A棟(12/4に実験した地方型)、B棟(11/28に実験した都市近郊型)にJMA神戸の地震波(建築基準法でいうと、想定外の大地震)を入力した映像を、二つ横に並べて見ることができるようにしました。
これはA棟B棟に優劣をつけるためではなく、あくまでも、間取りは共通でありながら仕様の異なる2棟のふるまいの違いを見やすくするために並べたものであるということを十分ご留意ください。
また、これから委員会より正式に報告される内容とは異なることもありえることを前提とした上で、ご覧ください。
共通事項
- 伝統的木造軸組構法住宅の総二階建て
- モデュールと各階床面積、階高は異なるが、両棟ともほぼ同じ間取り(一階:南側に大きな開口部のリビング&ダイニング、北側に台所と和室、西側に洗面・風呂・手洗い、やや西よりに玄関と階段室 二階:和室と将来的に最大3室の個室にできるスペース)
- 主要水平耐力要素は土壁と軸組。筋交いはなし
- 仕口・継手は、木組みによる伝統的な納まり
- 建築基準法の一階の耐力壁量は満たしている(土壁の壁倍率=1.5として)
- 壁の配置としては、偏心率0.3以下
- 一階の柱脚については、水平移動は拘束するが、上下方向は拘束しない(すなわち、柱に引き抜き力が加わると浮き上がる納まり)
- 部材の材種は、スギを基本とし、土台はヒノキ、横架材の一部にマツ
- 屋根形状は4寸5分勾配の切り妻屋根、瓦葺き
両棟のちがい
A棟(地方型) | B棟(都市近郊型) | |
部材断面 | 部材断面の大きい、地方に多いつくり | 部材断面がやや小さい、都市近郊に多いつくり |
主要な柱 | 外周は15cm角、中央の2本は21cm角の通し柱(四方差し) | 外周は15cm角の通し柱、中央の2本は15cm角の管柱(二方差し) |
特記事項 | 二階に末口38cm長さ12mのマツ丸太の地棟あり | |
差鴨居 | 外周・内部とも主要な開口部すべてにある | 南面と中央桁行方向の開口部にのみある |
柱脚 | 柱に土台が差さる「柱勝ち」 | 土台に柱を長ホゾ差しする「土台勝ち」 |
足固め | なし。ただし開口部の一部に台敷あり | 主要柱間にすべてあり |
柱脚の水平移動拘束方法 | 鋼製のダボ(直径3cm突出長さ15cm)で柱を基礎に拘束 | 土台をアンカーボルトで基礎に固定し、柱を土台に長ホゾ(長さ12cm)差しして拘束 |
柱の接合部 | 柱脚柱頭ともに込み栓打ち | 柱頭のみ込み栓打ち |
土壁の土 | 京都の土(深草土) | 埼玉の土(荒木田土) |
貫の厚み | 15×105mm(やや薄め) | 27×120mm(厚貫) |
貫の段数 | 一階は4段、二階は3段 | 一・二階とも4段 |
※より詳しくは、両棟の建物仕様表をご覧ください。
12/4の実験終了後のプレス発表では、今回の実験委員会の主事である大橋先生から「荷重変形関係を見ると、A棟の方が重量が大きい分変形は若干大きかったが、耐力としてはA棟もB棟も同程度」というコメントがありました。
実験の通りのスピードのものと、時間を3倍の引き延ばしたスローモーションの映像でご覧ください。
みどころとして、いくつかをあげます。
ビデオ映像観察のポイント
土壁が落ちている!というだけでなく、いろいろな要素を見てみてくださいね。
- 固有周期のちがい
- A棟の方がよりゆっくりと揺れている様子が分かります。
- 二階のちがい
- A棟の方が太いマツの地棟が入り、建物のアタマが重いめです。
- 柱脚の浮き上がり
- 左手前の通し柱の足元を見てみて!大きく浮き上がっては戻って、ということを繰り返していす。(水平方向には拘束、垂直方向はフリー)
- 足元の架構形式の違い
- 土台と柱との関係、足固めの有無が確認できます。
- 土壁
- 剥落情況を見てみてください。
- 柱
- 通し柱に注目してみると、揺れている最中は大きく傾きはするものの、最終的には元に戻り、残留変形が少ないのが分かります。
ほか、細かすぎて見えませんが、次のようなことが目視されています。
- 鼻栓
- A棟では、鼻栓という細い部材が折れ、柱そのものへの影響が回避されていました。
- 差鴨居がささっている柱の情況
- 両棟ともに、差鴨居が、ささっている柱に折損を与えていました。