1.まずは、知ってもらおう
気候風土適応住宅
「気候風土適応住宅」を
分かりやすく説明するちらしを作りました!
大工2 建築物省エネ法の中に「気候風土適応住宅」ていう新しいしくみができるって、ここのところずっと、発信してきてるじゃない? ところがさ、これが実際にいい形で作られていくためには、それぞれの地域で実務者が地方行政にはたらきかけてくことが必要なんだよ。
大工1 へえ〜〜。黙ってても、できてくっていうんじゃないんだね。
大工2 「求めよさらば与えられん!」ってこと。自分たちから求めて行く努力が必要っていうわけ。それも、多くの仲間によびかけて、みんなの意見っていうことにしてくことが大事。
大工1 まあ、そりゃあそうだよな。1人の意見として「作ってくれ」って言ってできるっていうもんでもないだろうな。
大工2 けど、みんなが全国あっちこっちで要望していくのにさ、ゼロから説明してかなきゃなんないっていうのも、大変だろ? ということで、このしくみを説明する分かりやす〜いチラシを作ったっていうわけ。
大工1 へえ〜〜 これをじょうずに使って、全国各地に「気候風土適応住宅」のしくみができていくように進めてくっていうわけだね!
大工2 これをネタにさ、地元の仲のいい工務店や職人仲間、設計者に、まずは「地元でもこんなしくみを作れるようになるんだけど」って、話をしてみてほしいんだ。「こういの、いいね」ってなったら、県や市の住宅の確認申請の審査をしている課、まちづくりや景観に関する課に話を持ち込む。そんな風に使ってほしいな。
大工1 どんだけ刷ったの?
大工2 はい。2000部、刷りましたっ!木の家ネットの予算で!! 会員のみなさん、ぜひ、使ってください!事務局に連絡くれれば、郵便で送りますよ。
大工1 木の家ネットの会員じゃない人には、送らないの?
大工2 チラシのPDFを自由にダウンロードできるようにしました。カラーコピーしてもいいし、このPDFをそのまんま印刷屋さんに入稿してもらったっていいよ。著作権とか、細かいことは、言わないから。
大工1 太っ腹だね!・・・まあ、今どき、数千円で1000枚、2000枚、刷れちゃうけどな!
大工2 裏面の下に余白を作りました。刷り増しする時に、自分の工務店や地元の家づくりの会、業界団体なんかの名前を入れてもらうといいと思います。
大工1 あはは。映画の地元上映会のちらしみたいだな。
大工2 自分のとこだけで騒いでても、広がんないからね。地元に仲間を作って、具体的に行政にはたらきかけていく。自分たちの地域の住まいづくりをみんなで考えていく。そんなことが同時多発的に全国に広がってくといいよね。
2.省エネ法が義務化になっても
伝統木造が新築できるように!
「気候風土適応住宅」が
各都道府県で認められるようになる
大工1 でさ、このチラシって、何のチラシだっけ?
大工2 なんだよ。分かってないで聞いてたのかよ!
大工1 いや、そうじゃなくてさ、読者のみなさんに分かりやすくと思って振っただけだよ!
大工2 ほら、省エネのこと、ずーっとやってきたじゃん? 土壁とか、無垢材あらわしとか、木製建具とか、作れなくなったら困る!っていう話。
大工1 ああ。なんか正月休みに慣れない作文してパブコメっていうの?国にメールで送ったりしたよね。
大工2 そう、それそれ!それが実って「気候風土適応住宅」っていう別枠ができるようになったんだ。ちらしでは、どういうわけで、そうなって、どういうものが、そうなるか、っていうことを説明しているよ。
大工1 だそーです〜!みなさん〜わっかりましたかーーっ!?
大工2 建築物省エネ法は衆参両院で可決されたから、省エネ基準を満たせない新築は作れなくなるっていう流れは、そうなる時期が延びることはあっても、なしになることはない。けれど、その中で、外皮性能は高いとはいえない、伝統的な要素の強い家づくりも、普通の省エネ基準を満たす住宅とは別に、認められることになったんだよ。
大工1 俺らのするような、伝統木造ね!
建築物省エネ法の全面施行で
省エネ基準への適合が求められるように
2020年には、今まではある程度規模が大きかったり、用途が公共的だったりする建築物にだけ適用されてきた「建築物省エネ法」が、小規模な住宅まで、全面的に施行されるようになる予定です。これにより、住宅であっても、気候区分ごとに求められている建物の外皮性能や一次エネルギー消費量の数値が、一定以下におさまらないと、確認申請が受理されなくなります。
これにより、土壁、落とし込み板壁、軒裏あらわしの木組み、木製建具など、断熱施工をすることが困難な要素のある伝統木造住宅は、外皮性能基準をクリアできず、新築できないことになってしまいます。
外皮性能基準クリアが困難な
伝統木造住宅のための適用除外ルート
それではいけない!ということで、外皮性能基準を満たすことが困難な伝統木造などの住宅については、外皮性能基準については適用除外とするしくみができることになりました。これが「気候風土適応住宅」です。
大工1 なるほどねえ。適用除外ねえ!じゃあ、この地域はUA値0.87以下!って決まってても、計算してみて1.3!になっても、いいわけなんだね。
大工2 そういうこと。
大工1 へえ!信じられない!これまで「落第」のレッテル貼られたのが、急に「いいですよ」って、なっちゃって、いいわけ?
大工2 お前が自分を「落第」に仕分けて、どうするっ!・・いいんだよ。外皮性能がよくないから、環境性能がよくないっていうことじゃないんだから。
大工1 あはは!一瞬、卑屈になりそうになってしまった!
大工2 温熱環境だけでなく、製造廃棄のエネルギー、地産地消、気候風土の取り込み方など、さまざまな面で伝統木造は、きわめて環境性能が高い作り方なんだから、胸を張って説明すればいいのさ。
大工1 だよな!・・・けど、説明って、またおれの苦手な、作文かい?? 助けてくれ〜〜!
大工2 まあ、まだ制度の概要は決まってないから、どういう風になってくか分からないけどな。けど、おおざっぱにいえば「こういう要素があるから困難」っていうことと、その要素を採用する理由ぐらい言えればいいんじゃないかな。
大工1 みんなのやるのを横目で見ながら、学びま〜〜す!
3.「和の住まい」の暮らしは、
日本の大きな魅力
オリンピックに来る外国人観光客は
「日本らしい風景」を求めてやってくる
大工1 ま、こうやって「気候風土適応住宅」という形で認められるって聞いて、よかったなあ、とは思うんだけどさ「今どき、いい断熱材があるのに、入れない家なんて省エネじゃない!」って、いうのが、なんか風向き変わった感じする・・・これって、どういう風の吹き回し?
大工2 確かにな。2020年までには、省エネ基準をバッチリ満たす家じゃないと、建てられなくっていう話になりかけてた。けど、2020年はさ、オリンピックの年でもある。外国からも観光客がわんさと来るわけよ。
大工1 で?
大工2 外国人観光客ってさ、どういうところに行きたがると思う?
大工1 京都とか、奈良とか、飛騨高山とか
大工2 だろ? 、日本らしい風景とか景観を見たいよね?
大工1 ・・俺らが海外旅行行くとしても、その国らしい風光明媚なところに行きたいと思うもん。それと一緒だよね。
大工2 で、国もいろいろ考えたわけよ。「省エネ基準はできました、みんな守ります、けど日本らしい家づくりはもうできません」っていうんじゃ、困るだろ?
大工1 なるほど。全国どこへいっても・・っていうような風景じゃ、つまらないよね。
大工2 省エネのために、外皮性能満たせ。だから、伝統木造はもう作れまでせん、で、いいはずない!ってこと、分かってくれる人もいてね。伝統木造住宅の空間とか暮らし方まで含めた魅力を伝える「和の住まいづくり推進協議会」っていう省庁横断のチームを作って、きれいな宣伝の冊子つくって、キャンペーンをはってるんだ。これ、見てよ。
大工1 う〜ん「和の住まい」いいねえ。俺もめざしてるの、こっちだから!
大工2 けどさ、これ、どのページ見ても外皮性能満たしてるとは思えないだろ!
大工1 確かにな。開口部広くて、木製建具で、まあ、言っちゃえば、ぱーぱーな家だよね。
大工2 UA値、0.87が守れっこない、1.5?いや、2とか越えちゃうような事例満載だよ。家の価値とか環境性能って、外皮性能だけで成り立ってるわけじゃない。環境負荷の低さとか、暮らし方の工夫とか、いろんなアプローチがある。で、日本の住まいは、外皮性能はよくなくても、低いエネルギーで暮らせるという意味では、むしろ優秀なくらいだ。国にも、そういうあたりまえのこと、分かってくれる役人も居た!ということだよね。
和の住まい推進
関係省庁連絡会議
国交省のホームページからそのまま引用しておきます。
我が国の伝統的な住まいには、瓦、土壁、縁側、続き間、畳、襖をはじめ地域の気候・風土・文化に根ざした空間・意匠、構法・材料などの住まいづくりの知恵が息づいていますが、近年はこうした伝統的な住まいづくりとともに、そこから生み出された暮らしの文化も失われつつあります。
このような状況の下、和の住まいや住文化の良さの再認識、伝統技能の継承と育成、伝統産業の振興・活性化等を図っていくことがますます重要となっており、和の住まい推進関係省庁連絡会議(文化庁、農林水産省、林野庁、経済産業省、国土交通省、観光庁により構成)を組織し、冊子「和の住まいのすすめ」のとりまとめを行いました。
このほか、本年10月30日には「和の文化に学ぶ」をテーマに住生活月間フォーラムが開催。さらに今後、関係省庁等の連携により、各地域におけるリレーシンポジウム等、国民向け普及活動を推進していくこととしています。
4.みんなの声や調査が
建築物省エネ法の附帯決議につながった
大工1 俺らは漠然と「国」って言っちゃうけど、国交省も経産省も文化庁もおんなじ国の組織だけど、それぞれに大切にしてるもの、違うこともあるよね。
大工2 外皮性能の悪い住宅はダメ!って言ってるのも、国。和の住まいが大事!って言っているのも、国。相反する議論をすりあわせながら、最終的にどんな意思決定プロセスを踏んで、どうなってくのか、それは、その時の流れによるんだろうな。
大工1 東京オリンピック開催も追い風になったのかもね!
建築物省エネ法の「附帯決議」が
「気候風土適応住宅」の道を拓いた
大工1 で、今回はさ、どんな風に、なってったわけ?
大工2 国を動かす具体的なしくみを作るのは官僚だけど、それを動かしてくのは、基本は民意、だよ。民意って言っても、企業からの求めによる時もあるけどね。今回の場合は、国会で建築物省エネ法の法案を審議するにあたって、僕らがパブコメで出したような意見を言ってくれた議員も居たわけ。
大工1 そうか!俺らが衆議院会館で勉強会やった時に来て、熱心に聞いてくれてた議員さん、何人も居たもんね。
大工2 あの時、JIAや建築士会連合会の人たちが伝統木造の温熱環境の調査の発表をしてくれて「外皮性能がよくなくても、少ないエネルギーで暮らせている事例がこんなにあります」って進言してくれたのも大きかった。
大工1 あれは、説得力あったよね。木の家ネットにもその調査に協力しするんで、施主さんちに行って、計測器取り付けさせてもらったり、光熱費の領収証を出してもらったり…いろいろしてよね。
大工2 まあ、そういうみんなの連携があったおかけでさ、建築物省エネ法案が可決されるにあたって「この法律ができることで日本の伝統的な木造住宅が作れなくなるようにはしないこと」っていう縛り条件をが付いた。こういうのを「附帯決議」って言うよ。
大工1 なるほどね。総論としては建築物省エネ法は通す。けど、それに釘をさしておくっていうことだね。姉歯事件のあとの石場建て問題の教訓もあるしね!
大工2 ということで、この付帯決議を実現するしくみとして「気候風土適応住宅」というしくみができたわけ。
附帯決議
次ページでは、より具体的な「気候風土適応住宅」となる条件をご説明します。