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木の家ネット第9期総会・熊本大会の報告


一年ぶりの再会を祝う懇親会

夕刻からは、久方ぶりの再会を祝い、酒を酌み交わす楽しいひとときが、徳島の和田善行副代表の乾杯で始まった。新規会員6名のうち、総会に参加された東京の吉川の鯰 岸本耕さん、滋賀の川端建築計画 川端眞さん、福岡の土公建築・環境設計室 土公純一さん、そして、総会初参加の皆さん方の思いあふれる自己紹介。その後マイクは、九つのテーブルすべてを巡っていった。

三重の田上さんのお子さんも加わってのスイートポテト販売

一通りマイクがまわった頃、事務局の持留さんご夫妻の長男、匠くんのお店屋さんが各テーブルを回遊。売り物のスイートポテト50個は、学校農園で自ら育てたサツマイモで、本人が焼いたのだとか。みなの心も体もほっこり。そうこうしているうちに、大広間での一次会は林美樹さんのイタリア人のご主人の三本締めでおひらきの時間に。事務局の持留ヨハナさんから「明日の朝、回収しますので、書いておいてください!」と一人ひとりに手渡された宿題「改正建築基準法再改正にむけてのアンケート」をもって、恒例の「深夜討論会」に向けて、いったん解散となった。

左:ずらり並んだ九州メンバーの前に立った林さんのご主人による三本締め。来年は練習してもっとうまくやりたいそうです。 
右:右端で笑っているのが林さん

顔の見える関係での議論を深める
深夜討論会

木の家ネット総会の醍醐味は「深夜討論会」。浴衣姿となった会員が、大部屋に三々五々集まって、その時期にホットな話題をめぐって、車座になって話し合う。熱く語る人、感心して聞いている人、議論を交わす人と人…さまざまな思いが交錯しながらも、餅つきになぞらえれば、つけばつくほどに粘りと一体感、そして艶と光を帯びてくるように、話し込んでいく中で思いがひとつになっていく。「顔の見える関係」をなにより大切にする木の家ネットのメンバーにとっては、年に一度の貴重な情報交換、情報共有の場だ。

熊本総会では、大小二つの大部屋が用意された。秋田の加藤長光代表の命名によれば愛知の大江忍さんが座長をつとめる大きめの部屋は「過激部屋」、熊本の古川保さんが座長をつとめる小さめの部屋は「穏健部屋」。部屋と部屋の間にあるロビーにも、部屋からあふれてきた人同士が少人数で話しこんでいた。

過激部屋

「穏健部屋」では、古川さんを中心に、木の家の需要をいかに引き出していくかが話し合われた。もりあがったのは、滋賀の川村克己さん秘伝の「建て主をつくり出す作戦譚」。現場見学会の案内を通学路に貼らせてもらう、刻み場から出た木っ端を「ご自由におもちください」とおいておいて、見学会の案内もとっていけるようにするなど、特別な営業をかけるわけでなくとも、日常的にローテク・ローコストでできるアイデアが続々と飛び出し「それならばできるかも!」と、共感を呼んだ。

穏健部屋

その後、東京の赤堀楠雄さんから「伝統構法でしか味わえないものとは?」という問題提起で口火を切ると、それぞれ木の家に対する熱き思いがほどばしり、生活者目線の談義が花開いた。伝統構法を守るには、法律、技術、需要のハードルを三位一体でクリアしなくてはならないという思いは、明日への糧となったにちがいない。この後、過激班も合流し、交流の輪は明け方近くまで深まっていったようだ。

(杉岡製材 杉岡世邦)

過激部屋での話題の中心は、国が進めている「伝統構法の性能検証・設計法構築事業」の委員会の行く末。9月12日に滋賀で行われた「これ木連」主催の関西フォーラム10月10日に東京で行われた、木の建築フォラムとこれ木連共催の勉強会などを通して、事業を進める東大系研究者グループと実務者との間に埋め難い溝があることがはっきりとわかり、現状のままで委員会が進んでいけば、伝統構法の存続が難しくなるという危機的な状況が、実務者委員として出席しているメンバーから明らかにされた。総会があけてすぐの16日には検討委員会があり、大江忍さんらが出席のため、東大系の研究者とのバトルを想定した緊張感あふれる討論となった。途中、馬刺しを食べていない!との声。(うっかりしてました)近くのスーパーへつまみを買出し、馬刺しをゲット。

(悠山想 宮本繁雄)

新たなる一年のスタートとなる総会

熊本総会の実行委員長を務めた古川さん

深夜討論会の一夜につながる翌朝は、これも毎年恒例の「総会中の総会」。加藤代表の挨拶の後、会計の衣袋和子さんより会計・更新状況、大江さん、古川さんより前夜の深夜討論会の報告に引き続き、この一年がどうだったか、これからの一年をどう運営していったらよいか、自由討論となった。木の家ネットは、運営委員会で運営されているが、年に一度の総会に集まる会員からの意見で、その期から手がける新たな試みがキックオフされることも多い。現場報告、住まい手訪問といった会員提案から生まれたコンテンツもあり、Skypeを使った会議や会員間のコミュニケーションも、総会から始まったものだ。

第8期のふりかえり その1:
もの申してきた一年

この一年のふりかえりとしては、伝統構法を残し、これからもできるようにするために発足したはずの「伝統構法の性能検証・設計法構築事業」に対して、終始、実務者からの意見を発信し続けて来た一年であったことの総ざらいがなされた。「伝統構法についての共通認識」についての提案書や、それぞれの委員会への意見書の提出など、これまでは内輪での思いやぼやきにとどまっていたことを、Skype会議やメーリングリストを通じて意見交換しながら、それを文書にとりまとめ、何度も提出してきた。

第8期のふりかえり その2:
学び、提案の場としての自主活動

また「もの申す」だけでなく、自らも学び、力をつけ、提案もしていこうということで、二つの自主活動も生まれた。それぞれの座長からその紹介が行われた。一つは、滋賀の宮内寿和さん座長の「大工による実験棟を提案する会議」。ここでは、来年度の実大実験に石場建ての家を提案するべく、検討を進めている。

もう一つは、滋賀の岩波正さん座長の「限界耐力計算を学ぶ設計者向け勉強会」。これは毎週木曜日の夜、Skypeで行われているもので、「関西版マニュアル」の勉強がひと通り終わり「大工による実験棟提案」の設計案を実際に限界耐力計算で解くという応用編に入っている。それぞれつねに10数名以上の参加者があり、「インターネットで横に繋がる木の家ネット」ならではの活動が花開いている。

第9期にむけて:
住まい手の会、弟子の参加などで裾野を広げよう

これからの一年をどう運営していったらよいかという提案として、三重の田上晴彦さんから「住まい手の会をつくっては」との提案が飛び出すと、会場は一気に活気を帯びた。建て主さんの建てる間の苦しみと出来たときの喜びを。住まい手の暮し方の紹介を。これから建てたい人も参加できるような仕組を…新たな交流と需要を生み出す、今後の成長が楽しみな企画で、具体的に検討されることとなった。

また、宮内さんより、弟子の修業奮戦記や座談会を企画しては?との提案も。とりあえずは、木の家ネットのメーリングリストに弟子も参加できるようにすることから始めようと決まった。

改正基準法の再改正を求めるアンケート
総会で集まった分の集計と、一般公募

今回の総会は、翌日に伝統木造の性能検証および設計法構築のための検討委員会が東京で開催されるという日程。まさに佳境の時期にあたり、伝統構法の火を消してはならないと、会場には終始、張り詰めた空気が漂っていた。

その参考資料ともなる、伝統木造をつくりがたくしている法律などに関する意見募集のアンケートにも、弟子たちも含め、ほとんどすべての参加者から回答が寄せられた(多くの人は、総会中の総会で内職して書き上げた模様)。総会で集まった回答を集め、分析した「中間報告」を発表し、それとともに木の家ネットのサイトでもアンケートの回答を募集しよう、ということになり、12/1〜18の間、公募した。

その結果、締切までに総数800余の回答が寄せられ、木の家ネットでその一次集計とざっくりとしたまとめを公開している。さらに詳しく検討した上で、3月号コンテンツでは、一次集計から言葉を拾い上げてのまとめを公開する予定だ。

(木の家ネット事務局 持留ヨハナ)

次回総会は「いざ、鎌倉!」

会員のもちまわりで幹事をつとめる木の家ネットの総会。加藤代表の地元秋田を皮切りに、愛知県犬山滋賀県大津東京都白金三重県伊勢徳島県徳島埼玉県川越と巡回してきて、今回は熊本。次回のバトンは、神奈川から熊本総会に出席していたきらくなたてものや 日高保さんに渡された。

きらくなたてものや 日高保さん

「同志との議論、同志の仕事の見学は、とても刺激を受け、自分を高める動機づけにもなります。」とは総会後、日高さんのブログに書かれた言葉。神奈川には、日高さんとチームを組んで活動している藤間建築工房の藤間秀夫さん(大工)、(有)湯田工業の湯田勝弘さん(左官)をはじめ、永井耕一郎さん(大工)、深田真工房の深田真さん(大工)、株式会社星野土建の星野将史さん(工務店)がいる。40代以下の、若いメンバーが多く、どんな総会になるのか、今から楽しみだ。

(杉岡製材 杉岡世邦)


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