リトルワールドで見た 沖縄の家、アイヌの家
リトルワールドをご存知ですか? 名鉄という鉄道会社が明治時代の建造物等を移築して開園した「明治村」は有名ですが、同じ名鉄が、世界じゅうの民家を移築して1983年に開園した「野外民族博物館」が、リトルワールドです。世界それぞれの地域で手近に入る自然素材で建てた民家が広い園内に並び、ぐるっとまわると「世界一周」できるから、リトルワールド。もちろん、日本の民家も移築されています。そこで沖縄の民家とアイヌの民家とを同時に体験してきました。
沖縄の民家は、開口部がほとんど建具で、うんと開放的。床も地面からあがっていて、風がよく抜けるかんじです。台風への備えとして屋根は重たい瓦を置いた上から、漆喰でかためています。
それとは対照的に、寒さの北海道で厳しい建てられていたアイヌの住まい「チセ」は、分厚い茅でできていて、窓はほんのわずかしかありません。
その現物をみて、なにかと似てるかも?・・と、思い出したのが、これまで木の家ネット組んできた「気候風土適応住宅」の特集でつかってきた、建築物省エネ法の図解。アイヌのチセは、断熱材で家をくるみ、室内を機械空調する、世間一般でいわれている「省エネ住宅」と、似ていました!
二酸化炭素排出を国際的に決めた合意の範囲内に削減するために、国をあげて取り組もう。建築物だってエネルギーを無駄遣いするものであってはならない、ということで、2017年から「建築物省エネ法」が施行されています。どんな建物が「省エネ」なのか? 国が注目したのが「熱の逃げ」の少ない家。せっかく暖房しても、外の寒さに影響を受けて熱が逃げてしまえば、じゃんじゃん暖房しなければ間に合わず、エネルギーをたくさん使ってしまいます。暑い時の暖房時もしかり。だったら「外気の影響を受けないように遮断」して、内部を省エネタイプの「効率のいい機械で空調」すれば、ランニングコストは下がるよね?ということです。
どのくらい、外界の影響を遮断できているか、壁と窓、ドアなどの開口部の「熱の逃げやすいさ」をあらわす「外皮性能」を計算し、地域ごとにあるべき外皮性能を新築時に守ってもらおう・・・というのが「建築物省エネ法」です。大規模な公共建築から、段階的に外皮性能の適合義務が課されてきて、現在はまだその手前でとどまっていますが、いずれは、小規模の住宅にもそれが及んでくると予想されています。
全国どこでも、断熱材で分厚くくるんでしまえば、内部で機械空調した家の熱は逃げませんから、ある程度の「外皮性能」は確保することができます。全国どこへ建てようと同じ省エネ性能を確保できる、というのが高気密高断熱住宅の売りになっています。けれど、やはり、南の方では、暑い時に風がよく抜ける沖縄の民家の方が、エネルギーは使わなそう・・と思うのですが・・。
ところで、機械空調のないチセですが、案外あたたかく暮らしていたようですよ。その秘密は土座住まいにありました。チセが床が地面からあがっていません。地面にしいたやわらかい木の繊維の敷物に座り、囲炉裏にあたります。一年中火は絶やさず、チセを分厚く覆う雪を溶かさない程度でトロトロと薪を焚いておけば地温が一定に保たれ、その恩恵を受けることができるのだそうです。なんと地面の下5mのところでは冬の方が、あたたかいのだとか。
本州からの開拓史がつくった日本式の高床の住まいと比べると、あたたかさは格段だったといいう記録が残っているとありました。自然素材と機械空調なしでも、自然の摂理を生かした寒さ・暑さのしのぐ暮らしの工夫があることを、あらためてリトルワールドで学びました。「気候風土適応住宅」の原点を見た気がします!
もうひとつ、おもしろかったのが「穀倉のあれこれ」。南方でも北方でも「ネズミに大事な穀物を喰われない」ための工夫をしているのはいっしょでした。
奄美大島の穀倉では、太い丸柱が支える高床との接点に、ブリキを巻いていました。そして、アイヌでは、木の皮をぺりっとはがしたものを、はさんでいました。いずれも「ネズミをのぼらせないための工夫」です。所変われば・・ということもあれば、所変わっても・・ということもある。人間の知恵はいろいろです。
地域にあった家づくりの知恵や暮らしの工夫が、全国にあります。それを生かして、その地域ならではの、自然素材を生かした家づくりをしたいですね!