木の家ネット事務局 八ヶ岳便り

2018年5月13日

4/28 「職人宣言」で語った職人たちの全発言集!

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ユネスコへの申請対象の裾野を「伝統建築に関わるすべての職人」にまで広げる活動をしているのが「伝統を未来につなげる会」。その主旨に「職人がつくる木の家ネット」も賛同し、同会主催の「普請文化フォーラム2018(4/28 明治大学)」のフィナーレでは「職人宣言」に全面協力させていただきました。若い学生を含め、1000人集まった会場で、100人近い職人が半纏姿で登壇。
その舞台上でマイクを持って語った20人の職人の「生の声」をお送りします。

伝統建築に関わるすべての職人に光を!

普請文化フォーラム 2018」のフィナーレをかざる「職人宣言」で語った20名の職人たち。そのトップバッターは、職人がつくる木の家ネットの運営委員で、この「職人宣言」の呼びかけ人でもある、綾部孝司さん(綾部工務店)。川越で、プレカットではなく手刻みにこだわり、石場建てを含む伝統構法の住宅を造っています。

埼玉・大工 綾部孝司

かつて日本の美しい街並みは社寺、町家や民家でできていました。そのひとつひとつは、堂宮大工や家大工が、それぞれの立場を尊重しながら、同じ技術体系の上に連携して造ってきたものです。ところが、現在では「伝統的な木組みで建てる」といえば「宮大工ですね!」と言われ「家大工(やだいく)」という言葉は消え失せてしまっています。伝統建築にまつわる各職方の仕事も、町場では普通には見られなくなっており、森林大国でありながら、木を扱える職人をはじめ、関連する職方や道具鍛冶も減り続けているのが現状です。

しかし、環境と共生したこの技術体系を、過去のものとするわけにはいきません。つくり続け、継承していくには職人同士の連携を深め、世間の認識を深めていく必要があります。先人から受け継いできた技術と倫理観を、未来へと引き継ぐために、ユネスコ無形文化遺産での申請範囲の底辺を広げ、町場で仕事する大工まで含めていくことが必要だと考えております。

ここから、マイクが順々にまわっていきました。まずは、大工の袋田琢己さん(FUKURODA工房)。神奈川からたくさんの仲間を引き連れて参加されました。

神奈川・大工 袋田琢己

日本の木造建築、そしてそこで営まれる暮らしそのものが、日本が世界に誇れる民族文化だと思っています。これをぜひ、未来の子どもたち、世界へとつなげていきましょう。

静岡で天竜杉の製材をしている山口好則さん(アマノ製材)。低温乾燥の天竜杉は赤身が美しく、木をあらわす家づくりに生きる素材。木材産地も、普請文化の上流として大事な存在です。

静岡・製材 山口好則

日本の森林の恵みを活かすためにも、多くの知恵と技術が必要です。それを未来に継承し、次の世代の若者のために魅力ある仕事としてつなげていきたいと思っています。

横浜でタイル施工をしている小澤啓一さん(プローブ)。伝統木造の家づくりでは、ユニットバスではなく、床にタイルを貼った昔ながらのお風呂も人気。玄関ポーチや駐車場、台所でも、彼の技が光ります。

神奈川・タイル 小澤啓一

伝統建築の家は、たくさんの職種で成り立っています。一丸となって、伝統建築を守っていきます。

埼玉で大工をしている高橋俊和さん(都幾川木建)は「柱の復権」を力強く訴えました。

埼玉・大工 高橋俊和

柱は「天と地とを結ぶ」ものです。暮らしの中で柱を見たり、柱に触れたりする機会がまれになってしまっています。それが日本人の精神力を衰退させたと私は思っています。私にはスローガンがあります。「柱を立てよう!そして、伝統のスピリットを未来に!」

サラリーマンから大工に転身した増田拓史さん(工房MUKU)。若い弟子を連れて三重からやってきました。

三重・大工 増田拓史

私達町場の大工が、普通に伝統の仕事をやっていける、そんな世の中になることを、心から願っています。

滋賀県で工務店を営む川村克己さん(川村工務店)。息子たちに本業はまかせて、柱と貫を組み上げてつくるジャングルジム「くむんだー」での木育活動に奔走しておられます。

滋賀・大工 川村克己

「木を組んでこそ、大工だ!」これが私の、弟子に対する座右の銘です。木組みの技術があってこそ、修復の仕事ができます。すべての伝統職人に光をあてて、家をつくる「家大工」を、ユネスコに推薦してください。

東京都の西部にも、広大な奥多摩山地があります。そこで製材業を営む浜中英治さん(浜中材木店)からは「川上と川下」をつなげるメッセージが。

東京・製材 浜中英治

山の木は生きています。これからもみなさんに活用していただいて、すばらしい家の材料として活用していただきたい。これが山からの願いです。それが山を守り、緑を守ることにつながります。

六年かかって写真から撮り下ろしてつくったという共著「伝統建築用語辞典」が6月5日にようやく世に出る、高橋昌巳さん(シティ環境建築設計)は、出版にあたっての想いを語られました。

東京・設計 高橋昌巳

東京で土壁の家を30年つくり続けています。失われるのは技術ばかりでなく、言葉もそうです。「言葉をなくした文化」にしないためにも、ぜひ買ってください。(ご予約はcity@minos.or.jp 高橋まで!)

木の家ネットのメンバーではありませんが、袋田さんと一緒に来られた数寄屋大工の佐久間貴毅さん。

神奈川・大工 佐久間貴毅

神奈川県で数寄屋建築に携わっています。横浜でも伝統建築が減少しています。私達がやっている仕事が後世につながっていくと信じ、つねに心技体を鍛え、貫いていきたいと思います。

社寺の工務店で修業をし、神奈川で家大工としての工務店を開業、ご夫婦でがんばっておられる田中龍一さん(田中大工店)。

神奈川・大工 田中龍一

今日までは、日本の職人技が、伝承されてきました。これを未来に伝え、美しい建物を今までどおり、つくり続けたいと思います。頑張るぞ!

静岡の松村寛生さん(木ごころ工房)。石場建てで天竜材、土壁の自宅を施工中です。大勢の人が現場に土壁塗りに来ていて、自然素材と結での家づくりに確実な手応えを感じているそうです。

静岡・大工 松村寛生

かつてあたりまえに作られてきた、伝統構法のよる家づくりを、この大きな動きをチャンスに、取り戻しましょう。それは、職人の魂に喜びを取り戻すことにもつながっていきます!

国交省で実施していた「大工育成塾」の修了生の集まりとして「大工志の会」を主催する藤本嶺さんは、会を代表して来られました。

神奈川・大工 藤本嶺

日本の大工職人を未来につなげる国家プロジェクト「大工育成塾」開塾から15年が経ち、修了生の集まりである「大工志の会」にも、全国に約600人もの会員がいます。これから、このネットワークを生かして、日本の伝統建築を支えていきたいと思います。よろしくお願いします!

今年10月13-14日に開催する木の家ネットの次期総会の幹事をもつとめる山形の剣持大輔さん(番匠 剱持工務店)は、がっつりとした、雪国らしい家づくりをされます。総会開催地となる鶴岡からかけつけてくれました。

山形・大工 剣持大輔

伝統構法は、住宅建築にも受け継がれています。住宅、文化も含めた無形文化遺産登録に、ご協力をお願いします。

宮村樹(樹工舎)さんは、長く社寺建築に携わっていますが、家大工が多い木の家ネットの初期からの会員で、ちょうなで原木を梁に拵える「はつり」などの面白さを広めてくれました。宮大工でも、家大工でも、伝統構法という「根っこ」は一緒ですね。

山口・大工 宮村樹

先人の技、知恵、思いのタスキを、未来につなげるのが、私達の義務だと思っています。

岡山で木組・土壁・石場建ての家づくりを実践している山本耕平さん(杣耕社)。日々、手を動かしている大工らしい宣言でした。

岡山・大工 山本耕平

毎日のように建物のことを考え、墨をつけ、刻み、そして建て起こしています。毎日訥々と続けているこの作業は、先人大工の知恵の集積だと思っています。これからも毎日コツコツと、ぼくの工夫も織り交ぜて、後世に残すことができればと思っています。

自然と調和した建築である日本の伝統構法に見せられて、アメリカから大工修業をするために来日したジョン(杣耕社)。山本さんの元で大工をやっています。

岡山・大工 Jonathan Allan Stollenmeyer

日本の伝統建築は人と環境の調和を通じて、長年かけて培ってきた「生きる力」だと思っています。これをぜひつなげて、後世に伝えましょう

田口太さん(土壁の家工房 (有) 田口技建)は、熊本震災後の復興にお忙しい中、熊本からかけつけてくださいました。

熊本・大工 田口太

九州でも伝統構法を担う大工がつながり、日々精進しています。日本の家づくり文化で培われてきた知恵や技術を、私達家大工が守り、そして、未来へ継承していくことがこの「普請文化」にとって、大切なことだと思っています。

東日本大震災後、埼玉から宮城の三陸海岸沿岸に移住したマイケルこと杉原敬(大工瑞(みつ)Sugihara Takashi woodworking and building)。年間の半分は牡蠣やワカメなどの漁師、半分は大工という生活の中で感じていることを語ってくれました。

宮城・大工 杉原敬

温暖化と酸性化、プラスチックゴミなどで、海の環境も激変しています。北極海の氷は、どんどん溶けています。グレートバリアリーフの牡蠣は全滅しました。三陸で70年漁師やってるおじいさんが「こんなことは初めてだ」と言っています。これ、みんな人間のせいなんです。ものづくりをする人は、本当に、持続可能なものづくりをやってください。お願いします。

京都の綾部で、古民家改修を多く手がけている、金田克彦さん(大」(だいかね)建築)。猟や農業と大工と、不可分な暮らしから実感することを、そのまま美しい「花」になぞらえた宣言をしてくれました。

京都・大工 金田克彦

日本建築にはまだまだ「花」がいっぱい残っていると思いますが、花には根も土も必要です。それがなくなってしまうと全部「造花」になってしまいます。無形文化遺産、暮らしにねざしたところから、そのシステムごとまるっと、採択されるよう、望んでいます。

最後にマイクがまわったのは、福井からかけつけた伊藤和正さん(株式会社イトウ工務店)。シンプルで力強い宣言で締めくくりました。

福井・大工 伊藤和正

ただただ、伝統構法を無形文化遺産に!よろしくお願いします。

最後に、島崎棟梁の音頭で、観客全員も起立して三本締めをし、会場全体が一体感に包まれました。

職人宣言への呼びかけ文

来れ!職人たち!

「伝統建築木工 匠の技」がユネスコ無形文化遺産として推挙されることが決まりました!嬉しいことですね。

けれど・・今のところ文化庁が対象と考えているのは、文化財保存修理のための「選定保存技術」に関わる14の技術に携わる職人のみ。それ以外は伝統建築にかかわる職人であっても、対象とならない、というのです。実際には社寺をつくる宮大工も、住宅をつくる家大工も、伝統木造でするのであれば同じ「伝統建築木工 匠の技」であるはずなのに・・

4/28(土)に伝統を未来につなげる会の主催で「普請フォーラム2018」が東京のお茶の水で行われますが、これは、国がをユネスコに正式申請する2019年の3月までに、「伝統建築木工 匠の技」の対象を新築、造園、城の石垣普請などにまで広げていくことを目指すための内容となっています。

職人がつくる木の家ネットは、文字通り「家づくり」にたずさわる大工、諸織、設計者、林材関係のつくり手の集まり。その中心にいる「家大工」は、日々の実践の中で、まさに伝統建築技術を次世代につなげています。フォーラムの当日、そのことをアピールする、若き職人たちによる「職人宣言」をする時間をとりました。

この記事を読んでいるあなたが、「伝統建築木工 匠の技」を実践している職人であるならば、半纏を着て、当日11時にかけつけてください!そうではないけれど、このことに関心あるよ!という方も、13時からのフォーラムにぜひご来場いただき、舞台を埋め尽くす職人たちのカッコイイ姿に、胸震わせてください!!

職人宣言 呼びかけ人 
綾部孝司・袋田琢巳・高橋俊和・劍持大輔(職人がつくる 木の家ネット 関東チーム)

職人宣言に参加するには??

参加申込

伝統を未来につなげる会 http://denmi.jp/ のフォームより
※「職人宣言」参加希望にチェック!

参加資格

伝統木造建築にたずさわるすべての職人

集合時間

4月28日 (土) 11時
(開演は13時ですが、事前に打合せとリハーサルを行います)

集合場所

明治大学神田駿河台校舎
アカデミーコモンズ内(11F建てのビルです)2Fホール受付
(JRお茶の水駅より徒歩5分)

参加費

1000円(13時〜16時のフォーラム参加費として)

着装

工務店の半纏または 作業着 で !

およその進行

11:00 2F ホール受付に集合
11:15 3Fホール客席にて 顔合わせ、打合せ
11:30 舞台でリハーサル
     リハ後 休憩
     (昼食は各自持参、開演までに済ませる)
13:00 開演 
16:00 終演(出番は、終演近い時間)

お問い合わせ

info@kino-ie.net

※14項目の技術とは・・・
建造物修理、建造物木工、檜皮葺・杮葺き、茅葺、建造物装飾、建造物彩色、屋根瓦葺(本瓦葺)、左官(日本壁)、建具製作、畳製作、木造彫刻修理、装潢修理技術、日本産漆生産・精製、縁付金箔製造

呼びかけちらしをつくりました!

メールやSNSで、拡散してください!

おもて

うら

■ 印刷にお使いいただける、PDFファイル(表裏両面)
職人宣言_よびかけ_プリント用

■ フォーラムそのもののちらし、PDFファイル(表裏両面)
4:28_ちらし

裏面のテキストを抜き書きしました!

「伝統建築木工匠の技」
伝統木造建築にたずさわる、すべての職人に光を!

日本政府が「伝統建築木工匠の技」をユネスコ無形文化遺産選定候補として推挙する事が、今年2月に決まり、来年3月にはユネスコに正式に申請することになりました。「伝統構法をユネスコ無形文化遺産に!」を掲げて、伝統木造技術文化遺産準備会(会長=中村昌生)で3年間活動をしてきた成果であり、この4月からは一般社団法人 伝統を未来につなげる会がこの活動を引き継いでいくこととなりました。
 ところが文化庁では、文化財保存修理に携わる、ごく限られた範囲の職人だけをこの「伝統建築木工匠の技」の担い手ととらえており、実際に伝統建築の仕事をしてはいても、それ以外は無形文化遺産の対象ではない、と考えていません。一般住宅を造っている 私たち「家大工」や「庭師」「石工」はその中に入っていません。
 
時代に則した新たな工夫を加えながら、次の世代に引き継がれ、今日まで続いて来たものが「伝統」です。新築技術が途絶えた時点で、伝統は過去のものとなります。木の性質を見抜き、木と木を木で組み上げるこの日本建築の技は、自然環境と調和的に共生する思想に裏付けられた技で、これからめざすべき「資源循環型社会」をつくっていく上で、高く評価されるべきものです。
 
来年3月の正式申請までに「伝統建築木工匠の技」の対象を、現在の狭いくくりから伝統木造建築に携わるすべての職人にまで広げたい。そのように私達は考えています。この思いを、28日にお茶の水の明治大学アカデミーホールで開催される「普請文化フォーラム2018」で、「職人宣言」として表明します。大工の皆さん。そして左官、瓦、建具、畳、板金、木材、山、庭師、鍛冶職、石工他のみなさん。ぜひ奮ってご参加ください。

伝統建築は、多くの職種の手仕事が連なって成り立っています。ひとつとして、欠かすことはできません。集まりましょう。舞台を埋め尽くして宣言しましょう。「私たちがこの技を未来につなげていきます」「伝統建築に関わるすべての職人に光を!」と。半纏を着て、作業着を着て、胸を張って高らかに宣言しましょう。