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古川 保の熊本市川尻町 震災日誌


4月22日(金)

二年前の警告
耐震性能を発生率で決める危うさ

2年前の2013年4月4日の記事である。熊日新聞は、震度7の大地震が熊本に発生することを警告していたのだ。二田川断層が30年に起こる確率が0.9%、日奈久断層の中央部が10%、南部が26%である。熊本全体では、大地震の発生する確率は50%と報じていた。私がこの記事を保存していたのは、震度分布の資料として使うためで、赤色以外は基準法ギリギリで設計しても余裕があると説明するためのものだった。

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日奈久断層の近くでは大地震の起こる確率が26%と高いので耐震壁が2〜3割割り増しに入れるが、布田川断層付近は30年で0.9%と低いので、余裕の程度は低かった。確率が高い方が発生率は高いのは事実である。

しかし、一つの個人にとっては、確率は関係がなく、地震が起きるか起きないかである。例えば八代の場合地震の地域係数が0.8である。だから耐震壁を80%にするのが建築基準法である。発生確率が低いから耐震壁の量も80%にするのはおかしいと思う。発生確率が高かろうと低かろうと地震の力は変らない。基準法通りに80%耐震壁だったら、八代に地震が起きれば全件倒壊するとなる。(仕様規定には地震の地域係数はない)日奈久は八代にある。今、日本で一番危険な日奈久断層の上にある日奈久地区は。・・・・・・・・ぞっとする。

皮肉なことに過去九州最大の地震発生の断層は、発生確率0.3%の西方沖断層と今回の発生確率0.9%の布田川断層である。

4月21日(木)

瑞鷹酒造の鬼瓦
大事に降ろした職人の心

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私は瑞鷹酒造の米蔵を借り、事務所に改装し営業している。事務所の被害は後日報告するとして、大家さんである瑞鷹酒造が大打撃を受けた。県道に面する建物の屋根の棟の鬼瓦が落下しそうになっていたので、手作業で降ろす作業が行われた。降ろした鬼瓦を見たら「瑞鷹」の名があった。吉富瓦屋さんは、他の瓦は投げて降ろしたが鬼瓦だけは崩れないようにして降ろした。文字は、遠くからはほとんど見えないので、社長以下文字の存在を誰も知らなかった。鬼瓦を降ろしてくれと注文すれば、効率よく運びやすいように砕くのが常である。大事に降ろすところが職人の心だ。例えは悪いが、火葬場で喉仏を大事に探す感じだ。

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近い日に、元の屋根に収まる。必ず収まる。「新しくなったね」ではなく、「昔と変わらないね」と言われたい。

4月20日(水)

あとぜき?

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避難所のドアーに「あとぜき」という張り紙が貼ってある。公共の施設や店舗には良く貼られてあるが、よそ者にとっては非常に意味不明な表示である。学校の教室、飲み屋のトイレのドアー等ちょっと閉め忘れしやすい戸に貼ってある。「戸を開けたら、必ず閉めなさい」という意味だが、わずか4文字で俳句みたいな表現法である。おじいちゃん、おばあちゃんだけが知っている昔限定の方言ではない。大人から子供まで日常使われている。隣県には伝播していない熊本限定の方言なので、「熊本出身か否かを判断する」材料によい。出身地を偽装するミステリーやスパイ小説の材料になりそうだ。

4月19日(火)

炊き出し

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宮本さん、照井さんから多くの物資を頂き被災グループに分けても、水が余りました。ラーメン店の店主がストックの麺が傷むと悩んでいました。そこで、急に炊き出しが決まったようです。ハムも同じような情報も入り、米は別ルートで差し入れがありました。傷みそうな麺、傷みそうなハム、余った水と米で炊き出しが決まりました。写真は昨晩のラーメンとハム握りの炊き出し風景です。宮本さん、照井さんも知らないと思いますのでこの場で報告です。川尻の町づくり活動も息子の代に変わりました。 今日は、別の店でカレーを造ると言って出かけました。おそらく昨日米が余ったからでしょう。「ゲリラ炊き出し」が3号線の寛三で始まります。

4月19日(火)

通行止めに
余震で崩れたレンガ

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我が事務所は耐震性のない100年前の建物なので、家の中にシェルターを入れている。震度6強の強震では、やはり被害を受けた。被害の状況は後日行うとして、隣家の土蔵の防火壁が崩れた。本震ではなく、震度4の余震で崩れて、レンガの塊がわが社の屋根とケヤキの木に引っ掛かっている。余震でレンガが落ちるかもしれないと通行止めにした。「道路占有許可」など取っている余裕はない。

4月18日(月)

構造体だけの石場建ての状況
礎石から柱が動いた

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熊本は地域係数0.9。特に、日奈久断層は「高い確率で動く」と言われていて、100年周期目と言われていたのが、「今でしょう」だった。本当に当たってしまった。生きているうちに体験するとは思わなかった。

多くは掲載できませんが、小出しにお知らせします。柱の踏みはずしです。建物が軽い状態なので、たいしたことではないとみるかです。今年の6月から石場建てが可能になりますが、ピン設置が条件です。昨日から、照井さん、橋本さん、宮本さんが物資を持ってきてくれました。大変ありがたく思います。只今(10分前)わが社の前と瑞鷹の前を交通止めにしました。鬼瓦が市道に落下の危険性があるからです。詳しくは後程。


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