5-8) 土に関する自由意見


【その土地の土を】
・土は建材ではありません。我々と同じ生き物です。乾いたからって死んでるわけではなく、常に呼吸し共存するものと考えるべき。瓦や陶器などとは違い、土壁の土に至っては、どこぞの名土ではなくその土地にある土をその土地に建てた家に使うのがベストだし、私が土なら一番うれしい事。
・手で土をつかんで開いて、かたちが残っている土は壁土に使えると左官さんから聞いた事があります。
・出来る限り、現場の近くの土でつくることが目標です。結構職人まかせだったのですが、もっと勉強せねば。

【地域性〜土の性質】
・土の性質は地域によって違う。現場(関東)の土を四国のポリテクセンターで試験したが、瀬戸内海域の花崗岩質(まさ土)と関東の粘土質(荒木田)ではハッキリ強度に差があると実感しました。みなさんも試験をする事をオススメします。
・関西は土の質がいいと思う。
・岡山県内でも、男土で経年変化によって黒ずむ土とか、試行錯誤で石灰分を含む土などあります。本来地産地消の上に成り立っている、日本家屋ですので、近くで取れる良質な土が、その地方に適している素材だと思われます。
・矢掛の泥は「はねない」(荒壁と中塗が離れない、裏と表が別れない)。ネバすぎないからだと思う
・私の地方の土は粒度の問題で余り強度が出ないことが分かっているので、なんらか粒度調整出来れば、関西地方の土に近づいた強度が出るのではと考えます。中塗り土は砂を混ぜて強度が上がる為、それに頼っている感じです。

【地域性〜施工】
・小舞の掻き方も地域によって違うので一律にこうです。というのは間違いの元です。構造組や竹の種類、藁のまき方など、教科書にかいてある事が全てではないので、左官屋さんや、昔えつりをやっていた方々によく聞く事が大切です。

【改修と新築とでは?】
・改修工事のときには既存の土をなるべくとっておき混ぜて、新築のときは新しい土を買って使ってます。
・民家再生が主なので、新しい土と古い土と半分づつ混ぜています。

【構造として効かせたい】
・土の粘性により配合が変わるので構造壁としての粘土を使いたい。たとえば、田んぼの底土などは、粘性として疑問がある。
・繊維だらけで、壁が大きく変形しても、つぶれるが、崩れない壁が理想かな。
・奈良は郊外ではいまでも割と土壁の家が建てられますが、竹屋さんにせよ土屋(左官や)にせよわりと自分のやり方にこだわって(執着)いるように思われ、学術的なデータはなかなか信用してもらいにくい雰囲気があるようです。
・砂の量が多いと割れにくいが、弱いように感じる。

【寝かせ方】
・私が購入している泥コンやどうやら硬いらしい。最近は泥コン屋も寝かせて納品してくれるので、ひび割れも少ないような気がします。
・寝かせる期間は、匂いや鍬で返してやり、色が変色していると発酵が進んでいる。寝かし過ぎ(1年とか)がいいのか分かりません。

【乾かし方】
・奈良の中村さんから聞いたけど、土は寒い時期にゆっくり乾かすといいと聞きましたが、この冬塗った壁はとにかく乾くのに時間がかかったが、大割れがなかった。ゆっくり乾かすが、かびない時期がいいのかなと感じました。

【土壁を支える環境】
・泥コン屋が次々と廃業し、今後が不安。
・若い頃農家の住まいを作っていたころはその農家の田んぼの土を使ったりしていたと思います。今は、土壁を使った仕事が少ないので建材店でもストックが無く、仕事にかかる前に土を用意しなくてはなりません。

【仕上げ材としてのすばらしさ】
・私たちのまわりに無限に存在する土はいちばん人になじむように思います。粗塗り、中塗りと調合の違いにより表情が違いますが、その時々に素晴らしい表情がうまれます。仕上げ塗りの漆喰壁に市売品の色漆喰で仕上げたことがありますが、なにか不自然な表情に感じました。土と漆喰を混ぜて仕上げた壁は目になじむ表情に仕上がったように感じました。あくまでも私の主観です。

【もっと土壁を】
・無害の自然素材である土をもっと積極的に利用してほしい。
・積極的に採用する事が、大切。


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