京都大学防災研究所の鈴木祥之先生。
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木の家ネット第四期総会報告


伝統構法を構造的に評価する 限界耐力計算法を学ぶ

限界耐力計算法講習会

琵琶湖大橋のたもと、米プラザの研修室での講演会。

総会二日目には、道の駅「米プラザ」に京大防災研究所の鈴木祥之先生をお招きして、限界耐力計算法の講習会を行った。先生は、地震力で大きく傾きながらも復元力をもつ伝統木造建築の性質を限界耐力計算法を用いて評価する研究の第一人者。実大振動実験の映像や地震の被害写真などを交え、難解といわれる限界耐力計算法の考え方を、判りやすく説いて下さった。(詳細は、あらためて「伝統構法の復権シリーズ」にてご紹介します)

延暦寺根本中堂見学会

地震被害の写真を交えての説明が分かりやすかった。

講演会終了後には、日本伝統建築保存協会の会長でもある西澤政男さんのご案内で、天台系仏教の総本山・比叡山延暦寺根本中堂などを見学。根本中堂は桁行十一間、梁間六間の広大な和様の堂宇で、内陣が外陣より3Mも低い土間になっているのが特徴。外陣に座して内陣を見つめれば、手前には不滅の法灯がゆらいでいるのだが、向こうに広がるのは漆黒の闇。その下方奥に、薬師如来の小さなご本尊がたった一本のろうそくに照らされて浮かび上がるのが、なんとも内観的、幻想的な風景。帰路には山頂から琵琶湖を眺めることもでき、次回の開催地、奥多摩での再会を誓って、一同は全国各地へと、日々の実践へと散っていった。

中越地震調査団と災害ボランティア

グラフの「富士山の山頂」にあたる周期の揺れの時、地震力が最大になる。伝統木造の固有周期は、これよりも長めなので、壊れにくいのだという。(出典:木造軸組構法建物の限界耐力計算による耐震設計・耐震補強設計マニュアル)

鈴木祥之先生は実大振動台を使った実験もしている。(左から)筋交の家、土壁木組みの家、合板壁の家を実際に揺らした実験の映像を見せていただいた。(出典:杉の復権をめざした/TSウッドハウス協同組合)

鈴木祥之先生は、TSウッドが主催した徳島での民家の倒壊実験にも関わった。これだけ傾いてもまだ倒れないのは伝統構法の家の特徴。(出典:杉の復権をめざした/TSウッドハウス協同組合)

今回の総会は、中越地震の調査団と災害ボランティアという具体的なアクションを生んだ。「地震にも生き残った伝統工法に学ぼう」という調査団は、総会には欠席だった菅野さんからの提案。さらに、今期入会した元・秋田県立木造高度加工研究所教授の鈴木有さんから「伝統的家屋が多く残る栃尾市で、壊されなくてよい古い建物を残すために、住宅相談窓口へのボランティア派遣を」という具体的な提案もあり、多くの会員が参加したいと意思を表明。さっそく総会の翌週には予備調査隊が出発した。(詳しくは、木の家ネットのニュース欄にてレポートしています)


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左/紅葉が美しかった比叡山。右/根本中堂の外観。中は撮影禁止であった。