木の家ネット事務局 八ヶ岳便り

2017年12月2日

松っちゃんの餅まき宣言

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「12/2(土) まで石場建ての自宅の上棟をしています。最終日の16時には餅まきをします。本人忙しすぎておしらせまで手がまわらないので、縁ある方に代わってお知らせします」天竜杉を扱う材木屋のアマノ 山口好則さんからのFacebook経由の案内に惹かれ、静岡県の森町へ、木ごころ工房 松村寛生さんの自邸の棟上げ最終日に行ってきました。

着いたのは16時過ぎ。国道をおりてくる坂道の途中から「あ、あれだ!」と分かる、無垢の木組の軸組が、みかん畑の斜面に、輝いて見えてきました。脇道を入ると、クルマがびっしり。人だかりもしています。みかん畑の作業場の前に停めさせてもらって近づいてみました。

つやつやと輝く無垢材は、アマノの天然乾燥材の杉や桧。キメの細かい、表面に光沢のある材が、湯上がり美人のようです。代替わりしても天然乾燥材にこだわるという姿勢を貫くアマノの若社長 天野徳重さんも、満足げに見上げています。少し遅れている餅まきを待っている人たちは、遠足シートを広げて座っています。いっぱい拾おうと、洗濯物のカゴを持参の人もいます。

揃いの「木遊舎」のスタジャンを来た大工たちと家族が、ようやく屋根の上に勢揃い。段ボールを手にもって、餅を投げ始めます。人だかりの後ろの方にいる私たちのところにも、降ってきます。距離投げられる大工さん。子どもの頃、野球でもやっていたかな!

その餅の雨が、なかなかやまないのに驚きました。紅白のビニールに包まれた丸餅です。歓声をあげながら直接キャッチする人、落ちたのを争うようにしてとる人、みんな本気です。屋根の上の投げている人たちも、満面の笑顔。楽しい時間でした。

松村さんは、木の家ネットに入会して間もなく、熊本の地震後に木の家ネットの大工たちで被災した石場建ての家の「家戻し」に参加。伝統木造の関わる大工ならいちどは建ててみたいと憧れる石場建てを、自分で建ててみたいという思いをさらに強くして地元に帰ってきました。

といっても、石場建ての依頼があるのを待っていても、なかなかありません。「頼まれるよりも前に、自宅を石場建てで建てよう」と決意。滋賀の川端建築計画の川端眞さんに限界耐力計算を依頼し、適判を通して建てました。

「手刻み、オール自然素材で住宅つくれるの?」「金物使わない木組みだけでなく、基礎も石場建て??」昔はあたりまえだったかもしれないけれど、今時の家づくりからすれば「そんなのできるの?」と思われがちな家づくりですよね。それを目指して、やってしまてている人にはひとつの共通点があります。

それは「やりたいことは、宣言してしまう。そうすれば、その思いに共感する施主がきっとついてくる」という姿勢です。根拠のない自信?と思われるかもしれませんが、現実に、やれている人たちは、そのように意思表明して、やれているのですから、これはきっとほんとのこと。ホームページや木の家ネットのつくり手リストで表明する「こうありたい」という言葉は、ちゃんと現実になっていくのです。分からないことにチャレンジしていく中で、困難や疑問にぶつかれば、木の家ネットの仲間に訊いたり、相談したりしながら。

しかも、松っちゃんは、言葉だけでなく、自宅を建てるということで、先に「やりたい家づくりはこう。俺ならできる」ということを、現実のこととして見せてしまったのです。自分の暮らしている地元で。

さらにすごいのは、それを、地元の大工仲間とやってしまったこと。木の家ネットの先輩大工から応援の申し出もたくさんあったそうですが、地元で活動している自分たちでやれるだけやろう!という思いで、普段アマノの作業場長屋をシェアしている仲間たちと敢行しました。「途中、もう間に合わないか!という場面もあったけれど、なんとか予定どおり餅まきできるところまで漕ぎ着けたことは、みんなの自信の力になりました」と。餅まきに参加した近所の人たちは、餅まきだけでなく、そうやって5日間かけて上棟してきた大工さんたちの姿も見ている。ホームページより何よりの、生きた「俺の家づくり宣言」ですよね。

「みんなもそうだと思うけれど、自宅をやっている時はキツイですよ〜」と松っちゃんは言います。そりゃそうです。入金がないばかりでなく、材料も手間も払わなきゃならないのですから。竣工は?と訊くと「来年の今頃」とのこと。ほかの仕事しながら=入金も途切らせずに、じっくり完成するそうです。竣工が楽しみです!