合板用に木を薄く剥ぐための機械、 ロータリーレース
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無垢の木を使って森づくりを支える


内装仕上げに石油化学製品が使われている

最近は家の中の内装についても、無垢の木が敬遠されるようになっています。例えば和室には襖の開け閉てを支える鴨居と敷居がありますが、それらにも集成材が使われるケースが増えているのです。ただ、実はこれは以前から行われていたことで、鴨居や敷居といったいわゆる造作材には、室内の美観を引き立てるために節のない木が使われることが多く、それではどうしても割高になってしまうので、木目のきれいな薄い板を表面に貼って化粧した集成材で代用してきたのです。ところが、最近は同じ集成材といっても事情が変わってきて、美観云々よりも寸法安定性が重視されているらしく、化粧板を貼らないものがよく使われています。そうした製品は板を貼り合わせて集成した跡がむき出しのままですから見てくれがいいとはいえません。狂いさえなければいいだろうというわけですが、そこまで割り切るのもちょっとさびしい気がします。

ラッピング材の断面。練り固められた木粉をシートが覆っているのがわかる。

ドアや建具の枠になると、無垢材はおろか木材そのものの利用を避けるという風潮がはびこっています。集成材でも狂う心配があるからというわけで、では何が使われているかというと、木粉を接着剤で固めた練り物のような板に石油化学製品のシートを貼り付けたものが多いのです。こうした材料は「ラッピング材」などと呼ばれていますが、表面のシートにはご丁寧に木目が印刷されていたりするので、おかしくなってしまいます。そうまでして木を避けるのは、ちょっとした狂いも許さずにクレームにしてしまう消費者が増えていることと、高気密住宅の普及に伴い、下手をするとほぼ1年中エアコンをつけっぱなしにするようなライフスタイルが主流になりつつあることに原因があります。

通常、日本の気候では、木材の含水率が15%くらいになると狂いがなくなって安定すると言われます(その状態の含水率は「平衡含水率」と呼ばれます)。ところが、暖房にしろ冷房にしろ、エアコンをつけっぱなしにしていると、部屋の中はかなりの乾燥状態になり、木材にとっては非常につらい環境下に置かれることになります。そのような状態で寸法を安定させろという方が無理な話で、たとえ集成材の板であっても狂いが生じる可能性が大きくなります。いったん狂いが出れば容赦なくクレームがつけられるというので、それを恐れる建築業者がラッピング材を採用するケースが増えているのです。

※含水率=木材そのもの重さに対して、それに含まれている水分の重さの割合を%で示したもの。

無垢の木を使って安全で健康的な暮らしを実現する

最近はあまり話題になっていませんが、5、6年ほど前まではいわゆる「シックハウス」問題が世間を騒がせていたことをみなさんも覚えておられることでしょう。室内の建材や家具に使われた塗料や接着剤から有毒な化学物質が発生して空気を汚染し、住まい手の健康を冒すというものです。シックハウスが深刻化したのは、そうした化学物質を多用した建材が増えたことと、住居の気密性が高まったために、汚染された空気が室内に滞留するようになったことが主な原因だといわれています。それを防止するには、何よりもまず健康に被害を与えるような化学物質を室内に持ち込まないことが大切です。

ところが、国の建築基準では、内装に使用する材料に関して一定の制限が設けられてはいますが、後から室内に持ち込まれる家具などについては何ら規制がありません。その代わりに、それらから発生するかもしれない化学物質による汚染を防ぐためとして、常時作動し続ける換気扇の設置を義務付けるという対症療法的な措置が講じられるにとどまっています。家具が問題になる可能性があるのなら、そちらの方で化学物質の使用を制限すべきです。そうはせずにエネルギーを消費する換気扇を設置させるというのは、省エネの観点から見てもおかしなことです。

私たちは住まいの内装に対して自分の身体をさらした状態で生活しています。安全で健康的な材料で内装を仕上げるというのは当たり前のことで、何にも優先すべきことであるはずです。自然素材である無垢の木はまさにうってつけの材料であるはずなのに、多少の寸法変化が心配されるからといって敬遠し、化学物質が使われた建材を採用するというのは、本当に大切なことが何かを取り違えた誤った判断だといわざるを得ません。美観についても、なるほどラッピング材は寸法が安定しているし、最初のうちはピカピカときれいかもしれませんが、人工的な材料の宿命として、時間の経過とともにだんだんとみすぼらしくなってしまいます。一方、無垢の木材なら年月とともに味わい深さが増し、視覚的にも、また手触りの良さという点でも私たちをずっと楽しませてくれます。さらに最終的に廃棄するときにも無垢の木なら環境に負荷を与える心配がありません。どちらに軍配が上がるか、勝負は最初から決まっていると思うのですが、いかがでしょう?


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新築マンション工事現場のゴミ置き場。リサイクルができるよう分別されているが、一番右側に積まれている袋の山の中身は、リサイクル不能で最終処分場に送られるゴミ。石油化学製品のシートを含んだラッピング材の大半は、ここに分類される