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工務店・直井徹男さん(エコロジーライフ花):発信しつづける工務店、人が育つ工務店


エコ花から発信し続ける
若いショップスタッフ

エコ花では、創業当時から自然素材についての正しい情報を発信するために機関誌「花らいふ〜自然環境と調和したのびやかな住まいを」とを半年に一回ペースで発行してきた。Webサイトの完成を機に13号で廃刊になっていたのを、若い女性社員が「はなはな〜自然と共存したシンプルな生活を」と装いを新たにしたフリーペーパーとして再開した。

「花らいふ」と比べると、「はなはな」には手描き文字やイラストが並び、農家による季節のレシピ、天然酵母のパン屋さん紹介なども載っている。建築に特化せず、住を含めた「暮らし」により重点が置かれている。その中に、直井建築工房のお施主さん家族の暮らしぶりも自然な感じで紹介されている。

はなはな

「はなはな」の取材、執筆、イラスト描き、DTPから配本までを担当する金谷絵梨さんは、エコ花のスタッフになる前は、ディスプレイやデザインをする超多忙な会社に勤めていた。「生活というものが見えなくなるぐらいの日々に疲れきって辞め、築120年の古民家にひとりで住んでいる祖母の畑を手伝ったりしながら、設計事務所でアルバイトする生活の中で『無理しない豊かな生き方ってなんだろう』と考える日々でした。『自然に物が流れている中で仕事をしたい』と思っていたところにWebサイトでエコ花を知って、募集はしていなかったけれど、メールで直訴したんです」

金谷絵梨さん

「私が忙しすぎてなにかを見失っている現代の生活に感じている違和感、その違和感から出発して、ほんとうの豊かさを求めるようになる、そんな気づきに結びつく種まきがしていければいいな、と思っています」エコ花のお客さんに送るだけでなく、自然食品店やカフェなど「ここの店に来るような人だったら、興味をもってくれるだろう」という店を探し、置かせてもらったりもしている。

すばらしいと思えるものを紹介したい

中村香代さん

もうひとりのエコ花スタッフ、中村香代さんも元は大手企業のOLだった。子どもができて、食べ物、水、石けんなどを意識するようになり、子どもが3歳半になる頃、エコ花の採用募集に応募し、エコ花で扱う暮らしの品々のセレクトをしている。「こんなにいいものがある!とお客さんに伝えたいという気持ちで仕事ができて、幸せです」

「日本にもともとあった技術を、今の生活に合うようにデザインしている物を選んでいます。物としての完成度だけでなく、作っている方が生き生きと活動しているということも大事にしています」中村さんのイチ押しは、町田の「クラフト工房ラ・まの」で染めや刺繍をほどこしたテキスタイル。「知的障害のある人たちが活躍する工房です。それぞれの個性を活かして細かい作業を丁寧にしていることが伝わって来ます」

南会津の拭き漆の器もお勧めだ。「漆ははげてもまた塗り直して使える一生ものです。直したことでより味が出て来る、長く使えるものはいいですよね!」山梨の家具作家、「Studio Y.E’S」石塚さんの手づくりのテーブルや椅子もお気に入り。「がさがさな木の、あるがままの姿を大事にしながら、石塚さんの手によって丸みや温かみが生まれているのが魅力です」

関心をもつお客さんには木の家の模型を使いながら、木の家づくりについて話をすることもある。「今すぐどうこうということはなくても、木の家ってこうなってるのね、と感心したことが記憶として残って、いつか繋がればと願っています」そう語る中村さんは、葉山に買った土地に、家族で住む新居を建築中の施主でもある。設計施工は直井建築工房。スタッフ出身の施主の第一号だ。

エコ花スタッフから
家づくりの実際を発信するエコ花施主に!

中村さんは、Kayoの「葉山の暮らしと木の家づくりブログ」で、家づくりの様子を施主の立場で発信してもいる。その紹介文を引用してみよう。「木の家ってどう作られていくの?!家づくりってどんな風に進めたらいいの?!自然素材との付き合いかたって?!体験してみなければわからない住まいの作り方を、Kayoが施主の立場から、リアルにご報告いたします!」

Kayoの「葉山の暮らしと木の家づくりブログ」

9月11日に、念願の上棟がかなった。「この日は本当に暑く、照りつける太陽に皆が大汗を流しながら、次々に声を掛け合い、力強く組み上げてくれています。そのひとりひとりの緊張感、オーラ、普段私が見たことない圧倒的なパワーが渦巻いていて、なんと表現してよいのでしょうか・・神聖ささえ感じました。皆、私達家族のために必死にやってくれていました」いつもは仕事場でしか会わない仲間たちの活躍ぶりに感動している様子が手にとるように伝わってくる。

Kayoの「葉山の暮らしと木の家づくりブログ」より

森を育て、人を育てる工務店でありたい

無垢の木と自然素材の家づくりを志し、家族のシックハウス体験を通じて自然な建材にめぐりあい、じいちゃんがしていたような無垢の木の家の仕事をする大工と出会い、会津や栗駒の素性の分かった木を使い…と、直井さんが願って来たことはゆっくりではあっても、一歩一歩実現してきている。

その直井さんの将来に向けての夢はなんだろうか? 「ちょっと大きく出るようですが、工務店として社会によい影響を与えられる存在になりたいと思います」と直井さんは語る。

そのひとつは、森づくり。「山に恩返ししたい」という考えをもった工務店、林業地ほかと協力しあって内閣府認証のNPO法人「エコラ倶楽部」を立ち上げ、植林や森での野外活動などの事業を展開してきている。「森づくりに関わると、つくづくこれでは自分世代だけの話で終われないな、と実感するんですよ。そのためにも、直井という個人が経営している工務店でなく、直井がいなくなってもやってきたことを継続していってもらえるような体制を築きたいと思うんです」

そのために一番大事なのは「人育て」。そして、人が育つためには、直井建築工房・エコロジーライフ花が、はたらく人々の暮らしを支える場として存続することが必要だ。「規模は小さくていい、自分たち家族さえ食べていかれれば、と思った時期もありました。でも今は違います。自然と調和したライフスタイルを実践するような仕事ができる、そのような仕事で食べていける人が増えるのは、いいことだと思っています」

直井建築工房でもエコロジーライフ花でも、確実に若い大工やスタッフが育っています。直井さんの基調にある精神を、ひとりひとりが受け継ぎ、未来にむけてより大きく開花させていくことを、願ってやみません。建築工房&エコ花の「これから」が、楽しみです!

つくり手ページも ぜひご覧ください!
エコロジーライフ花 直井建築工房


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大自然の中に佇む、舘岩の家・工房