新年あけましておめでとうございます。新春にお届けするのは、木の家ネットの会員が2017年に印象に残った出来事を、写真とともにご紹介するコンテンツ。やりがいがあった仕事の写真を載せている人もいれば、うれしかった出来事を紹介している人も。みなさんのお近くの木の家のつくり手が、どんな日々をおくっているか、どうぞご覧ください。
川越の住宅街でのよいとまけの様子です。石をしっかりと据えるために行います。滑車のついた櫓を組んで、掛け声とともに綱を引いて丸太を引き上げ、一気に落とすことで、礎石と共に割栗石を入れた地面を突き固めます。
木組みのように木で木を締めるがごとく、石が地面に馴染み一体になっていくのを体で感じました。コンクリート基礎の打設ではけっして味わえない感覚です。つくり始めのこの段階で、建主さん、次の建主さん、近所の方、役所の方、知人や子供たち、設計施工の仲間が協働できることは、家づくりの原点を味わう様で是非とも続けていきたいことです。
今年も皆で力を合わせ、伝統的な構法の認知度アップを目指し、仕事と普及活動の両面を充実させて参りたいと考えております。
個人の文庫を公開するための私設図書館を施工しました。以前に川端眞さんと工夫して編み出した、間伐材を多用して金物を使わずに大スパンを得る「四寸角挟み梁工法」のことを知ったある設計士さんが「三寸角の間伐材を使ってこんな空間を作りたい」と施工を依頼してきてくれました。
「宮内なら、やってくれる」と、むずかしい仕事が舞い込んでくるというのは、嬉しいことです。「挑戦できる仕事」って、楽しいですから!これは仕口ではなくビス留めの仕事ですから、自分が編み出した「挟み梁工法」とは違うのですが。構造即意匠。照明が入ると、とてもきれいです。年内に完成までは行きませんでしたので、年明け早々から完成に向けて忙しくなります!
今年もこれまでになかったような発想の、いわゆる普通の木造住宅ではない、パズルのような設計からの挑戦が来るかなと、今から楽しみです。日々挑戦。大工がつくる家の新しい世界を、拓いていきたいです。
みかん山の隣で竹を伐り、それを大人も子どもも何十メートルにもわたって2m間隔に並び、山から運び出します。その竹を材料に、様々な人たちの助けを得て竹小舞をします。竹小舞の夜景はきれいです。この一枚の写真の向こうには、たくさんの人たちの顔があります。
このように竹小舞かきを「現代版結」の仕組みで行うことが定着し、とくに今年の夏から秋にかけて、竹小舞に明け暮れた日々でした。当初は費用を下げるためが動機で、今となっては「石膏ボードに漆喰塗って産業廃棄物処理費かけるぐらいなら、竹小舞土壁でもそんなに費用は変わらん!」という錯覚を起こしてますが(笑)数年間それを続けてきて、建主さんご家族、建主さんのお友だち、お隣の方、農家の方々、大学生、昔ながらの家づくりに興味のある方々、自然と調和した暮らしを志している方々、かつての同僚、学校に通わないフリースクールの子どもたち―、たくさんの人たちと出会い、つながることができたことが私にとって代えがたい財産となっています。
2018年は、多くのご家族にとって暮らしの一歩目となる「集合賃貸住宅」を「結」の仕組みで手がけたいです。
ご紹介するのは、階段を遊び場にした事例です。枝付きの木は「ネズ」という樹種で、ヒノキ科ですが、別名ネズミサシと呼ばれています。硬い針葉をネズミ避けに使っていたところから、それが短くなって、ネズと呼ばれるようになったそうです。
愛知県の足助町では「ベポ」とも呼んでおり、一山に一本くらいしか生えておらず、土台に使うと腐らないところから、大工さんが見つけると伐って集めていたそうです。珍しい木なので、貴重品として扱われ、床柱や落とし掛けにも使用されていることもあります。
この木の枝を残して、木のぼりができるようにしました。階段の一部にはしごを付け、二階部分には、雲梯も取り付けました。踊り場には、あえて手すりをつけず、腰かけたり、下で遊んだり、階段の途中に本棚をつけて階段に座りながら読書したりと、楽しいスペースにしました。今は、この横にお施主さんがハンモックを取り付けたそうです。家の中にこんな場所があるだけで、暮らしが変わる!というお話でした。
年末恒例の「住まい手」+「つくり手」+「丹羽アトリエ」忘年会。進行中の施主ご家族をはじめ、大工も左官も建具師も林業家も庭師も現場監督も「木の家づくり」の仲間がみんな集まって、食べて飲んでおしゃべりして、愉しいひと時を過ごしました。総勢、なんと50名。「みんなが居てくれるからこそ木の家づくりが出来る!」 そのことを、改めて実感できた年の瀬でした。
初めて挑戦したコンクリートを使わない地固めによる基礎づくりの写真です。建て主さんも参加し、自分たちで地元の大島石をハツッたり、試行錯誤での基礎づくりとなりました。
今回は「よいとまけ」的な締め固めではなく、現代的な機器と石灰を活用して「版築」的に栗石を締め固めるような試みに挑戦してみました。木の家ネットの仲間たちからもアドバイスをいただき、支えとなって頂いたのも、挑戦できたひとつの理由です。
コンククリートを使わない、大地につながる家づくりの心地よさを実感し、今後も取り組んでいきたい活動のひとつとなりそうです!皆さんにとってこの一年が良いお年でありますように!
版築とは・・
土に強度を出すため、 小石や石灰またはニガリを配合し、それをつき固めてる技法。型枠に土を入れてそれを半分のかさになるまで叩き締めて土を固める。押し寿司のようなつくりかたである。 1層は50mm程度で型枠が一杯になると上へ型枠を足すか、型枠を上にスライドさせて壁を作って行く。
2017年のベストショットは、施主さんと昔ながらのやり方で焼杉の外壁を作ったこと。バーナーで表面を焼くよりずっと早くて簡単。造園屋さんに話を聞いてやってみようと思い、調べてやってみました。
やり方は簡単。三枚の杉板を筒状に三角形に組合せ、下で焚火をするだけ。煙突効果で、炎が立ち上り、あっという間に表面が焼けます。上下ひっくり返しにして炎を立ち上らせて、終わり。三角をばらすと火は消えるので、ホースで水をかけてジワジワ燃えているところを消火。その時間、3分とかかりません。
お施主さん夫婦と大工二人の四人で、8時からはじめて10時には、小さな家一軒の外壁分全部を焼くことができました。ぼくも初めての経験でしたが仕事と遊びの境界線上のような作業で能率よく焼き板を作ることができて、よかったです。
焼いた板の焦げた表面は炭化しているので、火がつきにくく、水も吸い込みにくいので、防火防腐効果のある板になります。既製品もあるようですが、やっぱり自分でいい、赤みの材を選んでやりたいですね。施主さんが撮ってくれたビデオがあるので、ぜひご覧ください!
https://www.facebook.com/hidekazu.homma/posts/1731213590284171
仕事には直接関係ないのですが!秋に、琵琶湖の森を持続可能な形で森造りするための啓発イベントで、紙芝居をしました。滋賀県琵琶湖環境部森林政策課が生んだキャラクター、びわ湖の森の妖精、ボズーのお話です。
ボズーとは、森からやってきた、小さなメッセンジャーで、森づくりのために、新しい一歩を踏み出す私たち人間をみちびいてくれる存在。こどもや、若者や、オトナたちへ、森と湖の声なき声の代弁者として、メッセージを発信します。紙芝居のほとんどの文章やセリフはカミさんが読みましたが、僕は「おっさん」の声だけを担当しました。
ほか、この日は、来場した親子に森に親しみをもらえるよう、森の散策や落ち葉を使っての作品づくりもして、一日を過ごしました。川村工務店も、息子たちががんばってくれており、やがて代替わりの時期を迎えようとしています。今後少しずつ、家づくりの現場から森づくりへと、活動のウェイトをシフトさせていこうと思っています。
昨年は長野の行政と共に、職人の手仕事を未来に伝える試みを連続講座として行わせてもらいました。
写真は2017年6月「杣(そま)から始まる家づくり」として、長野県北部ではただお一人となってしまった杣棟梁の仕事を見聞きしながら体験するイベントの様子です。杣は木挽き(こびき)とも呼ばれ、かつては木の家づくり・建築大工の仕事の前段を担う大切な職業でした。
会場には長野県内だけでなく、首都圏、中京圏、東北からも伝統の家づくりに関心を持たれる方がお出でになり、いまでは見ることの少なくなってしまった根曲り材の扱いなど、興味深い話に耳を傾けながら、伝統の技を楽しく学ぶひとときとなりました。
災害が起こるたびに、古い建物や技術を軽んじる向きがあり、熊本でも震災後多くの貴重な古い建物が壊されてしまいました。持続可能な技術と建築物が、その価値をきちんと評価されることなく廃棄されることのないように、これからもささやかながら活動を続けて行ければと思います。
埼玉県飯能市での「玄関とポーチ」を施工しました。群馬の藤岡の敷瓦の良さを引き出す貼り上がりを意識し、迫力があるけど美しい仕上りとなりました。2018年は、家づくりと同時に、自分もを創り上げていきたいです。
新潟県立三条高校の正面玄関脇のポケットパークに建てさせていただいた東屋の傘状の小屋組み見上げの写真です。この一年が、木の家ネットの皆様と、木の家ネットを応援して下さっている方々にとって、この小屋組みのごとく、末広がりの一年となりますように。
静岡から石川に移って1年。雨や雪の多い日本海側なので、荷物を運ぶ軽トラックは、屋根のある箱バンに買い換えました。冬の間、雪が多くで仕事にならないのも、静岡とは状況が違います。
建築の仕事のつながりができていくのは、これから。まずは仕事場を整えなくては!と、嫁の実家の古い建物を直しています。とにかく埃だらけだったので、まずは掃除から。梁ははつり仕上げ、大鋸挽きの後もあり、建ったのは80〜100年ぐらい前かとみえますが、その時点で他所からもってきた古い材料を使っていたようです。
欅の丑梁で、柱のない高さ3mの空間ができているので、長い材料を整理するにはもってこい。きれいにできあがれば、いい古民家再生の作業場になりそうです。年明けに機械類を運び込んでほっとしました。これで落ち着いて仕事していけます!
今年は地元で手刻みの新築と古民家再生に加えて塗装業もしていこうと思っています。ほか、全国の仲間の大工支援と応援にもでかけていきたいです。どのような展開になるのか分かりませんが、楽しみです。
今年前半に手掛けた町家再生現場の最後に、お施主さんに職人たちの集合写真を撮っていただいたものです。
空家になっていた築60年余りの町家住宅を、住宅兼ギャラリーに再生しました。昭和の改装で貼られたベニヤやトタンを引っぺがし、元の壁を出すと共に、水回りは元の構造を生かしつつ新しく作り直しました。お施主様がデザイナーで、色々勉強になった現場でした。
中川 幸嗣さん
一級建築士事務所 中川幸嗣建築設計事務所
京都・西陣にある、幕末から明治初め頃に建てられたであろう町家の改修現場です。雑な養生がみっともないですが、垂木からやり直した瓦屋根が年末に葺きあがりました。ごく一般的な淡路の瓦ですが、現在では小さめの60版瓦を用いて緩いムクリをつけました。瓦は硬い材料ですが、葺きあがった表情が非常に柔らかくなったのが、気に入っています。
高知県安芸市の築130年の長屋門を事務所に、築130年の蔵をゲストハウスに、現在改築中です。蔵の杉板はお施主様の伐り出し、瓦は安芸の中川製瓦所。
このゲストハウスの事務所の壁面を飾る土佐の職人技「鏝絵」が、今年のベストショットです。制作者は現代の名工、安芸市在住の松本勉さん。2015年に開催した「伝統構法をユネスコ無形文化遺産に」の関連イベント「伝統構法と地域性ー土佐に見る」奈半利会場の濱田邸で披露したものを完成させました。
高知総会に来られた皆さんには、鏝絵実演の様子をお披露目しました。その時の動画もご覧ください!
■ 木の家ネット第15期総会 高知大会奈半利会場 松本勉さんの鏝絵実演
https://youtu.be/cFD1_Zsqg4g
新築を予定しているお施主様に、山で大黒柱にする木を選んでいただきました。お選びになった木に思わず抱きついたお施主様の記念の一枚を奥様が撮影。お施主様が喜んでいる顔を見ますと、こちらもうれしくなります。この後に伐採をしました。大黒柱を中心に据えたお宅は、来春上棟予定です。
2018年も、相も変わらず、近くの山の木をふんだんに使った家づくりを進めてまいります。どうぞよろしくお願いします。
今年の夏、イタリアから研修生を受け入れました。彼女は、若い建築家(あちらではこう呼ぶのが普通なので)で、環境に負荷のかからないエコロジー建築が専門なのですが、日本の伝統的木造建築、左官技術とりわけ土壁の研修にやって来ました。
滞在ビザの申請などの諸手続きは私がして、東京に4ヶ月、関西で2ヶ月の予定でしたが、あいにくと私の土壁の現場が丁度終わってしまっていたので、その後は左官の江原さん、シティ環境建築設計の高橋さん、遠野さんなどの仕事で設計から施工まで様々な経験を積んだようです。その後は、関西に移動し、左官の松木さんや一峯建築の池山さんなどのところで研修をし、年明け早々帰国するそうです。
私たち木の家ネットのメンバーの仕事が、これからの建築のあり方として海外でも評価されるのは本当に嬉しいことです。彼女のこれからの活躍にも期待しつつ、この写真をお送りします。
岡崎市藤川町のまちづくりの一環として修復した十王堂です。明治時代に建ったお堂なのですが、伊勢湾台風によって屋根が飛んでしまって、簡素な切妻で忍んでいたものを解体し、丸太梁や虹梁、舞良戸など再使用をしながら復原しました。
お堂は子供達が通う小学校のまん前にあります。土壁塗りにも高学年の子たちが参加し、そのサポートを愛知産業大学の学生有志がしてくれました。瓦の裏には、子供達が自分の名前と好きな一文字を墨で書きました。
日々往復する通学路に建つお堂が日に日に修復されていく様子を見ていた子供達は、このお堂にきっと愛着をもつことでしょう。大人になったら「あの瓦に何ていう字を書いたかなー」と思い出すこともあるかもしれません。まちづくりは人づくりということを実感した現場でした
今年も、改修新築を問わず、ただハードとしての建物をつくるのでなく、人の思いを共に形にするような仕事、過程や関係性を大切にする仕事をしていきたいと思っています。
「鵜方の小さな石場建て」です。よいとまけ、竹小舞い、あら壁ぬり、たたき土間、板壁打ち、燻炭もみがら断熱等々、家族総出の普請でした。里山の杉桧を木組み、木建具・土壁・板張りによる「24時間換気扇無し」にも挑戦した思い出深い一棟です。
新年は、仲間とともに「気候風土適応住宅」にも取り組んで行きます。
今年の1枚、赤岡中学校全校生徒約50名と取り組んだ、古民家おそうじボランティアです。私が再生に取り組んでいる赤れんが商家を含め築100~200年近くのお家4件におじゃまし、土間のおそうじを行いました。中学生には、地域らしい建物や地域の活動に興味を持ってもらいたい、
家主さんには、これからも家を大事にしていこうというモチベーションにしてもらいたいという思いで実施しました。
設計・施工とは異なり、教育・地域活動という側面から伝統構法に携わっており、3年経っても1件も再生できていませんが(汗)、今年もも楽しみながら取り組んでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
「こまか庵」は通貫や足固め、色んな仕口を仕組んだ組立式の小さな軸組です。
子ども達に遊びながら、木や大工さんの仕事を知ってもらおうと、杣耕社の山本さんとジョンに作ってもらいました。イオンモール岡山で子ども達と組み上げた後、上棟式をした後の餅投げの様子です。
吉田 晃さん
吉田晃建築研究所
昭和44年に建った間口二軒の家の改修事例です。何ヶ月か空き家になっていた間に雨漏りがひどくなっていたし、区の耐震診断でも○はつかないという状態で依頼を受けました。2階床の補強をして耐震性能をアップし、雨漏りしていた天井は抜いて、2階から梯子で屋上にあがれるようにすることを提案。楽しい家ができました。
施主の奥さんは女性漫画家。「天井が高く、カラフルな壁紙にソファー」という環境で育って来た彼女にとって、天井が低く、細い柱が林立する中に壁が、障子が、窓があるという家は、まったく新しい環境。けれど、畳のやさしい足当たり、すーっと横にあく引き戸や障子に、すっかり惚れ込んだようで、日がな一日、和室の2階につくりつけた作業台に向って漫画を描く、座の生活を楽しんでくれているようです。
鈴木工務店三代目の健太による「ねずみさしの皮剥き」です。今年初夏頃に着工予定で、北杜市に住む娘家族のもとに移住して来るお母様の住まいに使います。山関係の仕事をする娘家族と男の子のお孫さん2人に喜んでもらう事が、施主であるお母様の狙いで、木登りできる柱として使います。
北杜市、しかも弊社のある町内で!で育った樹を、実際に生えている中から選定し、新月伐採をし、三代目が皮を剥ぎました。冬から春に移り変わる本当に穏やかで暖かな日で優しいお日様の下で作業をしていました。本当は紫外線があたると白っぽいねずみさしの木肌に色がついてしまうから、陽の下でこの作業はしないものなのですが・・・
このねずみさしをお孫さんが登って行く日が楽しみです。
高橋俊和さん
都幾川木建
新陰流の剣術道場です。その二階にお施主様たっての希望で、本居宣長の四畳半書斎「鈴屋」(すずのや・松阪市在)をそっくりそのまま再現しました。壁を塗りまわして仕上げた「洞床」もあり、四畳半の部屋に二つの床があるめずらしい形です。左官は勝又久治さん。床のお軸は保田與重郎のもの。
昔、故吉田桂二先生のお茶室(不成立)を見積もったことがありましたが、材木の指定が「黒木(くろぼく)」でした。黒木とは、銘木ではない、なんでもない皮付きの木という意味で、今回それを意識しました。床柱は「鈴屋」では天然の絞り丸太だったのですが、材木屋の片隅で長らく眠っていたエンジュの木を見つけて使いました。ほかにも、うちの工場で見つけたもの、銘木屋で求めたものなど、取り合わせや見せる部位などを考えて一本一本を見つけてくるのも、むずかしいながらも面白く、銘木屋にあたりまえにあるものを用いるのとは違うおもしろさがありました。
剱持 大輔さん
剱持工務店
山形県鶴岡市の、月山を真っ正面に望む角度に建物に対して45度ふれたリビングを突き出した家の中心部に立つ「一尺角大黒柱に七方差し」です。垂直荷重というよりは横からの力に対する強度を考えて太さは一尺。七方差しになっているのは、家のメインの四角い部分と、飛び出した三角の部分との境目にあるからです。わかりにくいでしょうが、数えてみてください!
こんなプランを考えてしまった自分、施工も大変で「しまった〜」と思うこともありましたが、「いいこと思いついてしまったからには実現したい!」というのが、大工の心意気です。3月には完成予定です。
今年の総会は山形県鶴岡市です。交通の便よろしくないですが、皆様是非おこし下さいね。
横山 潤一さん
潤建築
独立してから10年以上もの間、単管パイプのブルーシートの下小屋で仕事をしてきました。昨年は私の悲願である工場兼事務所建設にとりかかることができました。RCと木造の混構造で、自宅の敷地を残土を受け容れながら造成するところからはじめて、ようやく昨年棟上げまでいきました。倉敷総会での池山さんの発表でも報告がありましたが、明治時代の小学校の合掌材を屋根に使っています。
建前に応援しに来て頂いた木の家ネットの宮内さん、北山さん、あずみさん、松村さん、そして鈴木親方、健太くん、兵庫から90年前の合掌を解体、運搬して頂いた池山さん、それから、地元の大工安崎くん、巾くん、青柳さん、小堀くん、瀬野さん、クレーンの須田さん、鐘ヶ江さん、富山県から駆けつけてくれた林太郎くん、うちの大工の行田くん、亮くん、おかげさまで屋根掛けまでこぎつけることができました。本当にありがとうございました。壁はいまだにブルーシートですが、お施主さんの仕事をしながら、少しずつ完成させていきたいと思います。
伊藤 淳さん
スタヂオA.I.A.・伊藤淳建築設計事務所
施主、知人など大人も子供も楽しんで壁付けをしてもらいました。毎週の様に来られる方も。だんだん壁がついてくると、出来て来ちゃった感がちょっと寂しい気もすると施主談。棚、家具、台所流しなども自分たちでやろうと意気込んでおられます。
寺川 千佳子さん
一級建築士事務所 恒河舎
独身の長男のために東京の町なかに作った25坪の家です。木の家ネットのメンバー、町家大工の都倉さん、左官の江原さん、建具は杢正の新井さん達のお陰で出来上がりました。夏にモチドメデザイン事務所に取材に来てもらって、みんなで中華料理を食べたのが、昨年の楽しい思い出です。
趣味も仕事もパソコンやゲームという長男のために、居間のある二階とお風呂や納戸のある一階との間に、スキップフロアを設け、パソコンルーム的な書斎を作ったのですが、これが一緒に来ていた持留光君に「上からも下からも逃げられる隠れ家みたいで、いい!」と大好評。息子とちょっと似た雰囲気もある光君にほめられて、嬉しかったです。
北山 一幸さん
大工北山
今年も仲間達とたくさん「木組み土壁の家づくり」をしてきました。土壁は、施主さんが土作りや荒壁塗りの作業などに関わることができる余地があり「自分の家を造ることが楽しい!」という実感を味わうことができます。それが家への愛着となり、長く家を大事に住み、次の世代まで住み継いでいける元となります。
こうした家づくりができていることについては、小山さんをはじめとする左官さんたち、いつも応援にきてくれる池山さん、ちかちゃん、そして自分の家づくりでもないのに壁塗りの手伝いに来てくれる施主さんOBのみなさんのおかげです。一生に一度の家づくり。いろいろな人の協力を得ながら、みんなで楽しくやったという家族の思い出をつくることを今年も大切にしていきたいと思います。
昨年秋から昭和7年に建てられた、築86年の家を修復工事しています。傷んではいますが、とてもしっかりとした良い造りの家で、建具や襖も素晴らしいものです。これは、その家の庇です。建てられた当時と同じように修復して欲しいとのお施主さんのご希望です。当時の材料が残っていないため、寸法などが分からず、大変苦労した末に形造ることが出来ました。要所要所に難所がありますが、やりがいのある仕事です。
この三が日に工事の途中経過をご覧になったお施主さんは、大変喜ばれ、「良いお正月になりました。」とのお言葉を頂きました。造り手の私どもも、当時の姿に家が甦るのが、大変楽しみです。
昨年春に仙台市内で完成引き渡しした木造2階建て124.20㎡(37.57坪)構造材も造作材も、床材も天井材も宮城の地域材である杉材でまとめております。2人めの子供さんが生まれたばかりのこの家のプランは薪ストーブと吹抜けを中心にぐるっと走り回れるオープンスペースがコアになっています。入居してからの梅雨の時期もカラッとしていて押入含めて結露や寒さの問題が無く喜んで頂きました。
宮城県と県木材組合協同組合主催の第19回みやぎ木造住宅コンクールに応募した審査結果の通知がが昨年暮れにあり、初めて「最優秀賞」と「宮城県知事賞」の受賞が決まったとのこと。施主様、施工の工務店、設計者3者に対する受賞でもあり、共々驚き、喜び合いました。その施主様より上記応募の際お願いした、住んでみての感想文ですが了解頂いたので紹介します。
家を建てた際に余った木材は日曜大工に、その切れっ端は子供の積み木に、更に小さな木っ端は蒔ストーブの焚き付けに。宮城県の木材をふんだんに使った家、自然の恵みを余す事無く暮らしに活用させて頂いております。室内に漂う木の香りは、仕事で疲れた心と体が落ち着く癒しの空間。杉板を使った床は、寒い冬でも温かみがあり、湿気の多い夏でもベタベタせず、年中通して心地良い。童謡『背くらべ』のように柱に子供の背丈を刻みつつ、家族で過ごす時間がとても快適で楽しい家になりました。
夏に「結い作業」で庭の石場建て小屋の土壁を塗り直しました。仕切りは北山さん。左官は小山さんと折笠さん。塗り直すことを決めた一昨年の総会のすぐ後、まずはうちの田んぼの収穫後の藁切り。そして5月には、三島の現場での塗り残し土を北山さんが運んできてくれて、単管パイプと板とブルーシートで作ったプールに藁と土と水路の水を入れて耕耘機でかき混ぜて、発酵スタート!8月半ばにはいい具合になって、塗りました。
木の家ネットとはかぶらない人脈で限定募集して集まった土壁塗りメンバーは9人。伝統木造も土壁も初めて!の人がほとんど。「身近にあるもので、みんなで家直し」できることが分かって「なあんだ!こんなに楽しくできるんだ!」と陽気にご機嫌になった二日間でした。
自分ひとりでやるんでもなく、なんでもお金で解決するんでもなく、時間と労力を持ち寄って、頼んでいる方はその場が楽しくまわるように心を遣って、そうするとみんなの気持ちと労力とがうまくかみあって、一人ではできないことができちゃう!そういうことって家づくりに限らず、人が集まってなんかしらするときに体験することだろうと思うけれど、自然素材&伝統工法家づくりに「そういう要素がある!」っていうことは、参加した人にとっては新鮮な驚きだったようです。
今年はコンテンツづくりを通して、結果としての木の家というモノだけでなく、つくっていくプロセスに関われる、一緒に作れる楽しさが、伝統木造にはある、ということを伝えていきたいです。キーワードは「体験」「プロセス」そして「関係性」です。今年も発信していきます。ときどき木の家ネット、見にきてくださいね!