くま オッケーそれならば、あたためる部屋とそうでない部屋の境目をきちっと閉じられるようにして、寒い部屋の影響を受けないようにすることが肝腎です。
いぬ うーんこういう「季節によって伸縮する」ような暮らし方って、外皮性能一本の今の省エネ基準では評価できないんですよ。
ねこ 冬は暖房する範囲を限定するような暮らし方もアリ、と認めるよような評価軸が欲しいですよね。
03最小限の採暖=障子を立て込んだ8畳で薪ストーブ
家族4人が、昼間外出していて、帰宅して寝るまでだけの短い時間しか家に居ないような日は、この一室に集まって、小さい薪ストーブ一台で過ごします。
いぬ 「内側の内側の内側で暮らしてる感じ」が、昔のお茶の間感覚ですよね。
ねこ 十二単とか、入れ子になった箱とか、玉ねぎの中とか・・冬は、幾重にも重なった中で、採暖して暮らしているんですね。ちょっとイラストを書いてみましたよ!こんな感じ? いちばん外側の箱だけを「ガッチリ断熱」というのでなく、「ほどほど断熱」の内側にさらに層があることで、成り立つ、というイメージです。
うさぎ 幸せ薪ストーブはたちあがりも早く、強い熱源で一気にあたたまるので、閉じた狭い空間を部分的に採暖には効果的ですね。障子一枚でも、十分、あたたかかった。
ねこ えがお20度近くなると暑すぎるぐらいで、思わず一枚脱いでしまいましたよ。空気をあたためるのでない、放射系の暖房なら15度ぐらいで十分な感じ。
うさぎ 困ったそんな時でも、障子の向こうの台所や無暖房ペチカの部屋は約5度と、約15度の温度差ありましたけどね。
いぬ ウィンク障子一枚で、すごいですよね。・・いや、それ以外の部屋が寒すぎるのか!
ねこ 放射系の採暖の場合は、空気をあたためる暖房の場合に求めている「20度」より低めでもいいのではないでしょうか。感覚的には15度ぐらいかな。
04メイン暖房=レンガの蓄熱体、ペチカは大好評
同じ冬でも、その日の生活パターンによって、暖の取り方は変わります。一日中、人が家に居る時には、ペチカをつけて広く過ごします。
うさぎ 幸せペチカはレンガが蓄熱するまでに時間はかかるけれど、いったんあたたまってしまえば、じんわり、やわらかいあたたかさで、気持ちがいいですね。
いぬ 気持ちいいあったまった、れんがの壁に寄り掛かるとちょうど良いと湯加減の風呂に入っているのと同じ快感を覚えました。よっかかって寝ると、気持ちいいですよね。
ねこ えがおペチカをつけている時間帯は、薪ストーブだけつけている時間帯よりほかの部屋の温度も安定していましたよ。やはり、ここの家で快適に過ごすには、少人数でいる時でも、ペチカは火は落とさず、さめない程度に常時あたためておくと、効果的なのでは?
いぬ 内部が建具ばかりなので、放射系の熱源があっても、その熱を蓄えられないのがもったいない!蓄熱してくれる土壁があるとよいかもしれないですね。
05縁側=日本独特の温熱的バッファゾーン
外と内とをゆるやかにつなげ、昼はいい日だまりとなり、夜は外の寒さをやわらげる。それが縁側です。
くま 先生風外皮のギリギリまでを生活空間としないで、縁側をまわす。部屋ではないんだけれど、時に応じて使うというのは、日本の民家の特徴ですね。内と外との間をゆるやかにつなぐ空間ですね。
うさぎ 幸せ2月というのに、大きな掃き出し窓いっぱいに陽射しが低く射し込んでくる縁側はぽかぽかで、あたたかでした。
ねこ 寒冷地なのに、3時前ぐらいまでは、暖房なしで十分に過ごせる感じでした。合宿期間は子ども達も家に居たのですが、縁側で遊んだり、勉強したりしてましたね。そして、夕方前には、縁側の内側のその中が冷えすぎないように、障子を閉めてました。
くま オッケー外回りのペアガラス戸とその内側にある建具の間の空間が温熱的なバッファゾーンになっていますよね。
いぬ 早朝の縁側と、外気温との温度差が、約5度、ペチカの部屋と、外との温度差が、約10度なので、無暖房時のバッファゾーンの効果は約5度。
くま もの申すこの障子が両側から紙を張る太鼓張りになっていれば、効果はもっとあがるはず!
うさぎ 幸せあとは、外回りの建具のたてつけをよくしたり、軒と桁の間の面戸の空間をふさげば!
いぬ うーん外皮性能の計算では、外回りの建具のすぐ内側の障子はカウントされますが、縁側と居室の境の障子の性能は評価されないんですね。
くま 先生風日本の家って、外周でバチっと内外を「分ける」のとは違うんです。冬は何重にも入れ子になっている内側をあたため、夏はパーッと開放して風を通したり、季節によって呼吸しているのですよ。そういった日本の暮らしに合った理解の仕方が必要なんじゃないでしょうか。
ねこ やはり、外の自然との境がゆるいというか、自然とのつながりを断ち切らないという生活感覚なんですよね。
うさぎ 幸せ自然とのつながりだけでありません。玄関からでなく縁側からのおつきあいというのは、ご近所とのゆるやかな人付き合いのでもありますよね。履物を脱がずに縁側に座ってお茶したり、ね。
06放射温度計測定:家の中の温度はかなり不均一
いぬ ふえーん床の温度が冷たく、ストーブやペチカがついていても、座布団を敷いていないときびしい。かと思えば、高いところに25℃以上の空気のカタマリがあったりしましたよ。
ねこ ファンをまわしておろせば効果的なんですが、住んでる人は常時回すのはうるさくてイヤと言ってました。
うさぎ 困った厩(うまや)は建具が破れているし、土壁がおちていたり、ほとんど野外ですよ。そこにつながる玄関、玄関からオープンな階段であがっていく寝室もそう。ふとんに入る時に、0℃だったのは、いかに着込んでも、湯たんぽ抱いてもぐりこむんでも、寒すぎ!
いぬ ウィンクやっぱり、暖房する空間としない空間との境にあたるところは、熱が逃げないように、寒気が入らないようにしておかないとね!
うさぎ 寒いー立っている時間の長い台所が無暖房で寒いのは、ぼくだったら耐えられないなー。この一家の主婦が寒いとそんなに苦痛に感じてないようなのは、料理をしている熱で暖をとってるから? それとも、慣れちゃってるのか!?!?
07外皮性能は「×」でも。一次エネルギー消費量は「○」
いぬ ふえーんプロパンガスの使用量は、一般家庭の約2倍程ありそう。これは、カロリーが高く家庭用で使うには無駄になる熱量の多い、古い業務用のガスコンロのせいですね。給湯器も高効率のものではないし。
くま オッケー電気代は、凍結防止ヒーター、薪つくり用の丸鋸やチェーンソーも使いながらこのくらいであれば、標準的ではないでしょうか。
ねこ どして? 今回の調査の実質一次消費エネルギー量結果からは、省エネ目的の生活は十分達成されていることが分かりました。ところが、外皮性能の結果に影響される設計一次消費エネルギー計算式では、実態とは乖離した、過大にエネルギーを使ったことになるような数字が出てしまいます。
くま もの申す外皮性能をあげて全館冷暖房をすることが、省エネ基準の大前提になっており、その前提にもとづいた計算式や評価方法しかないのが問題です。
ねこ 困りますバッファゾーンもあり、冬は部分的に採暖。この、日本に元からあるあたりまえの生活スタイルを評価できないまま、省エネ基準を義務化されてしまうと、困ります!
08薪の利用についての2つの意見
ねこ 薪の利用 年間2tで40GJを一次エネルギー消費量に入れるべきかどうかは、意見が分かれるところですね。(現状では入れなくていい)
くま ×ぼくは、入れなくていいと思います。今の日本は、山林の蓄積量がプラスになっていく一方の状況にあります。薪の需要が増える結果として、少しでも山の手入れが進む方が、環境にはいいからです。もとより山間部の場合、薪の調達費用はわずか。目的が省エネなのだから、薪を暖房エネルギーに加算する必要はないと思います。
うさぎ ○もちろん、バイオマスエネルギーの利用は環境的には評価されるべきですが・・・家のエネルギー性能そのものを把握するためには、あとから何らかの環境的な控除をするとしても、いったんはのせるべきでは? だって、たとえ熱源が薪であったとしても、少ないエネルギーで良好な温熱環境を得られた方がよいわけでしょ?
ねこ どして?バイオマス発電で得られる電気エネルギーの使用量も、現状の計算方法で加算されいので、薪ストーブの暖房エネルギーも同様に加算しなくてよいのではないのかなあ・・
いぬ さまざまな意見があるようですけれど、国でも統一見解をまとめているところみでたいですよ。それがどのように出てくるか、ひとまず、待ちましょう。
温熱チームより:省エネ基準への提言
○ 外皮性能は満たせなくても、部分採暖でエネルギーはそこそこで済む
伝統的な家の場合、開口部が大きく、断熱性が低いため、外皮性能UA値は基準を満たせないる。しかし、そういった家では、全館冷暖房ではなく、必要な部屋だけ部分的に採暖をするので、意外と低いエネルギーで生活できている。
○ 省エネ基準との乖離
この家の広さや外皮性能を省エネ基準で用意している計算式に代入して得られる理論値(設計一次エネルギー消費量)は215GJ。これは「これを越えては省エネとは言えない」という基準値(基準一次エネルギー消費量)130GJの倍近く、省エネ基準は「未達成」との評価につながった。ところが、実際の光熱費の実質値は79GJ。理論値のわずか3分の1である。
実質値で十分クリアしているのに、理論値でここまで違った結果が出るのは計算式そのものが「部分暖房での採暖」の評価をもりこめていないためであり、そこに問題がある。
○ 改善の方向性
外皮性能については、いちばん外周の性能だけでなく、伝統木造の縁側に見られるような「もう一重内側にある」バッファゾーンの利用が評価されるようにしてほしい。一次エネルギー消費量については、冬は暖房する範囲を限定するような計算式や採暖の場合の代入数値を工夫し、設計値が実質値に近づくようにすべき。
参加者ひとりひとりの感想
水野 友洋 水野設計室(岐阜県)
エネルギーを無駄遣いしない暮らしのできる伝統的な家づくりを評価してほしい
省エネ基準で前提としている高断熱で全館空調する家と比べれば少数派ではありますが、ぼくは、伝統的な家づくりでも、エネルギーを無駄遣いしない生活を実現できると思っています。そのような家づくりや暮らし方が評価されていってほしいです。今のままの基準に無理に合わせようとすれば、日本の暮らしのよさが失われてしまう面もあるのではないでしょうか。 昨年に引きつづき温熱合宿に参加させていただいた目的は、個人的に伝統的な家を快適に暮らす工夫を考える為でしたが、自分なりに考えた結果、我が家では薪ボイラーの床暖を試してみようと思っています。
林 美樹ステォウデイオ プラナ(東京都)
もうちょっと工夫ができそうな感じですね
寒いのを覚悟して着込んでいったこともあり、そんなに寒くは感じませんでした。十分暮らせるなとは思いながら、寒い部屋との差があまりに大きいと、活用できる部屋が少なくなるのでは?ともったいなく思います。冬使う部屋をイメージして、使わない部屋との間の熱境界はきっちりとつくるということをするといいですね。せっかくのペチカも、火種を落とさずつねにあたためておきたいものです。さらに、放射熱を蓄熱する土壁をつくれば、なおよいでしょうね。
中川 幸嗣中川設計室(京都府)
寒いのは苦手な僕ですが、ペチカのあたたささはいい!
僕は体脂肪率が低く、寒いのはこたえる体質です。寝る部屋、玄関、厩は寒かった。あっちこちがきちっと閉じてないのはよくない。一方で、西の縁側の電車窓(腰壁+横長のペアガラス窓の組み合わせ)、縁側のペアガラス建具、建具のガラスのあわさりめにかぶせものを付加していることなどは、いい工夫だと思った。薪ストーブの鉄の発する熱よりは、じんわりとしたペチカのやわらかいあたたかさは、日光浴のようで気持ちよかった。鉄が熱い(※鋳物ストーブのこと)のと、土が熱い(※ペチカのレンガのこと)とは、熱の質が違うと実感した。
横山 潤一潤建築(山梨県)
同じ地域に住んでいる者として、この家は寒い。寝室が特に。居間の上部の熱をうまくもっていけないものか。キッチンももうちょっとあったかくなれば。玄関は扉を新調してあたたかくなった。ペチカはあたたまるのに、時間がかかるから、日が落ちる早い段階からつけるなど、つけるタイミングに工夫があるんだなと分かった。
高橋 昌巳シティ環境建築設計(東京都)
家の温熱環境は、住み手の判断が最優先される項目であり、法的な義務付けには馴染まないと考えるが、基準に沿った数字を出してみた今回の調査は意味深い。「十分だから結構」「目標値に達成してないので改善すべき」という議論は、本来住み手自信が判断すれば良い内容であるが、一度は外皮平均熱貫流率UA値の値と使用一次エネルギー消費量の実際をきちんと調べてから、議論に参加する時代になっている。
今回調査の結果からは (1)省エネ目的の生活は十分達成されていること、(2) 2020年に義務化されようとして外皮平均熱貫流率UA値0.87という基準は、この民家では達成不可能なレベルであること、(3) 外皮性能の結果に影響される設計一次消費エネルギー計算式は、使用一次エネルギーの実態と乖離したものとなっていて、住み手の生活スタイルが全く反映されていないこと、など項目がはっきりと見えてきたといえる。が、一度は外皮平均熱貫流率UA値の値と使用一次エネルギー消費量の実際をきちんと調べてから、議論に参加する時代になっている。
改めて、家の性能を数字だけで判断するのは全体を見落とす危険を伴うこともある。省エネ達成を誘導するのであれば、この家の仕様・温熱性能・周辺環境・生活スタイルなどを鑑みて、使用エネルギーの上限を決め、それまでの実績から自己申告制などの方法を採用する方法もあることを強く提案したい。
水野 友洋 水野設計室(岐阜県)
エネルギーを無駄遣いしない暮らしのできる伝統的な家づくりを評価してほしい
省エネ基準で前提としている高断熱で全館空調する家と比べれば少数派ではありますが、ぼくは、伝統的な家づくりでも、エネルギーを無駄遣いしない生活を実現できると思っています。そのような家づくりや暮らし方が評価されていってほしいです。今のままの基準に無理に合わせようとすれば、日本の暮らしのよさが失われてしまう面もあるのではないでしょうか。 昨年に引きつづき温熱合宿に参加させていただいた目的は、個人的に伝統的な家を快適に暮らす工夫を考える為でしたが、自分なりに考えた結果、我が家では薪ボイラーの床暖を試してみようと思っています。林 美樹ステォウデイオ プラナ(東京都)
もうちょっと工夫ができそうな感じですね
寒いのを覚悟して着込んでいったこともあり、そんなに寒くは感じませんでした。十分暮らせるなとは思いながら、寒い部屋との差があまりに大きいと、活用できる部屋が少なくなるのでは?ともったいなく思います。冬使う部屋をイメージして、使わない部屋との間の熱境界はきっちりとつくるということをするといいですね。せっかくのペチカも、火種を落とさずつねにあたためておきたいものです。さらに、放射熱を蓄熱する土壁をつくれば、なおよいでしょうね。中川 幸嗣中川設計室(京都府)
寒いのは苦手な僕ですが、ペチカのあたたささはいい!
僕は体脂肪率が低く、寒いのはこたえる体質です。寝る部屋、玄関、厩は寒かった。あっちこちがきちっと閉じてないのはよくない。一方で、西の縁側の電車窓(腰壁+横長のペアガラス窓の組み合わせ)、縁側のペアガラス建具、建具のガラスのあわさりめにかぶせものを付加していることなどは、いい工夫だと思った。薪ストーブの鉄の発する熱よりは、じんわりとしたペチカのやわらかいあたたかさは、日光浴のようで気持ちよかった。鉄が熱い(※鋳物ストーブのこと)のと、土が熱い(※ペチカのレンガのこと)とは、熱の質が違うと実感した。横山 潤一潤建築(山梨県)
同じ地域に住んでいる者として、この家は寒い。寝室が特に。居間の上部の熱をうまくもっていけないものか。キッチンももうちょっとあったかくなれば。玄関は扉を新調してあたたかくなった。ペチカはあたたまるのに、時間がかかるから、日が落ちる早い段階からつけるなど、つけるタイミングに工夫があるんだなと分かった。高橋 昌巳シティ環境建築設計(東京都)
家の温熱環境は、住み手の判断が最優先される項目であり、法的な義務付けには馴染まないと考えるが、基準に沿った数字を出してみた今回の調査は意味深い。「十分だから結構」「目標値に達成してないので改善すべき」という議論は、本来住み手自信が判断すれば良い内容であるが、一度は外皮平均熱貫流率UA値の値と使用一次エネルギー消費量の実際をきちんと調べてから、議論に参加する時代になっている。今回調査の結果からは (1)省エネ目的の生活は十分達成されていること、(2) 2020年に義務化されようとして外皮平均熱貫流率UA値0.87という基準は、この民家では達成不可能なレベルであること、(3) 外皮性能の結果に影響される設計一次消費エネルギー計算式は、使用一次エネルギーの実態と乖離したものとなっていて、住み手の生活スタイルが全く反映されていないこと、など項目がはっきりと見えてきたといえる。が、一度は外皮平均熱貫流率UA値の値と使用一次エネルギー消費量の実際をきちんと調べてから、議論に参加する時代になっている。
改めて、家の性能を数字だけで判断するのは全体を見落とす危険を伴うこともある。省エネ達成を誘導するのであれば、この家の仕様・温熱性能・周辺環境・生活スタイルなどを鑑みて、使用エネルギーの上限を決め、それまでの実績から自己申告制などの方法を採用する方法もあることを強く提案したい。
前号「冬の温熱調査報告」も併せてご覧ください! https://kino-ie.net/wp/act_121.html/