左官の、湯田工業 湯田勝弘さん
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きらくなたてものやチーム:家づくりを自分の手に!


最後におひとりおひとりから読者のみなさんにメッセージを!

湯田:土壁は、土と砂と藁と水だけでできている、とてもシンプルですが、厚みのある存在です。その存在感、手触り、木と土だけでできている無垢の空間のきもちよさを、もっともっと伝えていきたいです。できあがった空間だけでなく、ひとつひとつにかける手間の意味も知っていたただきたい。建て主さんとワークショップ形式で土壁つけをすると、そうしたプロセスを含めてまるごと体験してもらえるので、嬉しいです。

藤間:楽しいからもっとやっちゃえ!で、ここまで来ました。ほんとにおもしろい仕事です。化学物質の工業製品だらけの家ではそうはいきませんが、自然素材の家づくりの現場では、深呼吸ができます。つくっている人間が気持ちよく、楽しんでつくっているのですから、住んでも気持ちいい家になるはず。まして、自分たちより長いこと山で育ってきた木のいのちをいただいてつくる家ですから、木のパワーだってあります。木のいのちとつくる人の気持ちが詰まった木と土の家、いいですよ!

日高:伝統構法で家をつくると、土や木がそのまま見える空間ができます。見えるのは空間だけでなく、職人さんたちの仕事ぶりも、建て主さんの思いも、人の関係性も。そして、住んでくださる人は気持ちいいと言ってくださる。すべてが「見える」ことが、伝統構法の家づくりのよさだと思います。見せるだけの価値のあるドラマを、見えるようにするのが家づくりだとしたら、僕の役目は演出者、エンタテイナーなのかなと思っています。これからも現場に目や手をかけて、楽しい家づくりをしていきたいです。

土壁づくりを自分でしてみたい、という建て主さんを応援します!

「土壁セルフビルド、歓迎ですよ、という方は手を挙げてください!」と木の家ネットのつくり手メンバーに呼びかけたところ、7名の方からメッセージと写真が送られてきました。

「伝統構法」って、いうと、ハード面ばかりに目が行きがちですが、私個人の思いとしては、昔の人が、そのへんにあるもので、家をつくってきて、現代に受け継がれてきた、そういう、知恵の結晶だと思うわけです。「こんな身近な材料で、家って造れるんですよ。工業製品なしで、ほらできたでしょう!」と、施主さんに教えてあげることができたらいいな……。そうやって家を建てるお手伝いをして、正当な報償を頂ければ、こんなにうれしいことはないです。

土壁セルフビルドをしている大工仲間が数人いるので、お互いに鏝板持参で壁塗りを手伝いに行ったり、施主さん同士も仲良くなって土のさし合いをしたり、仕事を超えた付き合いが生まれてます。田んぼで藁を集めたり、小舞にする竹を伐ったりなどは、誰の現場のための作業ということでなく、みんなの使う分をみんなで調達する感覚でやってます。

人が住む家なのだから、人と人が関わっていくことが大事。だから、自分も都合のゆるすかぎり、仲間のお手伝いには出かけていきます。人の現場へ手伝いにいくと、同じ地方でありながら、竹小舞の仕様も、土の質、裏返しのタイミング等、面白いほどいろいろで、そのたびに意見を交わしながら、スキルアップしてます。自分が建てる家だけでは、せいぜい年に1〜2棟でも、手伝い合うことで毎年数棟の現場で土壁と向かい合っていることになります。

左官の江原です。私としては、セルフビルドには賛成です。小舞掻き、荒壁つけは、施主等が参加するかたちの土壁セルフビルドの建物を数軒しています。参加していただくときには、私たち職人と同じく8時〜6時位まで作業をしてもらえるようお願いしています。肉体労働は辛いでしょうが、仕事を手伝う責任感かなと思います。

仕上げ塗り等も、という場合は施主等が塗った上に左官が塗ることは、しません。一部屋ごとに責任施工してもらえるのであれば、どうぞ、というスタンスです。材料は私が作る場合もあれば、作り方をレポートにまとめて施主に渡し、施主が一から作る場合もあります。基本的に土壁は、調合ミスなど、よほどの施工ミスさえ無ければ剥離等はありません。施主等も、自分たちで最後まで仕上げると、苦労も多い分、喜びもひとしおみたいです。

左官仕事は、楽しく見えます。また楽しいものです。チョット来ておいしとこだけで終わりはどうでしょうか?現実には、材料運びや洗いものなど地味な事もふまえての左官です。きちんと向かい合ってもらえれば、自分の家に対する愛着や思いが計り知れないものなると思います。

これまで、20年数年間、土壁の家づくりを続けてきましたが、程度の差はあれ、自分の家の壁を家族でつくる体験をしてもらっています。

材料2割手間8割の手仕事の左官工事では、高度の技術をそれほど要求しない荒壁塗り工程に、建て主参加の可能性が残っています。丁寧な仕事を求めたければ、じっくりと時間を掛けれて注意深く仕事を続ければ、あるレベルまでは素人でも達成できるのが荒壁塗りなのです。

以前、東京の古老の左官職から、中塗りからが本職の出番という話を聞いたことがあります。手仕事が好きで器用なひとなら、竹小舞掻きは考えるほど難しくはありません。荒壁付けは体力が要りますが、休み休み行えばいつか終わります。忙しい現代ですが、週休二日が一般的であれば、工程の一部に参加する程度は誰でもできるはずです。お金で買ったものなら飽きたら捨ててしまっても、自分達の家族で作り上げた家は大切に扱ってもらえると信じています。

そもそも、なぜ晴吉で、荒壁を施主さんに作ってもらいたいと思ったかというと、親方の親方から「土は若旦那の作る仕事だでナ!」と聞いたのが始まりでした。どういう意味かというと、新家を普請するときは、その家の施主になる息子さんが、爺さんたちに指導をされて、長い月日をかけて土を作っていく。大変な重労働で、おまけに地道に、どんどん臭くなっていく泥を踏み続ける、身にしみる臭いと、想い!けれど、その大切さが良くわかるようになる、というんです。

そんな話を聞いて、自分の関る施主さんには、できるだけ、体感してもらいたいと思いました。そして、いざ自分たちがやってみると、奥が深い!現代で言う、バイオテクノロジーの最先端のようなことを、昔の人は、経験や、感性から作り上げてきたんですね。

土や藁を手に入れる、土を寝かすなど、少しやる気があれば可能なことだと思います。子どもたちの情操教育にも良さそうです。やってみる価値、ありますよ〜

土壁セルフビルド、普通にしています。クロスばりの家はやった事がなく、あたりまえのように土壁をつくってきました。内部は漆喰や中塗りで外部は焼杉、漆喰、モルタル等です。どの施主さんからも、結露がなくなって快適と言われます。自分でやってみたいという方には、お施主さんにも土壁づくりにも挑戦していただいています。土壁体験する子供達が、重い土を扱って大変だと思うのに、ほんとうに熱心なことに驚きます。

インテリアを勉強していた学生さん、若い女の子たちを左官さんの現場につれていったことがあります。その中に左官さんの娘さんがいました。それまで、お父様の仕事を見た事もなく、興味もなかった彼女が現場でいろんな話を聴いて、父親の現場についていって手伝うようになったと聞き、ちょっと嬉しかったです。

環境にできるだけ負荷をかけない暮らし方を目指した4世帯が共同で暮らす長屋形式の約110坪の住宅を、神奈川県の相模原市に、この秋の完成をめざして作っています。できるだけ自然と調和した暮らしがコンセプトなので、日本の気候風土にあった土壁にしました。自然と調和した家づくりの価値観をできるだけ多くの人たちと分かち合いたいということで、木の家ネットの会員の勝又左官工業所の指導でのワークショップ形式での土壁づくりに挑戦しています。昨年の秋に地元の竹を伐り、年初の寒い時期に土造り、そして5月から毎週末のように皆で竹小舞を編み、荒壁を塗りました。子供さんからご高齢の方まで、学生さんを中心としたのべ300人以上の方が参加してくださいました。参加者のみなさんは、こうしたすばらしい家づくりが実際にできるんだ!と理解し、目を輝かし、楽しんでおられます。

土壁のよさを科学的にも把握するために、工学院大学の協力を得て、土壁内部の温度、湿度の計測も予定しています。今回は土壁の外側に羊毛の断熱材を設置した「ウールマーク付き」土壁の家なので、温熱環境の違いなども体感してみたいと考えています。

当工房でもセルフビルトを、勧めています。自分も大工・工務店仲間の土壁ワークショップや”結い”での作業に何度も参加し、えつり掻き、荒壁塗りにも段々と精通してきました。お施主さん自身が家作りに参加することは、家に愛着が湧き、とってもいいことだと思います。やはり、家は買うものではなく、自分たちで作り上げるものだということを体感してもらういい場になると思います。

小舞かきや荒壁はセルフビルドでも。仕上げが直接絡んでくるところは、通常、左官屋さんにお願いしています。が、この写真のお施主さんは、土壁塗りにはまり、仕上げ(大直し、中塗り)まで塗った部分もありました。土壁だけでなく、家作り全般になるべくお施主さんに関わっていただければ、コストを下げることにもなるし、建てた後の家のメンテナンス等も、少々のことは自分で出来るようになると思います。


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土壁セルフビルドで、泥にダイブする人(写真提供:日高さん)